T2ファージとは?構造・感染過程とハーシー・チェイス実験の概要

T2ファージの構造と感染過程、ハーシー・チェイス実験の意義を図解で解説。DNAが遺伝物質である証拠と実験の流れを分かりやすく紹介。

著者: Leandro Alegsa

T2ファージは、正しくはEnterobacteria phage T2といいます。大腸菌に感染する代表的なバクテリオファージ(細菌を宿主とするウイルス)で、特に「T4様ウイルス(T-even phages)」と呼ばれるグループに属します。T2ファージは直鎖状の二本鎖DNAを持ち、このDNAはタンパク質から成る殻(カプシド)や尾部構造により保護されています。形態的には、特徴的な二十面体に近い頭部(カプシド)と収縮可能な尾部、基盤板と長い尾繊維を備えた「尾状ファージ(尾部のあるファージ)」です。T2を含むT-even群のゲノムは大きく、末端冗長性や円環状に並べ替わる(circular permutation)性質を示すことが知られています。

構造の特徴

  • 頭部(カプシド):遺伝情報を収めるタンパク質殻。二十面体に近い形状で、内部に直鎖状二本鎖DNAを収納。
  • 尾部:収縮可能な尾筒(シース)と尾芯(チューブ)を持ち、感染時に尾筒が収縮して尾芯を宿主細胞膜へ注入する経路を形成する。
  • 尾繊維と基盤板:宿主細胞表面の受容体を認識・結合する役割。これにより特異的に大腸菌に吸着する。
  • タンパク質コート:多数の構造タンパク質で構成され、DNAを保護すると同時に感染の際の機械的な働きを担う。

感染過程(ライティックサイクル)

T2は主に溶菌性(lytic)ファージで、感染は次のような段階で進行します。

  1. 吸着:尾繊維で宿主の細胞表面に結合する。
  2. 注入:尾筒の収縮により尾芯が細胞壁・細胞膜を貫通し、ファージのDNAが細胞質内に注入される。本文でも述べた通り、ファージのタンパク質殻は基本的に外側に残る。
  3. 宿主の奪取:注入されたDNAの遺伝子(早期遺伝子)が発現し、宿主の転写・翻訳機能を改変してファージの複製・発現に使わせる。
  4. 複製と構築:ファージDNAの複製、構造タンパク質の合成、プロフェノーム(パーツ)の組み立てが進行する(中期・後期遺伝子の発現)。
  5. 放出(溶菌):宿主細胞が破裂(溶菌)して多数の子ファージが放出される。産生数(バースサイズ)は宿主・条件により異なるが、通常は数十〜数百個に達することがある。

この過程により、もとの感染源は短時間で多くのT2ファージを生産する「工場」に変わります(本文の「細胞が破裂すると新しいファージが放出される」という記述)。T2を含むT-evenファージは代表的なモデル系であり、細菌遺伝学や分子生物学の基礎研究で広く用いられてきました。

ハーシー・チェイス実験の概要

ハーシーとチェイスが1952年に行った古典的な実験は、T2ファージを用いて遺伝情報の本体が何であるかを明らかにしました。実験の要点は次の通りです。

  • タンパク質とDNAを別々に放射性で標識:タンパク質は硫黄を含むアミノ酸により35Sで標識、DNAはリンを含む骨格により32Pで標識した。
  • それぞれの標識ファージで宿主の大腸菌に感染させた後、ブレンダーで殻(ファージの外側のタンパク質)をこそぎ落とし、遠心分離で細胞と殻を分離した。
  • 結果:32P(DNA)は細胞側に検出され、35S(タンパク質)はほとんど上清(外側)に残っていた。つまり、遺伝情報を細胞内に注入しているのはDNAであり、タンパク質殻は遺伝情報を伝える役割を果たしていないことを示した。

この実験は「遺伝物質はDNAである」という結論を支持する決定的な証拠となり、その後の分子生物学・遺伝学の発展に大きな影響を与えました(本文の「これらの発見は、タンパク質ではなく、DNAが遺伝物質であることを示している。」という記述)。

意義と現代的な視点

  • T2ファージとT-even群は、遺伝子構造・ウイルス複製メカニズムの理解に貢献したモデル生物であり、ハーシー・チェイス実験をはじめ多くの基礎実験で用いられた。
  • 現在でもファージ研究は、細菌学、遺伝学、分子生物学、バイオテクノロジー(例:ファージディスプレイ、ファージ療法の基礎研究)など幅広い分野に応用や影響を与えている。
  • T2自身は主に基礎研究の対象であり、感染メカニズムやウイルス−宿主相互作用の理解を深めるための重要な試料であり続けている。

補足として、T2は典型的な「溶菌性尾状ファージ」であるため、感染後に宿主細胞を破壊して増殖する点が強調されます。構造・感染過程・歴史的実験(ハーシー・チェイス)を合わせて理解することで、分子遺伝学の基礎概念がより明確になります。

質問と回答

Q: T2ファージとは何ですか?


A: T2ファージはエンテロバクテリア・ファージT2とも呼ばれ、大腸菌に感染するウイルスです。

Q: T2ファージはどのようなDNAを含んでいますか?


A: T2ファージは、直鎖状の二本鎖DNAを含んでいます。

Q: T2ファージは保護タンパク質の被膜で覆われていますか?


A: はい、T2ファージは保護タンパク質の被膜で覆われています。

Q:T2ファージはどのウイルスグループに属していますか?


A: T2ファージは、「T4様ウイルス」として知られるウイルスグループに属しています。

Q: T2ファージはどのようにして大腸菌に感染するのですか?


A: T2ファージのDNAが大腸菌細胞に注入されると、大腸菌細胞はすぐにT2産生工場に変わります。細胞が破裂すると新しいファージが放出されます。

Q: ハーシー・チェイスの実験から何がわかったのですか?


A:ハーシー・チェイスの実験では、ウイルスのDNAは細菌細胞の中に注入され、ウイルスのタンパク質の大部分は外部に留まることが示されました。注入されたDNA分子は、細菌細胞により多くのウイルスDNAとタンパク質を産生させます。これらの発見は、タンパク質ではなくDNAが遺伝物質であることを示したのです。

Q:ハーシー-チェイス実験は誰が行ったのですか?


A: ハーシー・チェイス実験はアルフレッド・ハーシーとマーサ・チェイスによって行われました。


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