サー・ジョン・サルストン(1942–2018)—英国の生物学者、2002年ノーベル医学賞受賞者、ウェルカム・サンガー研究所初代所長

Sir John Edward Sulston FRS(1942年3月27日 - 2018年3月6日)は、イギリスの生物学者で、発生生物学とプログラム細胞死(アポトーシス)の研究における先駆的業績により、2002年ノーベル生理学・医学賞をシドニー・ブレンナーおよびH. ロバート・ホーヴィッツと共に受賞した。

ウェルカム・サンガー研究所の初代所長を務め、その後はマンチェスター大学の科学・倫理・イノベーション研究所(Institute for Science, Ethics and Innovation)などで科学政策や倫理の研究・教育にも関わった。

生涯と略歴

サルストンは1942年に生まれ、ケンブリッジ大学で学んだ後、分子生物学の分野でキャリアを築いた。初期にはシドニー・ブレンナーらと共同で線虫(Caenorhabditis elegans)を用いた研究に従事し、このモデル生物を使って完全な細胞系譜(個々の細胞がどのように分裂・分化するかの全記録)を決定した。この業績は発生過程と細胞死の遺伝的制御を理解する基盤となった。

主要な研究業績

  • C. elegansの細胞系譜の解明 — サルストンは顕微鏡観察と系統的解析を通じて、雌雄を含む個体の全ての細胞系譜を世界で初めてほぼ完全に記録し、発生生物学に大きな洞察を与えた。
  • プログラム細胞死(アポトーシス)の遺伝学的解明 — 特定の遺伝子がどのように細胞死を制御するかを明らかにし、この分野の発展に決定的な貢献をした。これらの研究は動物全般の発生や疾患(がんや神経変性疾患など)理解にも結びついた。
  • ヒトゲノムプロジェクトと公共性の擁護 — サルストンはゲノム配列解読の大規模プロジェクトに深く関わり、ウェルカム・サンガーセンター(後のウェルカム・サンガー研究所)を設立・率いて大量の配列データの公開を推進した。営利目的によるデータ独占に批判的で、科学データのオープンアクセスと公共性を強く主張した。

科学政策・倫理への貢献

研究者としての業績に加え、サルストンは科学の社会的影響や研究成果の共有に関する議論にも積極的に関与した。私的企業によるゲノムデータの扱いやバイオテクノロジーの倫理問題について公開の場で発言し、政策立案や公共の理解促進に寄与した。また、著書や講演を通じて科学と社会の相互関係を広く説いた。

受賞・栄誉

  • 2002年 ノーベル生理学・医学賞(シドニー・ブレンナー、H. ロバート・ホーヴィッツと共同受賞) — 「器官の発生とプログラム細胞死の遺伝的制御の発見」に対して授与。
  • イギリス王立協会フェロー(FRS)など、複数の栄誉を受けた。2001年にはナイトに叙され、"Sir" の称号を得た。

晩年と遺産

晩年も科学政策や倫理の問題に関与し続け、2011年にはスウェーデン・ストックホルムで開催されたノーベル賞受賞者シンポジウム「グローバル・サステナビリティ」に参加して「ストックホルム覚書」に署名するなど、地球規模の持続可能性や人類の未来に関する議論にも加わった。2018年3月6日に逝去したが、彼の研究と公共性を重視する姿勢は現在の生命科学の基盤と科学文化に大きな影響を残している。

主要な著作としては研究報告に加え、一般向けに科学と社会を論じた著書があり、研究者だけでなく政策担当者や一般市民にも影響を与えた。



欧州バイオインフォマティクス研究所とサンガー研究所のサルストン研究所。Zoom
欧州バイオインフォマティクス研究所とサンガー研究所のサルストン研究所。

仕事

最初はケンブリッジ大学のペンブローク・カレッジに留学し、1963年に卒業した。その後、同大学に留まり博士号を取得した。しばらくカリフォルニアラホーヤのソーク研究所で働いた後、ケンブリッジに戻り、MRC分子生物学研究所のシドニー・ブレナーのもとで働くことになった。

サルストンは、虫とヒトのゲノム配列決定プロジェクトで中心的な役割を果たしました。線虫ゲノムの解読が進むにつれて、ヒトゲノムの解読プロジェクトが始まった。この時点で、彼は新しく設立されたサンガーセンター(フレッド・サンガーにちなんで命名)の所長に就任した。

LMBでの研究期間中、サルストンの最も重要な貢献のひとつは、線虫の細胞が分裂する正確な順序を見いだしたことである。実際、彼と彼のチームは線虫の細胞の全系統を追跡することに成功した。サルストンは、ヒトの遺伝情報の特許化に反対する運動のリーダー的存在であった。



死亡

サルストンは2018年3月6日に75歳で亡くなりました。




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