胃がんとは?原因・症状・生存率・予防法をわかりやすく解説
胃がんの原因・症状・生存率・予防法を専門家視点でわかりやすく解説。ピロリ菌や食生活の影響、早期発見と具体的な予防策を紹介。
世界中で多くの人が胃がんで亡くなっており、国や地域によって発生率や死亡率は異なります。生存率(5年生存率)はがんの進行度(ステージ)によって大きく異なり、早期に発見できれば生存率はかなり高くなります。一方で進行・転移がある場合は予後が悪くなるため、早期発見と適切な治療が重要です。
主な原因・リスク要因
胃がんの発症には多くの要因が関与します。代表的なものは次のとおりです。
- ヘリコバクター・ピロリの感染:慢性的な胃の炎症や萎縮性胃炎を引き起こし、発がんリスクを上げることが知られています。除菌療法によりリスクを下げられる場合があります。
- 食事:塩分の多い食品(塩漬け、保存食品、燻製など)や発がん性の可能性が指摘される食品はリスクを高める傾向があります。ダイエット食品そのものが直接の原因であるという証拠は限られていますが、偏った食生活は注意が必要です。
- 喫煙・過度の飲酒:喫煙は胃がんのリスクを高めます。過度の飲酒も関連することがあります。
- 年齢・性別:高齢で発症しやすく、男性に多い傾向があります。
- 家族歴・遺伝:家族に胃がんの人がいる場合や、特定の遺伝性疾患(例:CDH1変異による遺伝性びまん性胃がん)ではリスクが高まります。
- その他の病気:悪性貧血(慢性萎縮性胃炎)や以前の胃手術などもリスク要因となることがあります。
症状(初期〜進行時)
早期の胃がんは自覚症状がほとんどないことが多く、症状が出たときには既に進行している場合があります。見られる主な症状は次のとおりです。
- 胃の不快感、上腹部痛、胸やけ
- 食欲不振、満腹感(少ししか食べられない)
- 体重減少、疲労感
- 吐き気・嘔吐、嚥下困難(物を飲み込みにくい)
- 黒色便(消化管出血の兆候)、血便、貧血
上記の症状が続く場合は早めに医療機関を受診してください。
診断・検査
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)と生検(組織検査):確定診断に最も有用です。粘膜の異常を直接観察し、組織を採取してがんの有無や組織型を調べます。
- 画像検査:CT検査などで病変の広がりやリンパ節・他臓器への転移を評価します。
- 血液検査:貧血の有無や全身状態の評価に用いられます。腫瘍マーカーは補助的に使われることがありますが、診断には内視鏡・生検が必要です。
治療法
治療は病期や患者さんの全身状態によって決まります。主な治療法は以下の通りです。
- 内視鏡的治療:早期がん(粘膜にとどまる小さな病変)では、内視鏡的粘膜切除(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で切除できる場合があります。
- 手術療法:進行がんでは胃の一部または全摘出(部分切除や全摘)と周囲のリンパ節郭清が行われます。
- 化学療法(抗がん薬):手術前後の補助療法や切除不能・転移例で用いられます。分子標的薬(例:HER2陽性例へのトラスツズマブ)や免疫療法(例:チェックポイント阻害薬)が適応となる場合もあります。
- 放射線療法:限られた状況で使われることがあります。
治療は複数の専門職(外科医、消化器内科医、腫瘍内科医、放射線科医、栄養士など)が連携して行うことが望まれます。
予後・生存率
胃がんの予後は病期に大きく左右されます。一般に
- 早期(がんが胃の粘膜・粘膜下層にとどまる場合):5年生存率は高く、報告によっては80〜90%以上とされることもあります。
- 進行(壁浸潤やリンパ節転移、他臓器転移がある場合):生存率は低くなり、治療法や患者さんの状態により幅があります。
国や医療体制、発見時のステージにより統計は変わるため、個々の予後は担当医とよく相談してください。
予防と早期発見のためのポイント
- ヘリコバクター・ピロリの検査と除菌:感染が確認された場合、除菌療法により将来的な胃がんリスクを低減できるとする研究が多数あります。医師と相談のうえ検査・治療を検討してください。
- 食生活の改善:塩分の摂りすぎを避け、燻製・塩漬け食品を控え、野菜や果物を十分に摂ることが勧められます。
- 禁煙・節度ある飲酒:喫煙は多くのがんリスクを高めます。禁煙を心がけましょう。
- 定期的な検査・スクリーニング:リスクが高い人や年齢に応じて、内視鏡検査などで早期発見を目指すことが重要です。国や地域のがん検診のガイドラインに従ってください。
- 家族歴がある場合の相談:家族に若年発症の胃がんや複数例がある場合は、遺伝カウンセリングや専門医への相談が必要なことがあります。
胃の不快感や体重減少、黒色便など気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。疑わしい場合は内視鏡検査での確認が推奨されます。治療方針や予後については担当医とよく相談することが大切です。
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