ワッチェザ(Wattieza)|デボン紀の世界最古の樹木—ギルボアの化石と特徴

ワッチェザ(Wattieza)は現時点で最古の樹木として知られている化石群の一つで、デボン紀中頃に出現した初期の「木本」植物を代表する存在です。

発見と歴史

その主要な化石は、アメリカ・ニューヨーク州ギルボア地域で見つかりました。これまでに報告された断片的な
化石は長年にわたり別々に保管されていましたが、2005年の研究で地上部の冠(クラウン)化石と、1870年頃から知られていた根・幹に相当する化石とが一体化していることが確認され、初めて全体像が復元されました。

形態と生態

復元によれば、ワッチェザは高さが約8m以上に達し、見た目は現代の木生シダのように、頂部に大きな羽状の葉(フロンド)を持つ「樹木状」の姿をしていたとされています。幹は地中の支持組織と結びついた太い基部をもち、上部で多数の側枝が分かれて葉群を形成していたと考えられています。

生態的には、ワッチェザは根系で土壌を安定させ、陸上生態系における立体的な植生構造を作り出した初期の植物の一つです。気候や大気組成に与えた影響(例えば炭素固定や土壌形成を通じた二酸化炭素の長期循環への寄与)は、後の森林発達に繋がる重要なステップと評価されています。

年代と分類

ワッチェザは約3億8500万年前のデボン紀中頃に生息していたとされ、分類上はクラドキシロプシド類に近いグループに置かれます。現生のシダやスギナに似た特徴を示す点が指摘されますが、形態学的には現生群とは明確に異なる独自の構造を持っていました。

ギルボアで見つかった「切り株」の化石群はかつてEospermatopterisとして記述され、個々の断片だけでは全体の植物像は不明でしたが、冠と幹・根の結合が確認されたことにより、これらが同一の植物体に属することが明らかになりました。当時の研究では完全な植物は不明のままであった問題が解消され、ワッチェザの解釈が大きく前進しました。

繁殖方式

ワッチェザは種子植物ではなく、葉を持ちながらも種子ではなく胞子で繁殖していたと考えられています。これはデボン紀の他の初期陸上植物と共通する特徴で、当時の植生が胞子を中心とした再生戦略を採っていたことを示します。

重要性

  • ワッチェザは「樹木」の起源と初期の森林化を理解するうえで重要な標本であり、陸上生態系の構造化や地球環境変動に関する研究に重要な手がかりを与えます。
  • 化石の復元は、断片的な標本を統合して古代植物の全体像を再構築する方法論の好例となりました。

現在も新たな発見や解析が進んでおり、ワッチェザや同時代の植物群の研究は、地球史における植物進化の重要なパズルの一片を埋め続けています。


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