格納容器とは?原子炉を守る仕組み・種類・事故の教訓
格納容器とは何か、原子炉を守る仕組み・種類・過去事故からの教訓を図解でわかりやすく解説
格納容器とは、原子炉が入った建物のことです。原子炉に何かあっても放射能が外に出ないように、原子炉の周りに建てられています。格納容器は、放射線が環境中に放出されるのを防ぐ最後のバリアとなる。原子炉の格納容器は、大きさ、形状、使用する材料、抑制システムによって区別されます。使用される格納容器の種類は、原子炉の種類、原子炉の世代、および特定のプラントの必要性によって決定される。
チェルノブイリ事故は、ソ連の原子炉に格納容器がなかったこともあり、非常にひどい事故となった。
格納容器の主な役割
格納容器は原子炉のトリプルバリア(燃料被覆、一次冷却系、格納容器)のうち最後のバリアとして、重大事故や配管破断(LOCA: 損傷時冷却材喪失)などで放射性物質が一次系から漏れた場合に、それを封じ込める役割を果たします。具体的には以下の機能があります。
- 気密性の確保:格納容器は高い気密性を持ち、放射性ガスや粒子が外部に拡散するのを防ぎます。
- 圧力・温度の制御:事故時に一次系から高圧・高温の蒸気が流入しても、圧力上昇を抑えるための抑制設備(サプレッション、スプレーなど)が備えられます。
- 放射性物質の除去・希釈:フィルター付きベントや湿式抑制プールなどで、外部放出時に放射能量を低減します。
- 水素管理:核分裂生成物や化学反応で発生する水素を爆発しないレベルに制御するため、触媒式再結合器(PAR)や点火装置などを備えます。
主な種類と特徴
格納容器の形状・構造は原子炉形式(PWR、BWR など)や時代によって異なります。代表的な種類:
- PWR(加圧水型原子炉)の格納容器:大型の円筒形+ドーム型(コンクリート製、鋼板ライナー付き)、または鋼製球形のものがある。高い設計圧力に耐える構造で、スプレーや冷却系による圧力低減・放射能除去機能を備えます。アイスコンデンサー方式(米国の一部)では、氷で急加圧を吸収する設計が採られていることがある。
- BWR(沸騰水型原子炉)の格納容器(Mark I / II / III):Mark I はドーム状の「乾燥側容器(ドライウェル)」と水を溜める「湿側抑制プール(スプレッションプール)」を組み合わせた小ぶりの構造。Mark II / III は形状や容量を変え、圧力抑制特性を改善した設計です。
- 二重格納(ダブルコンテインメント):外側に厚いコンクリートシェル、内側に気密性の高い鋼製容器を持つ二重構造で、外側は飛行機衝突など外部事象から保護します。
過去の事故からの教訓
格納容器に関する重要な教訓は複数の事故から得られています。
- チェルノブイリ(1986):前述のとおり格納容器に相当する封止構造が不十分で、放射性物質が大量に放出され社会・環境に甚大な被害を与えました。格納の重要性が改めて示されました。
- スリーマイル島(TMI、1979):PWR の部分溶融事故でも、格納容器が大きな放射性物質の放出を抑えたため、住民被曝は限定的でした。格納容器の封じ込め効果が実証された事例です。
- 福島第一原発(2011):津波で電源喪失が生じ、炉心損傷と水素発生により建屋外側で爆発が起きたユニットがありました。格納容器自体は部分的に機能して放射性物質の多くを拘束した面もありますが、格納内の圧力上昇や放射性物質の放出、フィルタ付きベントや冷却確保の必要性など、追加の対策の重要性が浮き彫りになりました。これを受け、フィルタ付きベントの整備や格納容器周辺の防潮対策、耐震・耐津波設計の強化が進められました。
設計上の安全対策と運用
現代の格納容器設計には、常時の点検や緊急時に働く多層的な安全対策が組み込まれます。
- フィルター付きベント:格納容器内圧が危険域に達した場合、放射性粒子を濾過して大気への放出量を低減しつつ圧力を下げる仕組み。
- 水素対策:触媒式再結合器(PAR)や燃焼装置、点火器などで水素爆発を防止。
- 圧力抑制装置・スプレー系:格納内の温度・圧力を下げるための冷却手段。
- 漏えい検査と老朽化対策:定期的な気密性試験(リークテスト)、材料の腐食管理、補修計画が運用されています。
- 多重性・多様性:複数の系統や独立した手段を用いて、単一故障で機能喪失しない設計。
点検・維持管理と今後の改良点
格納容器は長期間にわたり安全性を確保するため、定期点検と継続的な評価が必要です。主な取り組み:
- 定期的な気密性検査(リークレート測定)と超音波・目視による補修
- 耐震・耐津波対策の強化と周辺設備の防護(電源・冷却系の多重化)
- フィルタ付きベントや耐圧・耐腐食性材料の導入、PAR の追加などの技術的改良
- 事故管理(SAM:Severe Accident Management)手順の整備と訓練
まとめ
格納容器は「原子炉を外界から切り離して放射能を封じ込める最後の砦」です。設計・材料・付帯設備・運用のすべてが相互に作用して初めて機能します。過去の事故から得られた教訓を反映して、フィルタ付きベントや水素管理、耐災害設計などが進化しており、今後も点検・改善を続けることが重要です。

原子炉防御層
核防衛の層
この図は、原子炉の防御層の順番を示しています。第一の防御層は、不活性でセラミック質のウラン酸化物そのものです。第2層は燃料棒のジルコニウム合金で、気密性が高い。3層目は厚さ十数センチの鉄でできた原子炉圧力容器。第4層は、耐圧性、気密性の高い格納容器。5層目は原子炉の周囲の立ち入り禁止区域。
質問と回答
Q: コンテナビルとは何ですか。A: 格納容器とは原子炉が故障した際に放射能が漏れないように原子炉の周囲に建設される建物のことです。
Q:格納容器の目的は何ですか。
A: 格納容器の目的は、原子炉が故障した場合に放射性物質が環境中に放出されるのを防ぐことです。
Q: 原子炉の格納容器はどのように区別されますか?
A: 原子炉格納容器は、大きさ、形状、使用材料、抑制システムによって区別されます。
Q: 原子炉で使用される格納容器の種類は何で決まりますか。
A: 原子炉に使用される格納容器の種類は、原子炉のタイプ、原子炉の世代、および特定のプラントのニーズによって決まります。
Q: チェルノブイリ事故はなぜあんなにひどいのですか?
A: チェルノブイリ事故は、チェルノブイリ発電所で使用されたソ連製RBMK原子炉に格納容器がなかったことが一因です。
Q:格納容器があれば、チェルノブイリでの放射能放出は完全に防げたのでしょうか?
A:チェルノブイリ原発の爆発は非常に強力であったため、格納容器があれば放射能の放出を完全に防ぐことができたとは考えにくい。
Q: 原子力発電所における格納容器の役割は何ですか?
A: 原子力発電所における格納容器の役割は、原子炉が故障した場合に放射性物質の環境への放出を防ぐ最後のバリアとしての役割を果たすことです。
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