一塩基多型(SNP)とは|定義・特徴、疾患リスクと法医学での応用
一塩基多型(SNP)の基礎から疾患リスクとの関連、法医学でのDNA解析への応用までわかりやすく詳述。研究や臨床に役立つ解説。
一塩基多型(SNP、発音はスニップ、複数形もスニップ)とは、集団内で見られる単一の塩基(ヌクレオチド)の違いを指します。SNPは、1ヌクレオチドの変化にすぎませんが、個人間の遺伝的多様性を生む重要な要素です。例えば、配列が AAGCCTA の断片と AAGCTTA の断片があれば、これらは1塩基だけ異なり、2つの対立遺伝子を持つSNPの例になります。SNPは通常二つの対立遺伝子を持つことが多く、ヒトゲノムでは高頻度に存在します。なお、SNPが「多型」と呼ばれるのは、少なくともある集団で比較的高頻度(一般には頻度1%以上)で見られる塩基変異を指すためで、稀な変異は「変異(variant)」と区別されることが多いです。
発生頻度と分布
ヒトゲノムではおよそ1kb(1000塩基)に1個程度の頻度でSNPが見つかるとされ、全ゲノムでは数百万のSNPが存在します。SNPの出現頻度はゲノム領域によって異なり、タンパク質をコードする領域や機能的に重要な配列では自然淘汰により保存されるため、非コード領域に比べて少ない傾向があります。遺伝的組み換えや突然変異率の違い、集団の歴史や選択圧により、ある地理的集団や民族集団で一般的な対立遺伝子が別の集団では稀であることがあります。
種類と分子的影響
- 塩基置換のタイプ:SNPは「トランジション(置換が同種塩基間、A⇄G または C⇄T)」と「トランスバージョン(異種塩基間)」に分かれ、トランジションの方が起きやすいという傾向があります。
- 翻訳への影響:コード領域に位置するSNPは、同義置換(アミノ酸が変わらない)や非同義置換(ミスセンス、ナンセンス)を引き起こし、タンパク質の構造や機能に影響を与える可能性があります。
- 調節領域やスプライス部位:プロモーター、エンハンサー、スプライスサイトにあるSNPは遺伝子発現量やスプライシングを変え、生体機能に影響を及ぼすことがあります(例:eQTLとして同定される場合)。
疾患リスクと研究への利用
SNPは病気の感受性や重症度、薬物への反応性に関連することが多く、これを利用して疾病リスク評価や個別化医療(薬理遺伝学)が進められています。ゲノムワイド関連解析(GWAS)では数百万個のSNPを用いて、ある表現型(病気や形質)と統計的に関連するSNPを同定します。ただし、GWASで見つかるSNPの多くは直接の原因(機能変異)ではなく、因果変異と連鎖不平衡(LD)にある「タグSNP」である場合が多く、さらなる精密化(ファインチューニング)が必要です。
具体例として、APOE(アポリポタンパクE)遺伝子に関わる塩基配列の違い(例えば rs429358 や rs7412 による組み合わせ)が、アルツハイマー病のリスク上昇と関連することが知られています(APOE ε4 アレルを持つ人はリスクが高くなる)。
薬理遺伝学(薬物応答)への応用
薬物代謝酵素や輸送体をコードする遺伝子のSNPは、薬物の効果や副作用に直接影響します。たとえば、CYP2C19やCYP2D6などの遺伝子多型は、抗血栓薬や抗うつ薬、抗がん剤などの用量や薬剤選択に重要です。臨床では、特定のSNPを調べることで治療の最適化や副作用リスクの低減が期待されます。
法医学(鑑識)での応用
個人識別の目的では、短い反復配列(STR)が高い識別力を持つため一般的に用いられますが、SNPパネルも次のような利点から法医学で注目されています:低頻度の分解試料でも断片化に強い、種特異的なマーカーの設計が容易、系統(祖先)や外貌的特徴の推定に利用できる点など。ただし、同一性の決定力はSTRほど高くないため、SNPは補助的に使われることが多いです。元の文章にもあるように、個人間の遺伝的差異(特に非コード領域のSNP)はDNAフィンガープリンティングに利用されます:の分野での応用例です。
検出法とデータベース
- 検出技術:DNAマイクロアレイ(SNPチップ)、次世代シーケンシング(NGS)、TaqManやSangerシーケンスなどのPCRベース法を用いてSNPを同定・ジェノタイピングします。大規模研究ではコスト効率の良いSNPアレイが多用されます。
- 公的データベース:SNP情報や頻度は dbSNP(NCBI)、1000 Genomes、gnomAD などのデータベースに蓄積され、遺伝子型頻度や集団間の違いの参照に使われます。
解釈上の注意点と倫理
SNPが疾患と関連するという結果は必ずしも因果関係を意味しません。多くの複雑疾患は複数の遺伝的要因と環境要因が相互作用して発症するため、個々のSNPだけで確定的な予測は困難です。また、個人の遺伝情報の扱いにはプライバシーや差別の問題が伴います。検査結果の臨床応用や報告には慎重な遺伝カウンセリングと倫理的配慮が必要です。
まとめ
SNPはゲノム多様性の基本単位であり、集団遺伝学、疾患研究、薬理遺伝学、法医学など多くの分野で重要な役割を果たします。多くは無害な多型ですが、位置や種類によっては機能的影響を持ち、病気のリスクや治療反応に影響を与えます。最新のハイスループットな検出技術と大規模データベースの発展により、SNP研究はますます臨床応用へと近づいています。

DNA分子1はDNA分子2と1つの塩基対の位置で異なる(C/A多型
質問と回答
Q: SNPとは何ですか?
A: 一塩基多型とは、集団におけるDNA配列の変異のことで、ゲノムにおける一塩基の違いを特徴とします。
Q: SNPとは何の略ですか?
A: SNPは一塩基多型の略です。
Q: 一般的なSNPにはいくつの対立遺伝子がありますか?
A: 一般的なSNPには2つの対立遺伝子しかありません。
Q: SNPはDNAのどこに多く存在するのですか?
A: SNPは生物の生存に影響を与えないDNAの領域に多く見られます。
Q: SNPの密度に影響を与える要因は何ですか?
A: 遺伝子の組み換えや突然変異率などもSNP密度に影響を与えます。
Q: 個体間の遺伝的変異の実際的な応用にはどのようなものがありますか?
A: 個人間の遺伝的変異(特にゲノムの非コード部分)は、法医学で用いられるDNA指紋に利用されることがあります。このような遺伝的変異は、病気に対する感受性の違いも引き起こします。
Q:特定の病気のリスクが高くなる遺伝的変異の例を教えてください。
A:例えば、APOE(アポリポ蛋白質E)遺伝子の1塩基変異はアルツハイマー病のリスクが高いことに関連しています。
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