カバー・バージョン(カバー曲)とは|意味・歴史・代表例の完全ガイド
カバー・バージョンの意味・歴史・代表例を豊富な事例で徹底解説。名曲の変遷や名カバーが一目で分かる完全ガイド。
カバー・バージョン(または単に「カバー」)とは、他のアーティストがその曲の録音をリリースした後に、歌手やバンドが再録音した曲のことである。カバーは、原曲に忠実に演奏されることもあれば、編曲やアレンジを大きく変えてまったく別の曲に感じられることもある。演奏スタイル、テンポ、楽器編成、歌い方、言語などを変えることで、オリジナルとは異なる表現や情感を生み出せる点がカバーの魅力である。
歴史と発展
カバーの歴史はレコード産業とほぼ同義で、レコードが広く流通するようになった20世紀初頭から存在する。初期のポピュラー音楽では、同じ楽曲が複数の歌手やオーケストラによって録音され、ラジオやダンスホールで競って演奏された。ポピュラー音楽やジャズの"スタンダード"と呼ばれる曲群は、多くのアーティストに繰り返しカバーされることで曲自体の地位を確立していった。
近年ではジャンルの境界が曖昧になり、ロックがポップをカバーしたり、ポップがジャズやクラシック寄りにアレンジされたりするなど、ジャンル横断的なカバーが増えている。また、映画やテレビ、CMで使われることで、古い曲が新たに注目されるケースも多い。
カバーの種類と手法
- 直訳的カバー(忠実カバー):原曲のアレンジや雰囲気をほぼそのまま再現するもの。カラオケ的用途や原曲性を重視する場面で多い。
- アレンジを変えるカバー:テンポ、コード進行、リズム、楽器、ハーモニーなどを変えて新しい解釈を加えるもの。オリジナルと異なる感情や表現を引き出せる。
- ジャンル替えカバー:例えばロック曲をアコースティックやジャズ、クラシック風にアレンジするなど、ジャンルを跨いで再解釈するもの。
- 言語を変えるカバー:歌詞を別の言語に翻訳して歌うことで、別地域のリスナーに届ける方法。歌詞の翻訳者や意訳によって印象が変わる。
- サンプリング/引用との違い:既存の録音から一部分を直接用いるサンプリングは、原盤使用の許可が必要で、カバー(新たに演奏・録音すること)とは法的扱いが異なる。
代表的な例と「スタンダード」化
多くの曲はオリジナルよりもカバーバージョンの方が広く知られることがある。例として、ポール・リヴィア・アンド・ザ・レイダースが録音した「Louie, Louie」と「(I'm Not Your) Steppin' Stone」は、それぞれ他のバンド(ザ・キングスメンとザ・モンキーズ)がカバーしたことでより大きなヒットになった。
また、ある曲が多数のアーティストにカバーされ続けることでスタンダード(定番曲)になることがある。たとえば、バッドフィンガーのピーター・ハムとトム・エバンスが作曲した "Without You" は、最初にハリー・ニルソンがカバーし、その後、マライア・キャリーをはじめ多くの歌手がカバーして世界的な定番曲となった。また、ビートルズのポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンが作曲した "Yesterday" や "Something" も多くのアーティストにカバーされるスタンダード曲の代表例である。
そのほかの有名な例としては、ドリー・パートンの「I Will Always Love You」をホイットニー・ヒューストンがカバーして映画サウンドトラックの大ヒットになったケースや、デヴィッド・ボウイが作った曲をニルヴァーナがライブでカバーし新たな注目を集めたケースなど、カバーによって曲が別の文脈で大きく受容されることがある(ここでは元曲やカバー曲の具体的な外部リンクは追加していません)。
著作権と手続き(基礎)
カバーを商業的にリリースする場合、原曲の作詞作曲者(著作権者)に対する権利処理が必要になる。国や地域によって制度は異なるが、一般的なポイントは次の通りである。
