鞭(打楽器)とスラップスティック—構造・音色・歴史とオーケストラでの使用

鞭(打楽器)とスラップスティックの構造・音色・歴史、ラヴェルやマーラーの名曲での使用例、オーケストラでの実践と演奏ポイントを図解で解説。

著者: Leandro Alegsa

平手打楽器の一つで、主に打撃音による効果音・アクセントを目的として使われます。一般的な構造は、二枚の板を蝶番でつないだ形で、奏者が板の持ち手を持ち、板同士を打ち合わせることで鋭い「パチッ」「ビシッ」とした音を出します。原理としては、板が急速にぶつかることで短く鋭い衝撃音が発生し、鞭の破裂音に似た効果が得られます。

構造と演奏法

基本的な材料は硬質の木材(ヒッコリー、メープルなど)が一般的ですが、サイズや材料、蝶番の種類によって音色は変わります。2本の木片を蝶番で繋いだ構造はシンプルですが、以下の点が演奏に影響します。

  • 板の長さと厚さ:長い板は共鳴が増してやや大きな音に、厚い板はより硬い音に。短く軽い板は速い動きに向きます。
  • 蝶番の取り付け位置と強さ:蝶番位置が端寄りだと動きが大きくなり、中央に寄るとコントロールしやすくなります。
  • 持ち手:奏者の指が挟まれないように、各板に持ち手や溝が付いています。グローブ着用やテーピングで手を保護する場合もあります。
  • 演奏法:両手で両側から持って打ち合わせる両手奏法と、片手で振る片手奏法があります。ショートアクセントや反復は、手首と腕の動きでダイナミクスを調整しますが、音量・音色の幅は限られます。

スラップスティックとの違い

鞭に似た楽器にスラップスティック(英語:slapstick)があります。両者は見た目も使い方も似ていますが、設計上の違いと音色の差が明確です。

  • 形状の違い:鞭は二枚の板がほぼ同じ大きさのことが多いのに対し、スラップスティックは片方の板がもう片方より長い(または大きい)設計になっていることが多く、片手で操作しやすくなっています。
  • 音色の違い:スラップスティックはより「重くて鈍い」打撃音や、板が離れて再び叩きつけられることによる特有の連続的なアタックを出す傾向があり、鞭の「ピシッ」と裂けるような音とは異なります。
  • 演奏技術:スラップスティックは片手で素早く振ることで効果的に鳴らせるため、オーケストラ書法でも用途が分けられることがあります。

オーケストラでの使用と代表的な作品

鞭やスラップスティックは、現代のオーケストラやバンド、パーカッション・グループで用いられ、劇的な効果やリズムのアクセント、効果音的な場面で重宝されます。クラシック音楽の管弦楽曲でも使用例があり、たとえばラヴェルのピアノ協奏曲の一部(第3楽章冒頭など)や、ブリテンの「Young Person's Guide to the Orchestra」の中で鞭の音が使われる例が知られています。

また、以下の作曲家たちも鞭やスラップスティックを使っています:マーラー、リヒャルト・シュトラウス、ラヴェルムソルグスキー、ヒンデミット。それぞれ用途は異なり、瞬間的な効果音としての使用から、舞台効果や風刺的な表現まで幅広く登場します。

歴史と変遷

板を打ち合わせて音を出す原理の楽器は古くから存在し、舞台や儀式で効果音として使われてきました。最初の鞭(あるいは鞭に似た打楽器)は中世の14世紀ごろに考案されたとされ、劇場や行事での効果音の需要から発展したと考えられています。近代オーケストラでは19世紀後半以降、作曲家が色彩効果を求めて配列するようになりました。

記譜と実務上の注意

  • 記譜:楽譜上では「Whip」「Slapstick」「Wood block」などの指示が英語で書かれることが多く、打点の位置やダイナミクス、演奏法(片手/両手)を具体的に指示する場合があります。オーケストラのパーカッション譜では音の長さや反復の数を明確に書くのが一般的です。
  • 配置:舞台上では他の打楽器とともにパーカッション・セクションに置かれます。非常に鋭い音なので、必要に応じて舞台奥や楽員の背後で使用されることもあります。
  • 安全と保護:板で指を挟まないよう注意が必要です。演奏者は手の保護(薄手のグローブやテーピング)を行うことがあります。また、建物や近隣の演奏者への影響を考え、過度に大きな音量で鳴らさない配慮も必要です。
  • 代替:屋内や録音で生の「ビシッ」という音が不適当な場合、短いスナップを録音したサンプルや、ゴムパッド付きの模型などで代用することもあります。

まとめ

鞭とスラップスティックは単純な構造ながらもオーケストラに独特のアクセントや効果を与える打楽器です。板の形状・材料・蝶番の位置・奏法の違いにより音色が変わり、両者は用途によって使い分けられます。歴史的には中世から存在する音響効果で、近代以降は多くの作曲家が表現手段として取り入れてきました。演奏・配置・保守の面で注意を払うことで、安全に効果的に使用できます。

スラップスティックZoom
スラップスティック

質問と回答

Q:音楽におけるムチやスラップスティックとは何ですか?


A: ムチまたはスラップスティックは、2つの木片を蝶番でつないだ打楽器で、叩き合わせてムチのような音を出します。

Q: 鞭はどうやって打つのですか?


A: 演奏者はそれぞれの木片の柄の部分を持ち、指を挟まないように叩き合わせます。

Q: 鞭はどこでよく使われるのですか?


A: ムチは、現代のオーケストラ、バンド、打楽器グループでよく耳にします。

Q: 鞭を使ったクラシック音楽をいくつか挙げてください。
A: はい、ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調(第1楽章)の冒頭や、ブリテンの「オーケストラへの若者の手引き」の中で、クラシック音楽の中で鞭が使われています。

Q: スラップスティックとは何ですか?


A: スラップスティックとは、片方の板がもう片方の板より長い、片手で演奏できる鞭の一種です。演奏者が素早く楽器を振ると、小さな板が大きな板から離れ、またその上に叩きつけられるので、鞭とは違った種類の音が出ます。

Q:スラップスティックを使った作曲家は?


A:マーラー、リヒャルト・シュトラウス、ラヴェル、ムソルグスキー、ヒンデミットなどです。

Q: 最初の鞭はいつ作られたのですか?


A: 最初の鞭は14世紀にデザインされました。


百科事典を検索する
AlegsaOnline.com - 2020 / 2025 - License CC3