テクニカルライティング入門:定義・目的・読者別の書き方ガイド
テクニカルライティング入門:定義・目的から読者別の実践的な書き方と視覚表現のコツを具体例でわかりやすく解説
テクニカルライティングとは、技術分野や職業分野に関するコミュニケーションのことであり、情報を正確かつ利用しやすい形で伝える技能です。Society for Technical Communication (STC) は、テクニカルライティングを「技術的なコミュニケーションのあらゆる形態」と定義しています。技術文書は専門家どうしのやり取りだけでなく、一般利用者や意思決定者、規制当局など幅広い読者を対象にします。
- コンピュータアプリケーション、医療処置、環境規制などの技術的または専門的なトピックについてのコミュニケーション。
- 技術的な性質にかかわらず、何かをするにはどうしたらいいかを指示する文書や手順書。
テクニカルライティングの目的
主な目的は次のとおりです。
- 理解を促進する:専門知識を持たない人にも分かるように情報を整理して提示する。
- 適切な行動を導く:手順書や操作マニュアルで、ユーザーが安全かつ確実に作業できるようにする。
- 信頼性を担保する:正確な事実、根拠、参照を示して誤解や事故を防ぐ。
- 効率化・共有:情報の再利用やチーム内外での知識共有を容易にする。
読者層の重要性と分析方法
読者層は文章設計の出発点です。同じトピックでも、対象読者が変われば書き方、用語、詳細レベル、図表の使い方が変わります。たとえば、医療に関する指示書を書くとき、対象は次のように分かれます:
- 医師・看護師などの専門家:専門用語や略語が使えるが、証拠や根拠を明確に示す必要がある。
- 教育水準の高い一般人:専門用語は説明をつける、背景情報を簡潔に示す。
- 低学歴の利用者や非専門家:平易な語と短い文、図や写真を多用して手順を示す。
- 英語が母国語でない読者:簡潔で明確なディクション、文化差への配慮、用語集や翻訳の準備。
"技術的な議論のレベルと形式を、意図した目的と聴衆に合わせる。読者については、学歴、職業経験、読解レベル、動機を考慮する。英語が母国語ではない読者にも理解しやすいように、明確でシンプルなディクションを使用する。"
文書の種類と書き方(目的別)
- 手順書(How-to / 操作マニュアル):目的→前提条件→手順(番号付き)→期待される結果→トラブルシューティング。各手順は短く、能動態で書く。図やスクリーンショットを適所に配置する。
- 仕様書・設計文書:目的、範囲、要件、制約、テスト基準を明確に。用語は定義し、一貫性を保つ。
- 報告書・学術的説明:背景、方法、結果、考察。出典やデータを明示して再現性を担保する。
- FAQ・簡易ガイド:よくある質問を見出しごとに整理。素早く解決したい読者向け。
- 教育資料・チュートリアル:段階的に学べる構成。練習問題や確認ポイントを含める。
構成とスタイル上の基本ルール
- 目的を最初に書く:読者が何を得られるかを冒頭で示す。
- 短い文と段落:1文は30語程度を目安に。段落ごとに1つの主題。
- 能動態と命令形の適切な使用:手順では命令形、説明では能動態を基本に。
- 専門用語は定義あるいは注釈を付ける:用語集を用意するのが有効。
- 一貫した用語・表記:同じ概念を指す語は文書内で統一する。
- 見出しと目次:長い文書では目次を設け、見出しで階層を明確にする。
視覚要素とアクセシビリティ
テクニカルライティングは文章だけでなく視覚的にも伝えます。コミュニケーションは全体の論理に沿っており、図や写真、表、フローチャートを使うことで理解が格段に上がります。たとえば記述的な説明は「車のエンジンの部品」のような図解で示し、手順的な説明は「タイヤを交換する方法」のようなステップ図で示すと効果的です。
実用的な百科事典は、通常、情報を提供し、それを行う方法のセクションを持っています。医療百科事典は、健康に関する疑問について読者に情報を提供します。図や写真には必ず代替テキスト(alt属性)を付け、色だけに依存しない表現を心がけ、読み上げソフトへの対応にも配慮します。
作成プロセスと品質管理
効果的なドキュメント作成は一度で完了しません。以下のプロセスを回します:
- 要求定義:対象読者、ゴール、使用環境、前提条件を明確にする。
- アウトライン作成:主要見出しと必要な図表を決める。
- ドラフト作成:簡潔に、段階を踏んで書く。
- レビューとユーザーテスト:対象読者や専門家に読み、実際に手順を試してもらう。
- 改訂・校正:用語の統一、誤字脱字、正確性の確認。
- 公開と保守:バージョン管理、更新履歴、フィードバックループを維持する。
実用チェックリスト(執筆時)
- 目的は明確か?(読者は何を達成できるか)
- 対象読者に合わせた語り口になっているか?
