フィリップ・プルマン — 英国の小説家、ヒズ・ダーク・マテリアルズ三部作の著者
フィリップ・プルマン卿(Sir Philip Pullman CBE FRSL、1946年10月19日英国ノリッジ生まれ)は、英国の作家である。ファンタジー小説3部作「ヒズ・ダーク・マテリアルズ」のベストセラー作家であり、その他にも多数の著作がある。2008年、タイムズ紙はプルマンを「1945年以降の最も偉大な英国人作家50人」に選出した。20世紀を代表する名著の一つ。
経歴と作家活動
フィリップ・プルマンは1946年にノリッジで生まれ、以後英国を拠点に執筆活動を行っている。児童書から成人向けの作品まで幅広く手がけ、豊かな想像力と哲学的なテーマを織り込んだ物語で国際的な評価を得ている。作品は多くの言語に翻訳され、世界中で読まれている。
代表作
- ヒズ・ダーク・マテリアルズ三部作(His Dark Materials)
- 『Northern Lights』(英国題) / 『The Golden Compass』(米国題)
- 『The Subtle Knife』
- 『The Amber Spyglass』
- The Book of Dust(『La Belle Sauvage』ほか)— 「ヒズ・ダーク・マテリアルズ」の世界を拡張する三部作として近年発表されたシリーズ。
- サリー・ロックハート四部作(Sally Lockhart series)— 歴史的背景を持つ若者向けミステリー。その他に『The Scarecrow and His Servant』『I Was a Rat!』など、児童文学作品も多数ある。
- 成人向けの再解釈作品 — 例として『The Good Man Jesus and the Scoundrel Christ』など、宗教的・倫理的問題を大胆に問い直す作品も執筆している。
主題と作風
プルマンの作品は、想像力豊かな世界設定とともに、次のようなテーマを繰り返し扱うことで知られる。
- 宗教や権威への批評、個人の良心と自由意志
- 成長と自己発見(coming-of-age)
- 科学・理性と神話的要素の対比
- 人間関係や倫理的ジレンマ
作中に登場する「デーモン(daemon)」という概念など、独自の世界観と象徴が強い印象を残すスタイルが特徴的である。
受賞と評価
プルマンの作品はいくつもの文学賞を受賞し、批評家・読者双方から高く評価されている。また、前掲のとおりタイムズ紙による20世紀後半以降の英国作家ランキングに選ばれるなど、現代英国文学を代表する作家の一人と見なされている。
映像化・舞台化
「ヒズ・ダーク・マテリアルズ」は舞台・映画・テレビドラマなどに幾度も翻案されている。2003年にはナショナル・シアターで舞台化され、2007年には映画『The Golden Compass(邦題:黄金の羅針盤)』としてハリウッドで実写化された。さらに2019年以降、BBCと提携したテレビシリーズも制作され、再び大きな注目を集めた。
論争と議論
宗教や教会制度に対する批判的な視点を作品に取り入れているため、発表当初から賛否両論を呼ぶことがあった。プルマン自身は作中の問いかけを通して読者に思考を促すことを目的としており、その姿勢は支持者からは高く評価され、批判者からは論争の的になった。
影響と現在
フィリップ・プルマンは児童文学・YA文学の境界を押し広げ、宗教的・哲学的な主題を若年読者にも問いかける作風で後続の作家に影響を与えている。近年も新作やシリーズの続編を発表し、翻訳やメディア展開を通じて国際的な読者層を広げ続けている。
宗教に関する視点
プルマンは英国ヒューマニスト協会の支持者であり、National Secular Societyの名誉会員である。ニューヨーカーのジャーナリスト、ローラ・ミラーは、プルマンをイギリスで最も率直な無神論者の一人と評しているが、プルマン自身は不可知論者であると述べている。
2010年9月15日、プルマンは54人の著名人とともに、ローマ法王ベネディクト16世の英国訪問に反対する公開書簡に署名し、The Guardian紙に掲載された。書簡には、「ローマ法王が首長を務める国家は、多くの主要な人権条約への署名にも抵抗しており、多くの国家と独自の条約(「コンコルダート」)を結び、それらの国家の市民の人権に悪影響を及ぼしている」と書かれています。他の署名者には、スティーブン・フライ、リチャード・ドーキンス教授、テリー・プラチェット、ジョナサン・ミラー、ケン・フォレットが含まれています。