コラール(ルター派賛美歌)とは:定義・歴史・バッハと代表例
ルター派賛美歌「コラール」の定義・歴史・バッハの活用と代表曲を分かりやすく解説。起源から楽曲例・影響まで網羅。
コラール(発音:Ko-RAHL)とは、ルター派の教会で信徒全員が歌うために用いられる賛美歌のことです。起源は中世の聖歌やドイツの宗教歌にさかのぼりますが、特にルネサンス後期からバロック初期にかけて形が整い、ルター派の礼拝に不可欠な音楽様式として発展しました。その多くは当時に書かれたメロディーと歌詞を持ち、今日でも教会音楽の重要な遺産となっています。
ルターとコラールの役割
マルティン・ルターは、信徒(教会で礼拝する人々)が参加して歌う音楽は、難しすぎてはいけないと考え、ラテン語ではなくドイツ語で歌うべきだと主張しました。ルター自身が多くのコラールの歌詞を書き、一部の旋律は彼自身が作曲したものもあります。代表的な例としてEin' feste Burg(A Mighty Fortress)があり、また既存のカトリックの伝統的なグレゴリオ聖歌の旋律を取り入れて新しいドイツ語詞をつけたものもあります(例:Christ lag in Todesbanden / Christ lay in Death's Dark Bonds)。
構造と特色
コラールの歌詞は通例で韻文(韻を踏む詩)で書かれ、旋律は多くが通作(ストロフィック/verse-by-verse)形式です。旋律の形式としては伝統的にAABの「バー・フォーム(Bar form)」が多く見られます。これは「A」(第一部分)をもう一度繰り返し(A A)、その後に「B」(結句:Abgesang)に進むという構成で、ドイツ語ではこの形を「小節形」と呼びます。
また、コラールは歌いやすさを重視するために比較的均整の取れた拍子や節回しをもち、教理や祈りの内容を分かりやすく伝える役割も果たしました。旋律の起源は民衆歌、古い聖歌、あるいは作曲家の創作など様々で、後に体系的に整理・分類されました(例:メロディー索引を示す学術的研究など)。
バッハとコラール
ヨハン・セバスティアン・バッハは、コラールを極めて重要視し、礼拝音楽の中核素材として幅広く用いました。バッハはコラール旋律をそのまま4声の和声付け(四部和声の合唱形)にし、合唱や独唱の終結部として配置することが多く見られます。さらに、コラールを素材にした自由な編曲や対位法的な扱いを施した作品(オルガン独奏のコラール前奏曲、合唱付きのカンタータや受難曲の中でのコラール使用など)も多岐にわたります。
バッハは数百曲に及ぶコラールの和声付けを残したとされ、これらは後世の教会賛美歌の原型にもなりました。代表的な例としては、教会カンタータの終曲の簡潔なコラールや、オルガンのための小曲集であるOrgelbüchlein(オルガン小曲集)に含まれるコラール前奏曲、またコラール旋律を素材にした大規模作品(受難曲の中の合唱や合唱曲への応用)などがあります。コラールは礼拝の中で信徒が共に歌うための「合図」や「結論」としての機能を果たしました。
コラール前奏曲と器楽化
コラール旋律は歌だけでなく器楽作品にも取り入れられ、特にオルガンのためのコラール前奏曲(コラール前奏曲=コラール・プレリュード)は盛んに作曲されました。これらは礼拝でコラールが歌われる前にオルガンで演奏されることが多く、旋律を装飾的に扱ったり、対位法的に展開したりすることで信徒に旋律を示す役割を持ちます。
代表的なコラール例とその影響
- Ein' feste Burg(堅き砦):ルター作と伝えられる代表曲で、ルター派のシンボル的存在。
- Christ lag in Todesbanden:古いメロディーを基にした典礼的復活祭のコラール。
- Wachet auf, ruft uns die Stimme(目覚めよ、呼ぶ声あり):バッハがカンタータや前奏曲で多用した曲。
- Herzliebster Jesu, was hast du verbrochen(いと愛しきイエスよ):受難の場面で歌われる典型的なコラール。
これらの旋律は、教会音楽のみならず器楽作品、合唱作品、室内楽など多くのジャンルで引用され、後世の作曲家にも大きな影響を与えました。
近代以降の流れ
コラールの伝統はバッハ以降も受け継がれ、後に作曲した多くの作曲家、例えばフェリックス・メンデルスゾーン、アントン・ブルックナー、マックス・レーガーなどに使用されました。彼らはコラール旋律を交響曲やオルガン曲、合唱曲などに取り入れ、伝統的な宗教文脈を越えて音楽的素材として展開しました。
まとめ(機能と今日の位置づけ)
コラールは、
- 礼拝における信徒共同の歌唱(参加型の宗教音楽)であること、
- 教理や祈りを分かりやすく伝える文学的・音楽的手段であること、
- 旋律が和声付けや器楽的展開の素材として豊富に利用され、バッハをはじめとする作曲家たちに重要な創作源を与えたこと
が特徴です。今日でも多くのドイツプロテスタント教会で伝統的なコラールが歌い継がれており、音楽史・教会史の両面から重要な文化遺産とされています。
質問と回答
Q:コラールとは何ですか?
A:コラールとは、ルター派の教会で全員で歌う賛美歌のことです。ルネッサンス後期からバロック初期にかけて発展したものです。
Q:マルティン・ルターはなぜ、会衆が歌える音楽を持つことが重要だと考えたのですか?
A: マルティン・ルターは、会衆が歌うのに、難しすぎない音楽が必要だと考え、また、何を歌っているのか理解できるようにと考え、ラテン語ではなく、ドイツ語で言葉を書きました。
Q:マルティン・ルターが自分で書いたメロディーはあるのですか?
A:はい、マルティン・ルターは、「Ein' feste Burg(力強い砦)」のように、いくつかのメロディーを自分で書きました。また、カトリックの礼拝に使われていた伝統的なグレゴリオ聖歌のメロディーを使い、Christ lag in Todesbanden(キリストは死の暗い絆に横たわった)のように新しいドイツ語を付け加えました。
Q:コラールの旋律は通常どのように聞こえるのですか?
A: ほとんどのコラール旋法はAAB型(第1部の旋律を2回歌い、その後第2部を歌う)で、ドイツ語では「Bar型」と呼ばれています。
Q: ヨハン・セバスティアン・バッハはコラールをどのように使っていたのですか?
A: ヨハン・セバスティアン・バッハは多くのコラール曲を使い、通常は彼自身の和声を加えています。彼はこれらをカンタータに用い、多くの4部構成のハーモニーを作曲しました。これらは今日でもドイツのプロテスタント教会や英語圏の国々で賛美歌として歌われています。
Q: カンタータ以外に、作曲家たちはコラールにどのような用途を見出していたのでしょうか?
A: フェリックス・メンデルスゾーン、アントン・ブルックナー、マックス・レーガーなどの作曲家は、コラールを作曲に用い、「コラール前奏曲」と呼ばれるオルガンのための曲を作りました。
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