テトラサイクリン(広域抗生物質)とは?歴史・作用機序・用途・副作用

テトラサイクリンの歴史・作用機序・用途・副作用を詳解|発見から臨床応用、ニキビや感染症治療、注意点までわかりやすく解説

著者: Leandro Alegsa

テトラサイクリンは、1945年に天然物として発見された抗生物質の一種で、様々な細菌に作用することから広域抗生物質と呼ばれています。天産菌の一種によって自然に生産され、臨床では複数の合成・半合成化合物が用いられています。

歴史と発見

テトラサイクリン類は1940年代に発見され、1948年には初めて臨床で処方されました。これは主に放線菌の一種であるストレプトミセスが生産する天然物を基にしています。1950年にはハーバード大学の研究者らが関連物質の化学構造(例:オキシテトラサイクリン=テラマイシン)を解明し、製造法に関する特許が登録されました。歴史的には、コレラなどの感染症の治療や死亡率低下に貢献し、現在も世界保健機関(WHO)の「必須医薬品リスト」に登録されています。

作用機序

テトラサイクリン類は主に蛋白質合成を阻害する薬剤で、細菌のリボソームの小サブユニット(30S)に結合して、アミノアシルtRNAがリボソームのA部位に結合するのを妨げます。これにより新たなタンパク質の合成が抑えられ、一般には静菌的(増殖を抑える)に作用します。作用は広範囲のグラム陽性・陰性菌、リケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、スピロヘータ類などに及びます。

臨床的な用途(代表例)

  • にきび(尋常性ざ瘡)や酒さ(酒さ性皮膚炎)の治療
  • 呼吸器感染症(特にマイコプラズマやクラミジア、非定型病原体によるもの)
  • リケッチア感染症(発疹チフス、ロッキー山紅斑熱など)やライム病
  • クラミジア感染(尿道炎、頸管炎)の治療
  • 一部の歯周病や眼科領域の感染症
  • 過去にはコレラなどの流行時治療にも重要な役割を果たした
  • ドキシサイクリンやミノサイクリンなどの誘導体は、適応や薬物動態の違いから多様な臨床場面で使われる

主な製剤と薬物動態上の特徴

  • 代表的な薬剤:テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリンなど
  • 吸収は経口投与で良好だが、カルシウム、鉄、マグネシウムなどの二価・三価イオンとキレートを作り、吸収が大きく低下する(牛乳、制酸薬、鉄剤と同時内服を避ける)。
  • ドキシサイクリンは腎排泄が比較的少なく、腎障害のある患者でも用いやすい(用量調整が容易な場合が多い)。
  • 骨や歯に沈着しやすいため、妊婦や小児(主に8歳未満)では使用は原則禁忌とされる。

副作用と注意点

  • 消化器症状:悪心、嘔吐、下痢、食欲不振がよく見られる。
  • 歯・骨への影響:発育中の歯に着色(黄色〜褐色)やエナメル質形成不全を起こす可能性があり、妊婦や小児は禁忌。
  • 光線過敏:日光に当たると皮膚に強い日焼け様反応を起こすことがある(特にテトラサイクリンやドキシサイクリン)。
  • 肝毒性:まれに重篤な肝障害を起こすことがある。高用量投与や妊婦でのリスクに注意。
  • 腎機能障害:旧来の一部薬剤では腎機能低下で蓄積・中毒を生じることがある(ドキシサイクリンは比較的安全)。
  • 内耳障害:めまい・ふらつき(特にミノサイクリンに報告あり)。
  • 腸内細菌叢の乱れによる二次感染(カンジダなど)や偽膜性腸炎のリスク(まれに)
  • 投与時の相互作用:カルシウム・鉄剤・制酸薬との併用は吸収低下、経口避妊薬の効果にわずかな影響が報告されているが臨床的に重要かは議論がある。

耐性の問題と抗菌薬管理

テトラサイクリンに対する耐性は世界的に増加しています。主な耐性機構には以下があります:

  • エフラックスポンプ(薬剤を細胞外へ排出)
  • リボソーム保護タンパク質(リボソームへの結合を阻害)
  • 薬剤の化学修飾・不活化酵素の産生

耐性の広がりにより、経験的治療では使用が制限される場合があり、可能な限り感受性試験に基づいた選択が推奨されます。抗菌薬の適正使用(抗菌薬スチュワードシップ)が重要です。

妊娠・授乳・小児への対応

  • 妊婦:胎児の骨・歯への影響を避けるため原則禁忌。
  • 授乳:薬剤により乳汁移行があり、乳児への影響を考慮する必要がある。
  • 小児:永久歯芽に着色や成長障害を来すため、一般に8歳未満では避ける。

まとめ:テトラサイクリン類は歴史的にも臨床的にも重要な広域抗生物質で、多くの細菌性感染症に有効です。しかし、歯や骨への影響、光線過敏、肝腎毒性、そして耐性の問題があるため、適切な適応・投与方法を守り、必要に応じて感受性試験や専門家の判断を仰ぐことが大切です。世界保健機関(WHO)のリストにも示される通り、現在でも重要な医薬品群として位置づけられています。

テトラサイクリンの構造Zoom
テトラサイクリンの構造

質問と回答

Q: テトラサイクリンとは何ですか?


A: テトラサイクリンは1945年に天然物として発見された抗生物質の一種です。

Q: テトラサイクリンはどのように作用するのですか?


A: テトラサイクリンはタンパク質合成阻害剤で、様々な細菌に作用します。

Q: テトラサイクリンが最初に処方されたのはいつですか?


A: テトラサイクリンは1948年に初めて処方されました。

Q: オキシテトラサイクリンの化学構造を発見したのは誰ですか?


A: ハーバード大学のロバート・バーンズ・ウッドワード教授が、1950年に関連物質であるオキシテトラサイクリンの化学構造を解明しました。

Q: テトラサイクリンは何によく使われますか?


A: テトラサイクリンは、にきびや酒さの治療によく使用されます。

Q: コレラによる死亡者数を減少させる上で、テトラサイクリンは歴史的にどの程度重要でしたか?


A: 歴史的に、テトラサイクリンはコレラによる死亡者数を減らすのに重要でした。

Q: テトラサイクリンは世界保健機関(WHO)の必須医薬品リストに載っていますか?


A: はい、テトラサイクリンは世界保健機関の必須医薬品リストに載っています。


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