ステンドグラスとは:定義・歴史・製法・色づけの仕組みと用途ガイド
ステンドグラスの定義・歴史・製法・色づけの仕組みと用途を写真と図で分かりやすく解説。材料・着色法・設置例まで学べる完全ガイド。
ステンドグラスとは、ガラスを作るときに金属塩を加えて色をつけたガラスのことで、着色されたガラス片を組み合わせて作る窓や装飾の総称です。小さなガラス片は意匠や図像を表現するために形を切り出し、鉛のストリップ(ケイム)でつなぎ、剛性のあるフレームで支持します。絵付けされた細部や黄色のステインは、多くの場合デザインを補強するために用いられ、窯で焼き付けることによってガラスと色を融合させることも行われます(後述)。
歴史の概略
ステンドグラスは中世ヨーロッパの大聖堂を中心に発展しました。ゴシック建築の時代(12〜16世紀)には、チャートル大聖堂などに見られるように、宗教的物語を教化するための主要な表現手段として用いられました。19世紀には復興運動(ゴシック・リバイバル)やアーツ&クラフツ運動を通じて技術と芸術性が再評価され、ルイス・カムフォート・ティファニーらによるアメリカでの発展、さらに20世紀の抽象表現や現代建築との融合により、多様な表現が広がりました。
製法と主な技法
ステンドグラス制作は大まかに以下の工程を経ます:
- デザイン(下絵)を作成する。
- 色ガラスを図面に合わせて切断する。
- ガラス片に描画(ヴェトロペイントやグリザイユなど)やステインを施す場合は窯で焼き付ける。
- 各片を鉛ケイム(または銅フォイルなどの代替)で組み立て、ハンダ付けする。
- 耐候性を上げるためにセメントで目地を固め、枠に入れて支持する。
主な技法としては次があります:
- ポットメタル(pot metal):製造時に一体で着色されたガラスで、均質な色をもつ。
- フラッシュガラス:薄い色ガラスを無色の透明ガラスに圧着したもので、エッチング等で色層を除去して部分的に表現できる。
- 絵付け(ヴィトリオスペイント、グリザイユ):黒〜茶の顔料で細部を描き、窯で焼き付けて定着させる技術。
- シルバーステイン:銀化合物を用いて黄色〜金色帯を得る技法。低温焼成で発色するため、絵付けと併用しやすい。
- フュージング・スラッピング:現代的な方法で、ガラス片を窯で溶かして一体化したり、厚みやテクスチャを出す技法。
色づけの仕組み(化学と具体例)
ステンドグラスの色は主に金属イオンやその酸化物(あるいは微量元素)によって生じます。加える元素や化合物、製造時の酸化・還元条件、熱処理の度合いによって発色が異なります。代表的な着色材は次の通りです(下記のリストは元のリンクを保持しています)。
- 銅:金属が暗赤色のガラスを与える
- 金:微量の金属(0.001%)でルビー色の赤ガラスができる。
- 銀(通常は硝酸銀)は、赤から黄色の色の範囲を与えます。
- コバルト:ブリリアントブルー
- 二酸化マンガン:グリーン
- 酸化鉄(II):青緑色
- クロム:濃い緑色
補足説明:
- 金(Au)を微量含む場合の赤は、ガラス中に微細な金のコロイド(粒子)を生成することで生じます。歴史的には高度な技術を要しました。
- 銀化合物は低温で黄色〜茶色に発色し、窓のハイライトや髪飾りなどに多用されました(これが「ステイン(stain)」の語源にも関係します)。
- コバルトは少量で深い青を示し、コバルトブルーは非常に安定した色です。ウランやセレンなど、特殊な元素も使われることがあります(現代では放射性や毒性の観点から取り扱いに注意が必要)。
- また、色はガラス基材(ソーダ石灰、鉛ガラスなど)や製造法によっても変化します。
用途と現代での応用
伝統的には教会や寺院の宗教画的表現が主でしたが、現在では用途が広がっています。
- 宗教建築の窓(物語的・象徴的表現)
- 住宅の装飾窓、ドアパネル、間仕切り、室内の採光用パネル
- 商業施設や公共建築のファサード、ロビーのアートワーク
- 照明器具(ランプシェード)や家具、オブジェなどのアートガラス
- 現代美術における抽象作品(例:オランダのテオ・ヴァン・ドーズブルグの抽象画に見られるようなガラスを用いた表現)
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アメリカ、ドライデン高校のハクトウワシ。ダイナミックな人物像はステンドグラスでは珍しい
保存・修復と注意点
ステンドグラスは屋外に設置されることが多いため、風雨、温度変化、大気汚染や酸性雨による劣化を受けます。主な保存対策は以下のとおりです:
- ガラス面の定期的な点検と清掃(柔らかい布と中性洗剤を使用し、強い溶剤は避ける)
- 鉛ケイムの劣化(断裂や変形)が見られれば再鉛付け(リーディング)を行う
- 外側に防風・防雨用の保護ガラス(プロテクティブ・グレージング)を設けることで直接的な環境負荷を低減する
- 歴史的価値の高い作品は専門の保存修復士による診断と処置が必要
また、鉛や一部の顔料は有害であるため、制作・修復時は適切な作業環境(換気、保護具)が必須です。
まとめ
ステンドグラスは化学的・技術的知識と美術的感覚が融合した芸術です。中世の宗教建築に始まり、19〜20世紀の復興や現代美術への展開を経て、現在も建築装飾や美術作品として広く利用されています。材料や技法を理解することで、より適切な制作・保全が可能になります。

シャルトル大聖堂の北側トランセプトの薔薇。聖書の王や預言者に囲まれた天の女王としての聖母マリアを表現しています。窓にはフランスとカスティーリャの紋章が描かれています。
質問と回答
Q:ステンドグラスとは何ですか?
A:ステンドグラスとは、色ガラスを製造する際に金属塩を加えて作られる色ガラスのことです。また、ガラスに色を塗った後、窯でガラスを溶かした窓のことを指すこともあります。
Q:ステンドグラスはどのように使われているのですか?
A:ステンドグラスはキリスト教美術に使われることが多いのですが、それ以外のテーマも珍しくはありません。現在でも人気があり、アートガラスと呼ばれることも多く、高級住宅や商業施設によく使われています。
Q: ステンドグラスには、どのような要素が加えられて色を作り出しているのでしょうか?
A: 濃い赤は銅、ルビーレッドは金、赤から黄色までは銀、鮮やかな青はコバルト、緑は二酸化マンガン、青緑は酸化鉄(II)、濃い緑はクロムなど、ステンドグラスの色を作るためにさまざまな元素が加えられています。
Q: ステンドグラスのモダンアートの例として、どのようなものがあるか?
A: 1917年に制作されたテオ・ファン・ドエスブルクの「デ・ステイル抽象画」がステンドグラスにおけるモダンアートの一例です。
Q: ステンドグラスに動的な図形はよくあるのですか?
A: ステンドグラスで動きのある図形は珍しいですが、アメリカのドライデン高校の「The Bald Eagle」がその一例です。
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