リップノット(Slipknot)はアイオワ州デモイン出身のヘヴィメタルバンド。1995年にヴォーカリストパーカッショニストのAnders Colsefini、ギタリストのDonnie SteeleとJosh "Gnar" Brainard、ベースのPaul Gray、ドラマーのJoey Jordison、パーカッショニストのShawn Crahanで結成された。初期から打楽器を複数用いる攻撃的で重厚なサウンド、そして個々に異なるマスクと「番号」で識別されるビジュアルを特徴とし、やがて世界的な成功を収めることになる。1999年のデビュー・アルバム発売を前後してラインナップの変遷があったものの、1999年以降は9人編成を基礎に活動してきた。

1996年、バンドがデモアルバム「Mate.フィード。殺す。リピート。」を制作していた頃、ギタリストのドニー・スティールがバンドを離れ、クレイグ・ジョーンズが加入した。まもなくドラマーのジョーディソンはフルタイムのサンプラー(サウンド操作担当)を必要と考え、ジョーンズはその役割も兼ねるようになった。さらに、ミック・トムソンが新たなギタリストとして参加し、楽曲の厚みが増していった。Mate. Feed. Kill. Repeat.の次期作に向けた制作過程で、ヴォーカル面での拡張が必要となり、当時のリード・シンガーであったコルセフィーニは新しい歌唱表現に苦戦したため、1997年にコーリー・テイラーが加入。コーリーは参加後すぐに化学反応が生まれ、コルセフィーニはバッキング・ボーカルとパーカッションへと移ったが、最終的に彼は脱退した。

バンドはその打楽器的な音像を維持するため、コルセフィーニの後任としてグレッグ・ウェルツを採用したが、1998年にはウェルツが脱退し、彼のポジションはクリス・フェーンが引き継いだ。またSlipknotはDJ(ターンテーブル/サンプラー)を加えたいと考えており、ライブで知り合ったシド・ウィルソンはその適任者として採用された。ウィルソンの独特なパフォーマンスはバンドに新たな色を加え、9人編成が完成する。バンドのデビュー・アルバム『Slipknot』(1999年)の録音途中には、Josh "Gnar" Brainardが脱退し、ジム・ルートがギタリストとして参加するなどの最終調整が行われた。

その後の主要なラインナップ変動と影響

  • 2000年代前半〜:デビュー作『Slipknot』(1999)、続く『Iowa』(2001)でバンドは世界的評価を確立。2004年にはよりメロディックな要素を取り入れた『Vol. 3: (The Subliminal Verses)』を発表し、音楽的な幅を広げた。
  • 2010年 — ポール・グレイの死:ベーシストのPaul Grayが2010年に急逝。バンドは大きな衝撃を受け、その後の活動は一時停滞した。2014年のアルバム『.5: The Gray Chapter』は彼への追悼と再出発を兼ねた作品となった。
  • 2013–2014年 — ジョーイ・ジョーディソンの離脱と後任:ドラマーのJoey Jordisonは2013年にバンドを離れ、2014年にはジェイ・ワインバーグが参加。さらにベースにはアレッサンドロ・ベンチャーラが加入し、クラハンが唯一の残る結成当初からのメンバーとなった。
  • 2019年 — クリス・フェーンの解雇と新メンバー:パーカッショニストのクリス・フェーンが2019年にバンドを解雇され、その後に匿名で加入したメンバー(通称「Tortilla Man」)が公の場に現れる。後にその人物はMichael Pfaffであるとされ、パーカッション/バックボーカルを務めている。

メンバー構成(主要メンバーと役割)

  • コーリー・テイラー(リード・ヴォーカル) ― 1997年加入。バンドの顔とも言える存在で、多彩な歌唱とステージでの表現力が特徴。
  • ジム・ルート(ギター) ― 1999年加入。テクニカルかつリフ重視のギターワークで楽曲のコアを担う。
  • ミック・トムソン(ギター) ― 初期からのメンバーで、硬質なリフと重低音のサウンドに貢献。
  • クレイグ・ジョーンズ(サンプラー/キーボード) ― サウンド・エフェクトやトリガーで不穏な雰囲気を作り出す。
  • ショーン・クラハン(パーカッション/バックボーカル) ― 通称“Clown”。視覚面の演出とリズム面での重要人物。
  • シド・ウィルソン(ターンテーブル/サンプラー) ― 衝撃的なステージングとスクラッチでエクストラの色付けを行う。
  • アレッサンドロ・ベンチャーラ(ベース) ― 2014年以降の加入。グルーヴと低音を補完。
  • ジェイ・ワインバーグ(ドラム) ― 2014年以降の加入で、強靭なビートを提供。
  • Michael Pfaff(通称:Tortilla Man)(パーカッション/バックボーカル) ― 2019年にクリス・フェーンの代わりとして登場。匿名期間を経て正体が明らかになった。

ディスコグラフィのハイライト

  • Slipknot(1999) — デビュー作。バンドの方向性と過激なイメージを世界に示した。
  • Iowa(2001) — より重く暗い作風で高い評価を得た重要作。
  • Vol. 3: (The Subliminal Verses)(2004) — メロディと実験性を取り入れた作品。
  • All Hope Is Gone(2008) — 多様な音楽性を示したアルバム。
  • .5: The Gray Chapter(2014) — 追悼と再構築のアルバム。
  • We Are Not Your Kind(2019)/The End, So Far(2022) — 近年の作品で新メンバー体制による音楽的探求が続く。

まとめと現在地

結成から現在に至るまで、スリップノットはメンバー交代を繰り返しながらも、一貫して激烈なパフォーマンスと独自の美学を維持してきた。9人編成という特殊な編成、マスクと番号による匿名性、そしてメタルとエクスペリメンタルな要素を併せ持つ音楽性がバンドのアイデンティティである。主要メンバーの死去や脱退といった困難を経験しながらも、新メンバーを迎えて活動を続け、常に次のフェーズへと進化を続けている。