War』は、アイルランドのロックバンドU2が1983年に発表した3枚目のスタジオアルバムです。 バンドの初期3作目にあたり、サウンドも歌詞のテーマもそれまでの作品から大きく転換した重要作です。
背景と制作
デビュー作の『ボーイ』が子供時代を扱い、セカンドの『オクトーバー』が精神性に向き合っていたのに対し、本作は明確に戦争と政治を主題に据えました。録音は1982年後半から1983年初頭にかけて行われ、プロデューサーはスティーヴ・リリーホワイト(Steve Lillywhite)。バンドはより直接的で力強い演奏と、エッジのディレイを効かせたギターやラリー・マレン・ジュニアの軍隊的なドラムなど、ライブでの即効性を重視したサウンドを追求しました。
主題と歌詞
アルバム全体を貫くのは紛争、政治的不安、個人の葛藤への応答です。代表曲の一つ「Sunday Bloody Sunday」は、北アイルランドでの暴力や政治的対立に対する痛切な反省を歌い、反戦・反暴力のアンセムとして広く知られるようになりました。一方で「New Year's Day」は、ポーランドの連帯運動(Solidarity)など当時の国際的な政治動向を間接的に想起させる歌詞を持ち、個人的な感情と政治的テーマを結びつけています。
ボノは当時の状況について、"フォークランドから中東、南アフリカまで、どこを見ても戦争が起こっていた "と語っており、そうした世界情勢がアルバムのタイトルと内容に反映されています。
シングルと代表曲
- Sunday Bloody Sunday — 生々しいドラムとストリングス風のギター・フレーズが印象的で、政治的メッセージを持つバンドの代表曲に。
- New Year's Day — シンセ・ベースとメロディアスなギターが特徴。ラジオヒットとなり、バンドの知名度を国際的に高めました。
- Two Hearts Beat As One — ロック色の強いナンバーで、アルバムの多様な側面を見せる曲。
発売後の反響と評価
Warは、リリース直後に商業的な成功を収めました。マイケル・ジャクソンのアルバム『スリラー』は、チャートのトップから陥落した。War」は、U2にとってイギリスで初めて1位を獲得したアルバムとなった。最初はイギリスの批評家にはあまり好まれていなかったが、数年後には支持されるようになった。
当時の批評は賛否両論でしたが、時間の経過とともにアルバムの意義が再評価され、U2を国際的なロックバンドへと押し上げた作品として位置づけられるようになりました。
影響とレガシー
WarはU2のキャリアにとって転換点となり、その後のスタジアム・ロック的な展開の基盤を作りました。政治的・社会的メッセージをストレートに音楽に込める姿勢は、以降のアルバムやライブ・パフォーマンスにも大きな影響を与え、特に「Sunday Bloody Sunday」は反戦ソングの定番として長く歌い継がれています。多くのファンや批評家にとって、U2のアイデンティティを形作る重要作と見なされています。
補足(聴きどころ)
- ボーカルの激情と抑制のバランス、エッジのギター音作り、リズム隊の直線的なグルーヴに注目してください。
- 歌詞カードや当時のインタビューを読むと、各曲に込められた政治的背景や個人的モチーフがより明確になります。