- 手順は順序立てて、検証可能か?
- 図・表・スクリーンショットは適切か、代替テキストはあるか?
- 重要な警告や注意点は目立つように示されているか?
- 用語集や参照リンクを用意しているか?
- レビューを受け、実際のユーザーでテストしたか?
ツールとフォーマット
ドキュメント作成には目的に応じたツール選びが重要です。簡易な手順書ならワープロやMarkdown、ソフトウェアマニュアルやAPIドキュメントならドキュメントジェネレーター(Sphinx、Docusaurus 等)、大規模なヘルプシステムならCMSや単一ソースパブリッシング(DITA など)を検討します。バージョン管理(Git)、翻訳ワークフロー、継続的な公開(CI/CD)も導入すると保守が容易になります。
まとめ
テクニカルライティングは単に「書く」ことではなく、読者が「正確に理解し、適切に行動できる」ように情報を設計・提示する技術です。読者分析を出発点に、目的に応じた構成、平易な表現、視覚要素、アクセシビリティ、そして継続的なテストと改善を組み合わせることで、実用的で信頼できる文書が作れます。印刷物が登場する前から、人々は常にハウツーガイドを必要としており、そのニーズに応えるのがテクニカルライティングの本質です。
質問と回答
Q: テクニカルライティングとは何ですか?
A: テクニカルライティングとは、コンピュータアプリケーション、医療処置、環境規制など、技術的または専門的なトピックについて伝えること、あるいは、作業の技術的性質にかかわらず、何かを行う方法について指示を与えることを含むあらゆる形態のコミュニケーションを指します。
Q: テクニカルライティングの対象者は誰ですか?
A: テクニカルライティングの対象者は、コミュニケーションの目的やトピックによって異なります。医師や看護師、一般教養のある一般人、あるいは低学歴の人などです。
Q: 技術的な議論や形式は、どのように意図された読者に合わせるべきでしょうか?
A: 聴衆の学歴、職業経験、読書レベル、動機などを考慮し、目的とする聴衆に合わせた技術的な議論や形式をとる必要があります。また、英語が母国語でない読者にもわかりやすいように、明確でシンプルな表現が必要です。
Q: テクニカルライティングは口頭で伝えるだけなのでしょうか?
A: いいえ、口頭だけでなく、視覚的にも伝えることができます。コミュニケーションは、情報を効果的に伝えるために、全体的なロジックに従わなければなりません。
Q: テクニカルライティングで使われる2つのアプローチとは何ですか?
A: テクニカルライティングでよく使われる2つのアプローチは、記述的アプローチ(例:「車のエンジンの部品」)と問題解決的アプローチ(「タイヤの交換方法」)です。
Q: 百科事典はテクニカルライティングの実用的な例として適していますか?
A: そうです。実用百科事典は通常、さまざまなトピックについて読者に情報を提供すると同時に、そのトピックに関連する何かを行う方法を説明するハウツーセクションを備えています。特に医学系の百科事典は、健康上の疑問点を解決するための情報を提供し、その対処法を解説しているので、その良い例です。
Q: やり方ガイドはいつから登場したのですか?
A:ハウツーものは、印刷物として登場する以前の原稿が最初です。
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