Murray Newton Rothbard, 1926年3月2日 - 1995年1月7日)は、アメリカの経済学者、作家である。オーストリア学派の経済学を米国で普及させることに貢献した。
ロスバードは、現代のリバタリアニズム(より少ない政府とより多くの個人の自由を求める政治的信条)の創始に貢献した。彼は、「アナルコ・キャピタリズム」と呼ばれる自由市場無政府主義の一形態を確立した。ロスバードは、社会は自ら組織化されるべきであり、中央集権的な計画を好まないと考えていた。
ロスバードは20冊以上の本を書き、アメリカのリバータリアン運動の重要な中心人物であった。
生い立ちと学歴
ロスバードはニューヨークで生まれ育ち、若い頃から経済学や政治思想に強い関心を示しました。大学で経済学を学び、その後研究と教育を通じてオーストリア学派の理論に深く関わるようになりました。彼は生涯にわたり幅広い分野で執筆・研究を行い、学界と運動の両面で影響力を持ちました。
思想と主張
ロスバードの思想は、古典的リバタリアニズムとオーストリア学派経済学を融合させたものでした。市場メカニズムと私有財産を強く擁護し、国家の経済的・政治的介入を厳しく批判しました。特に次の点が特徴的です:
- アナルコ・キャピタリズム:国家を廃して私的契約と市場原理に基づく社会秩序を主張。
- 自然法と所有権:個人の自然的権利と所有権を倫理的基盤とし、国家の正当性をこれに照らして疑問視。
- 経済史の再解釈:中央銀行や政府介入が景気後退や戦争を助長するとして、歴史的事件(例:大恐慌)を独自の視点で分析。
主な著作
ロスバードは学術書から一般向け入門書まで幅広く著述しました。代表作には以下があります:
- "Man, Economy, and State"(『人間、経済、そして国家』) — オーストリア学派の理論を体系化した学術的著作。
- "Power and Market" — 国家と市場の関係を分析した補助的著作。
- "America's Great Depression"(『アメリカの大恐慌』) — 政府と中央銀行の政策を原因とする大恐慌論。
- "For a New Liberty"(『新たな自由のために』) — リバタリアニズムの入門書で広く読まれている。
- "The Ethics of Liberty"(『自由の倫理』) — リバタリアン倫理学を論じた重要な論考。
政治活動と影響
ロスバードは思想的な活動家でもあり、複数の組織設立や雑誌運営に関わりました。大学や公開講座での講演、論文・書籍の刊行を通じて多くの若い研究者や活動家を育て、現代リバタリアン運動に大きな影響を与えました。彼の弟子や同僚には、政治家や運動家、学者として活躍する人物が多く含まれます。
評価と論争
ロスバードは理論的貢献と運動への影響から高く評価される一方で、政治的立場や発言が論争を招くこともありました。特に後年は一部の保守派・懐古的な思想と接近し、その影響で支持者と批判者の間で激しい意見対立が生じました。彼の経済理論や歴史解釈は学術的にも精査され続けていますが、リバタリアン思想の発展に果たした役割は大きいとされます。
遺産
1995年の死去後も、ロスバードの著作と論考はリバタリアンやオーストリア学派の研究者に読まれ続けています。彼の主張した「個人の自由」「市場の自律性」「国家権力への懐疑」は、現代の自由主義的思潮や政策議論において重要な参照点となっています。また、彼の著作は翻訳され、多くの言語圏で影響を与え続けています。
参考として、ロスバードの思想を理解する際は原著を直接読むこと、また肯定的・批判的双方の文献を参照することが推奨されます。

