定義
百科事典(エンサイクロペディア)は、情報の集合体で、特定の分野に限らない幅広い知識を体系的にまとめた書物やデータベースを指します。紙の多巻本として編纂されるものが伝統的ですが、索引・相互参照・図版・地図・参考文献などを含み、学習や参照のための包括的な情報源として使われます。
歴史と発展
百科事典に相当する知識の集成は古代から存在しました。代表的な初期の例として、長老プリニウスの博物誌(Naturalis Historia)があり、自然や人文に関する広範な記述を含みます。
「百科事典」という語そのものは、16世紀ごろから用いられるようになり、「完全な知識」を意味する考え方を表すようになりました。18世紀のフランスでは、ドゥニ・ディドロらによる百科事典の編纂が行われ、事典は、世界中の多くの人々の協力で主要部分が作られた最初期の大規模プロジェクトの一つとされています。
印刷機が発明されて以降、長い説明や論考を含む書物は、単なる辞書(語の定義を扱うもの)とは区別され、テーマごとの論述や学説を含む百科事典として発展しました。例えば科学に関する書が、単なる語義説明を超えてエッセイや
パラグラフを含む場合、それは「科学の百科事典」と見なされることがありました。
編纂方法と構成
- 主題別編纂:ある分野ごとに詳細な論述をまとめる方式。
- 項目別(アルファベット順)編纂:多くの近代百科事典が採用している方式で、個々の項目をアルファベット順に並べ、検索しやすくする。
- 図表・写真・地図・年表・参考文献:項目の補足として豊富なビジュアルや出典を付すことで信頼性と利便性を高める。
- 索引・クロスリファレンス:関連項目を相互に参照できるようにして情報をつなげる。
印刷からデジタルへ:オンライン化の経緯
百科事典は長らく印刷物が中心でしたが、一部がCD-ROMやインターネットになった20世紀後半以降にデジタル化が進みました。21世紀に入ると、多くの百科事典がウェブ上で提供され、検索機能や更新の容易さ、マルチメディア対応などの利点によりオンライン版が主流になっています。
代表的な百科事典(例)
現代における主要な英語の百科事典としては、まず英語版のウィキペディアで、これは多数のボランティアによる記事群を迅速に更新でき、数百万件の項目を有しています。次に大規模なものとして、伝統的な編集プロセスを維持してきたEncyclopædia Britannicaで、これは印刷されているものでは最大のものです。これらはいずれも多様なトピックを扱い、利用目的や信頼性の要求度に応じて使い分けられます。
編纂体制と信頼性
伝統的な百科事典出版社(例えばブリタニカのような会社)は、個人への販売や図書館での公共利用を想定し、専門家を数多く雇用して記事を執筆・査読・編集してきました。辞書のように定義が中心の作品とは異なり、百科事典は長い解説や総説的な論考を含むことが多いため、分野ごとの専門家の関与が重要です。
一方でインターネット上の百科事典にはいくつかのモデルがあります。ある種のオンライン事典は既存の百科事典や出版社とのライセンス契約に基づいて有料サービスを提供することがあり、またオープンなモデルでは非登録のユーザーやボランティア編集者の投稿・編集を受け入れて、集団で内容を更新していきます。それぞれに利点と欠点があり、検証可能な出典・編集履歴・査読体制などを確認して利用することが重要です。
利用上の注意と活用法
- 学術目的や厳密な裏取りが必要な場合は、出典や査読体制が明示された項目や二次・一次資料を併用する。
- 概要把握や初期調査、用語確認には百科事典が有用。参考文献リストを辿ることで深掘りも可能。
- オンライン版は更新が頻繁な反面、編集履歴や出典の確認を怠らない。
まとめ
百科事典は、人類の知識を体系的に整理・提供するための重要なツールです。印刷物としての長い伝統を持ちつつ、デジタル化によって利便性とアクセス性が飛躍的に向上しました。利用者は目的に応じて伝統的な編集による信頼性の高い事典と、即時性や広範性を持つオンライン事典を使い分け、出典や編集方針を確認して活用することが求められます。