- 録音(原盤)を直接利用しないで新たに演奏・録音するカバーは、作詞作曲の著作権に対する許諾(又は機械的使用料の支払い)が求められる。多くの国では「強制的許可(compulsory license)」制度があり、一定の手続きを経ればカバー録音のリリースが認められる場合がある。
- 原盤そのものを使う(既存の録音をサンプリング)場合は、原盤権者(レーベル等)と楽曲の著作権者双方の許諾が必要になることが多い。
- ライブで歌う分には、会場や放送局が著作権管理団体に使用料を支払っているケースが多く、個々の演者が別途許諾を得る必要がない場合もあるが、公開配信や録音物の配信では別途処理が必要になる。
文化的・商業的な役割
- 新人アーティストが既存の名曲をカバーすることで注目を集め、キャリアのきっかけになることがある。
- 映画・CM・ドラマでのカバー使用は、作品の世界観に合わせた表現としてよく使われる。既知のメロディを別のアレンジで流すことで強い印象を与えられる。
- トリビュートアルバムやカバー集は、オリジナル作者への敬意やジャンルの再評価を促す役割を果たす。
カバーを作るときのポイント(実践的なヒント)
- 曲の核を理解する:メロディや歌詞の魅力をどう活かすかが重要。単に原曲を真似るのではなく、自分なりの解釈を考える。
- アレンジで差をつける:楽器編成やリズム、テンポ、ハーモニーを工夫してオリジナルとは違う表情を出す。
- 歌詞の扱い:言語を変える場合は、直訳ではなく意味やニュアンスを活かす意訳が有効。元の歌詞の感情を損なわないよう配慮する。
- 法的手続きの確認:商用リリースや配信を行う前に、著作権処理(機械的許諾等)を確認する。管理団体やレーベル、出版者に相談すること。
カバーは、音楽を再解釈し新しい聴衆に届ける有力な手段です。オリジナル曲の魅力を尊重しつつ、自分だけの色を加えることで、時に原曲以上の広がりや影響力を持つことがあります。
有名なカバーバージョン
- "The Twist"(ハンク・バラードが作詞・作曲し、後にチャビー・チェッカーがカバーした曲)。
- 「I Heard It Through the Grapevine」(グラディス・ナイト・アンド・ザ・ピップス、マーヴィン・ゲイによる初録音)
- 「Tainted Love」(最初はグロリア・ジョーンズ、後にソフトセルが録音)
- "It's Gonna Take a Miracle"(初代ロイヤレッツ、後にデニース・ウィリアムスが録音)。
質問と回答
Q:カバーバージョンとは何ですか?
A:カバーバージョンとは、他のアーティストがレコーディングした曲を、歌手やバンドが再レコーディングしたものです。
Q: カバーバージョンはオリジナル盤とどう違うのですか?
A: カバーバージョンはオリジナル盤と似ていることもあれば、全く異なることもあります。
Q: オリジナル盤よりもカバー版の方が人気が出た曲はありますか?
A: はい、オリジナルよりカバーバージョンの方が人気が出た曲もあります。例えば、ポール・リヴィア&レイダースが録音した「Louie, Louie」と「(I'm Not Your) Steppin' Stone」は、それぞれ他のバンド(The KingsmenとThe Monkees)が自分たちのバージョンよりも大きなヒットとなりました。
Q:いろいろなアーティストに何度もカバーされてスタンダードになった曲の例にはどんなものがありますか?
ハリー・ニルソンが最初にカバーし、その後マライア・キャリーなど多くの歌手がカバーした「Without You」(バッドフィンガーのピーター・ハムとトム・エヴァンスが作曲)、ポール・マッカートニーの「Yesterday」、ビートルズのジョージ・ハリスンが作曲した「Something」など、多くのアーティストによってカバーされてスタンダードとなった曲があります。
Q:「Without You」という曲は誰が作ったのですか?
A: バッドフィンガーのピーター・ハムとトム・エヴァンスが作詞作曲しました。
Q:「Without You」の原盤は誰ですか?
A: ハリー・ニルソンがレコーディングしました。
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