南チロルは、イタリア語でアルト・アディジェAlto Adigeドイツ語でSüdtirol)と呼ばれる、イタリア北部の自治県(Provincia autonoma di Bolzano / 自治州に相当する地方行政区)です。行政上はトレント県と合わせてトレンティーノ・アルト・アディジェ州(Trentino-Alto Adige/Südtirol)を構成しています。面積は約7,400平方キロメートル、人口は2011年の国勢調査で約511,750人、州都はボルツァーノ(独語:Bozen)です。県内にはおよそ116のコムーネ(自治体)があり、西はグラウビュンデン州(スイス)およびロンバルディア州、北はチロル州(オーストリア)とザルツブルク州、南はトレンティーノ州とヴェネト州と接しています。

言語・人口構成

南チロルは歴史的・文化的にドイツ語圏の影響が強く、人口の大多数がドイツ語を話します(2011年国勢調査では約70%弱)。約4分の1がイタリア語を話し、少数ながらラディン語を母語とする住民(主にドルミーティ地方の谷間)が存在します。公用語はイタリア語とドイツ語で、ラディン語は該当する地域で第三の公用語として認められています。

名称・公式名

地域名は言語によって呼び方が異なります。イタリア語では Provincia autonoma di Bolzano(またはProvincia autonoma di Bolzano - Alto Adige)、ドイツ語でAutonome Provinz Bozen - Südtirol、ラディン語ではProvinzia autonoma de Balsan/Bulsan - Südtirol と表記されます。英語では一般に “South Tyrol” と呼ばれます。イタリア語名の「アルト・アディジェ」はエッツ川(イタリア語:Adige)に由来します。

歴史と自治の仕組み

歴史的には第一次世界大戦後のサン=ジェルマン条約(1919年)でイタリアに編入されました。戦後、ドイツ語話者の権利保護をめぐりオーストリアとの間で交渉が行われ、1946年のグルーバー=デ=ガスペリ協定やその後の自治制度の整備により、言語的・文化的少数派の保護が法的に定められました。1972年に現行の自治法(特別自治)が確立され、地方行政の大部分の権限が自治県に付与されています。

自治県は独自の立法・行政機関を持ち、県議会(Landtag / Consiglio provinciale)と州長(Landeshauptmann / Presidente della Provincia autonoma)があり、中央政府から独立した多くの分野で法令や予算を管理します(立法権など)。長年にわたり地域政党である南チロル人民党(SVP)が政治の中心を占めており、ルイス・デュルンヴァルダー(Luis Durnwalder)は1989年から2014年まで州長を務め、2014年以降はアルノ・コンパッチャー(Arno Kompatscher)が州長を務めています。

経済・観光・文化

経済は農業(とくにリンゴの生産)、ワイン、観光(夏季のハイキング、冬季のスキー)、林業、軽工業・中小企業が中心です。南チロルは一人当たり所得が高く、観光収入と輸出産業が地域経済を支えています。ドルミーティ山塊はユネスコの世界自然遺産に登録されており、自然景観と山岳観光が重要です。主要都市にはボルツァーノ(中心地)、メラーノ(Merano)、ブレッサノーネ(Bressanone/Brixen)、ブルーニコ(Bruneck/Brunico)などがあります。

文化面では、イタリア・ドイツ・ラディンの影響が混在し、建築、料理(スぺック、ダンプリング類、地元ワインなど)や伝統行事にもその多様性が現れます。教育・公務においても言語別の配分やバイリンガリズムが制度的に保障されています。

交通・アクセス

北イタリアとオーストリアを結ぶ要衝で、古くから重要な交通路であるブレンナー峠(Brenner Pass)を経由します。主要道路はオートストラーダ A22(Autostrada del Brennero)で、鉄道もブレンナー鉄道(Brennerbahn)を通じて欧州横断の幹線路となっています。県内の空港はボルツァーノ空港など小規模なものがあり、国際空港は近隣のインスブルックやヴェローナが利用されます。

以上が南チロル(アルト・アディジェ/ボルツァーノ自治県)の概要です。歴史的背景、言語・文化の多様性、強い自治権と発達した観光・農業経済が特徴の地域です。