アレルとは、染色体上の特定の位置(遺伝子座=locus)に存在する、ある遺伝子の「異なる形式(配列)」を指します。そこに含まれるDNA配列のわずかな違いが、タンパク質の構造や発現量、あるいは遺伝子の機能に影響を与えることがあり、生物の形質(表現型)に差を生じさせます。15 アレルはその場所にあるコーディングや調節領域を含むDNA配列の一種で、同じ遺伝子座でも複数の異なるアレルが存在することがあります(変異、挿入・欠失、塩基置換など)。遺伝子のDNAの配列の差がアレルの本質です。p6
二倍体とアレルの数
多くの植物や動物は、両親から受け継いだ染色体を2セット持つ、いわゆる二倍体です。123 このような生物(2倍体)では、性染色体を除く各遺伝子座に通常2つの対立遺伝子が存在します。すなわち、同じ遺伝子座に父親由来と母親由来のそれぞれ1つずつ、計2つのアレルがあります。p6
ホモ接合体とヘテロ接合体
2つの対立遺伝子が同一の配列であれば、その個体はホモ接合体(homozygote)と言います。一方、2つのアレルが異なる配列であればヘテロ接合体(heterozygote)です。例えば、ある遺伝子のアレルを大文字Aと小文字aで表すと、AAやaaはホモ接合、Aaはヘテロ接合を表します。ヘテロ接合の中には、両アレルがともに機能することで両方の性質が現れる場合(共優性)、片方のアレルだけが表現される場合(優性・劣性)、中間的な表現型になる場合(不完全優性)などがあります。205
対立遺伝子の種類と挙動
- 優性(Dominant)と劣性(Recessive):優性アレルが1つあれば表現型に現れるのに対し、劣性アレルはホモ接合でないと表現されないことが多い。
- 共優性(Codominance):両方のアレルが同時に表現型に現れる(例:血液型AB)。
- 不完全優性(Incomplete dominance):ヘテロ接組み合わせで両者の中間的な表現型が生じる(例:赤×白→ピンクの花)。
- 多重アレル(Multiple alleles):集団内でその遺伝子座に3種類以上のアレルが存在する場合がある(ABO血液型など)。
- 野生型(Wild-type)と変異型(Mutant):通常の機能を持つ形を野生型、変化したものを変異型(null/低機能/過剰機能など)と呼ぶ。
性染色体と特殊な例
性染色体上の遺伝子では、個体の性によってアレルの持ち方が異なり得ます。たとえば哺乳類の雄はX染色体を1本しか持たないため、X上の遺伝子は雄でヘミ接合(hemizygous)となり、劣性アレルでも表現型が現れやすくなります。性染色体に関する例外や特殊な遺伝様式が存在します。
遺伝学的意味と実用的な観点
対立遺伝子の組み合わせ(遺伝子型:genotype)は、表現型に直接影響しますが、環境要因や他の遺伝子との相互作用(遺伝子間相互作用、修飾遺伝子)も重要です。遺伝学や育種、医療の場面では、アレルの同定(遺伝子検査、シークエンシング、PCRなど)により病気のリスク評価、望ましい形質の選抜、治療方針の決定が行われます。
まとめ(ポイント)
- アレルは同じ遺伝子座にある異なるDNA配列の型。
- 多くの生物は二倍体であり、通常は各遺伝子座に2つのアレルを持つ。
- ホモ接合体は同一アレルを2つ持ち、ヘテロ接合体は異なるアレルを持つ。
- アレル同士の関係(優性・劣性・共優性など)や遺伝子間の相互作用で表現型は決まる。

