カルデア派キリスト教(シリア語:ܟܲܠܕܵܝܹ)は、カルデア派カトリック教会の信者である。カルデア人はイラクで最大のキリスト教徒コミュニティの一つで、国内在住者は時期や調査によって幅があるがおおむね40万〜60万人程度と推定アメリカ、トルコ、シリア、イラン、レバノンにもコミュニティがあり、加えて欧米やオーストラリア、カナダ、北欧諸国などにも移住者が多い。
歴史の概略
カルデア派カトリック教会は、東方教会の伝統をひく集団が16世紀以降ローマ教皇庁と和解・合同する過程で形成された。教会は古代の東シリア伝統(東方シリア典礼)を継承しつつ、カトリックの教義と典礼的連帯を保っている。指導体制としては「カルデア人のバビロン大司教(Patriarch of Babylon of the Chaldeans)」を頂点とする主教制度があり、中心は歴史的にバグダード(イラク)に置かれてきた。
信仰と典礼
典礼は東シリア典礼(東方シリア語系)の伝統に従い、古典シリア語(教会シリア語)を用いることが儀式言語として重要視される。ただし、地域や世代によりアラビア語や現地語が礼拝や日常会話で使用されることも多い。聖体礼儀(ミサ)、洗礼、婚礼、葬儀などの秘跡(サクラメント)はカトリックの体系に則り、教会共同体の中心的役割を果たしている。
言語と文化
カルデア人の多くは伝統的にネオ・アラム語(カルデア語とも表現される方言群)を話してきたが、都市化や移住、戦後の社会変動によりアラビア語やその他の言語に移行する人も増えている。文化面では教会暦に基づく祭日、典礼歌や典礼舞、家庭や地域を中心とした慣習が維持され、教育機関や教会を通じた文化継承が続いている。
現状と分布
20世紀末から21世紀初頭にかけての紛争、特に2003年以降の混乱や2014年のイスラム過激派による攻撃・占領などにより、多くのカルデア人が国内での安全を求めて移住を余儀なくされた。主な移住先としてはアメリカ(特にデトロイト周辺)やカナダ、オーストラリア、ヨーロッパ諸国が挙げられる。とはいえ、イラク国内にも伝統的な信徒共同体が残り、復興や文化保存に取り組む宗教・社会組織が活動している。
課題と取り組み
- 信徒の国外流出による共同体の縮小と伝統文化の継承問題。
- 戦禍で破壊された教会・文化財の復旧・修復。
- 教育・雇用機会の確保、若年層の宗教・言語継承支援。
- 宗教的少数派としての権利保護と地域社会との共生促進。
これらの課題に対して、教会や国際NGO、現地コミュニティは復興支援、教育プログラム、文化保存プロジェクトなどで連携して取り組んでいる。カルデア人は歴史的に中東社会の重要な一員であり、その宗教的・文化的多様性は地域の社会的豊かさを支えている。