バイユー・タペストリーとは:ノルマン征服を伝える中世刺繍の全貌

バイユー・タペストリーの全貌を解説。ノルマン征服を描く中世刺繍の制作背景・技法・史料価値、保存・展示情報まで詳しく紹介。

著者: Leandro Alegsa

バイユー・タペストリーは、幅およそ0.5メートル、長さ約68.38メートル(約1.6フィート×224.3フィート)の刺繍入りの布で、実際のタペストリーではありません。11世紀中頃から後半にかけて制作されたと考えられ、ノルマン人によるイングランド征服に至るまでの出来事や、戦争そのものの場面が連続的に描かれています。各場面には簡潔なラテン語の注(説明文・題語)が付けられており、物語性の強い史料として重要です。現在はノルマンディーのバイユーにある「バイユー・タピスリー美術館」に展示されています。

主題と構成

このタペストリーは、ノルマンによるイングランド征服の物語を描いています。物語は、1066年のイングランド王戴冠前後から始まり、ハロルド・ゴッドウィンソン率いるアングロサクソン系イングランドと、征服者ウィリアム率いるノルマン系勢力との対立および戦闘を順に追います。特にハロルドの戴冠、ノルマン上陸、ヘイスティングズの戦いなど重要場面が描写されています。

制作と起源

制作年はおおむね11世紀後半、制作地については長年議論がありますが、ノルマン人が依頼しつつも、当時のイングランドにいたアングロサクソン系の職人が刺繍した可能性が高いとされており、そのためアングロサクソン美術の特色を備えた作品と見なされています。伝統的な説ではノルマンディーの有力者、特にバイユー司教オドが発注したと考えられていますが、確証はなく研究は続いています。

素材と技法

バイユー・タペストリーは、タビー織りのリネン地に毛糸を使って刺繍されています。使用された糸は主に羊毛で、縫い方は大きく分けて輪郭を描く“ステムステッチ”のような線状の縫いと、面を埋める“レイド・アンド・カウチング(敷きと押さえ)”に相当する技法が用いられています。布は複数のパネルをつなぎ合わせてあり、経年で多数の補修やパッチが施されています。

色彩は天然染料によるもので、主な糸色はテラコッタやラセット、青緑、くすんだ金、オリーブグリーン、青などで、濃紺や黒、セージグリーンなどが少量含まれます。これらの色は動植物や人物、船、建物を区別して描写するのに用いられ、単純化された図像表現ながら視覚的に強い印象を与えます。

場面の特徴と記述

全長にわたって人物、馬、船、建物、動物、戦闘シーンなどが連続的に配され、しばしば縁飾りに神話的・日常的な小場面が描かれます。付されたラテン語の注(tituli)は場面の要点を簡潔に説明し、当時の観衆に物語を伝える役割を果たしました。描かれる人物像や衣装、武具は当時の服飾・軍装研究にとって重要な一次資料です。

保存・展示・修復

長い間教会や大邸宅で保管されてきたため、部分的な損傷や欠損、のちの修復が見られます。19世紀以降の収集・研究によって修復や保存処置が行われ、現在は温度・湿度管理の下で展示されています。前述のように作品は複数のパネルに分かれ、歴史的な補修痕も残っています。

歴史的意義と学術的議論

バイユー・タペストリーは、単なる装飾品を超え、当時の政治的・軍事的出来事を伝える視覚的ドキュメントとして評価されています。王権の正当性や征服の正当化を意図したプロパガンダ的側面があると指摘する研究者もいれば、現場に近い目撃情報を反映した比較的直接的な記録と見る向きもあります。作者や依頼者、その制作地・制作時期については未解決の点が多く、活発な研究対象です。

まとめ

バイユー・タペストリーは、素材・技法・物語性が融合した中世の傑作であり、ノルマン征服をめぐる史的理解や中世美術研究にとって不可欠な資料です。現在は

ノルマンディーのバイユーで保存・公開され、訪問や高精細画像によって広くその図像と記述を学ぶことができます。

参考:制作年代はおおむね11世紀後半、技法はリネン地への刺繍(タペストリーではなく刺繍作品)である点は、中世初期の他の吊物と共通します。織り込みによる本当のタペストリーではなく、刺繍作品であることは重要な分類上の相違点です。

補足:染料や糸の組成、縫い方の詳細、修復履歴については近年の科学分析と保存技術の進展により新たな知見が得られており、今後もさらに解明が進む分野です。

 ハロルドがノルマンディーにやってくるZoom
ハロルドがノルマンディーにやってくる

 ステムステッチとレインワークの詳細です。Zoom
ステムステッチとレインワークの詳細です。

質問と回答

Q:バイユーのタペストリーとは何ですか?


A:バイユー・タペストリーは、1066年のノルマン人によるイングランド征服に至るまでとその間の出来事を描いた、0.5×68.38メートル(1.6×224.3フィート)の刺繍の布地です。

Q: どこで見ることができますか?


A: タペストリーは、ノルマンディーのバイユーにあるMusée de la Tapisserie de Bayeuxという特別な美術館で展示されています。

Q: タペストリーに描かれている二人の戦闘員は誰ですか?


A:ハロルド・ゴッドウィンソン率いるアングロ・サクソン系イングランド人と、ウィリアム・ザ・コンカー率いるノルマン人の2人が、タペストリーに描かれています。

Q: なぜ、アングロサクソン美術の重要な例と考えられているのですか?


A: ノルマン人の注文でありながら、イギリス人(アングロサクソン人)の職人によって作られたため、アングロサクソン芸術の重要な例と見なされているのです。

Q: タペストリーなのか、刺繍なのか、どちらでしょうか?


A: デザインを布に織り込むタペストリーではなく、タビー織りのリネンの地に毛糸で刺繍をしたもので、文字や図形の輪郭を描くためのアウトライン・ステッチと、図形を埋めるためのコーシング・レイドワークの2種類の縫い方で作られています。

Q: タペストリーにはどんな色が使われているのですか?


A: 主な糸の色は、テラコッタ、ラセット、ブルーグリーン、ダルゴールド、オリーブグリーン、ブルーで、ダークブルーやブラック、セージグリーンが少量使われています。


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