システイン(Cys)とは:化学構造・生体機能・食品添加物E920の解説
システイン(略称:CysまたはC)は、α-アミノ酸の一種で、生体内で重要な役割を果たします。化学式は HS–CH2–CH(NH2)–COOH(分子式 C3H7NO2S、分子量 約121.16 g·mol−1)と表され、鏡像異性体のうち生体内で使われるのは主にL-システインです。
化学的性質
- 側鎖は硫黄を含むチオール(–SH)基で、これが化学反応性の中心となります。システインのチオール基は比較的酸性で、pKaはおおよそ8.0〜8.5の範囲にあります(pHによってはチオレート–S−として存在)。
- α-カルボキシル基とα-アミノ基の解離定数はそれぞれおおよそpKa ≈ 1.9(COOH)と ≈ 10.8(NH3+)です。これらの値により、システインは生理pHで主に両性イオン(ゾwitterion)として存在します。
- 二つのシステイン残基が酸化されるとジスルフィド結合(–S–S–)を形成し、この二量体はシスチンと呼ばれます。ジスルフィド結合は多くのタンパク質の立体構造や安定性に寄与します。
生体内での役割
- システインはしばしば酵素の活性部位で重要な役割を果たします。活性硫黄が求核剤として働き、様々な化学反応(例えば脱炭酸、転移、加水分解など)に関与します。多くの酵素やプロテアーゼ(システインプロテアーゼなど)は、触媒残基としてシステインを用います。
- 細胞内の主要な抗酸化系であるグルタチオン(GSH)はシステインを前駆体として合成され、酸化ストレスから細胞を守ります。N-アセチルシステイン(NAC)はグルタチオン産生を補助する医薬品・サプリメントとして広く使われます。
- システイン残基は金属イオンの結合や、S-ニトロソ化、S-アシル化(パルミトイル化)などの翻訳後修飾を受け、シグナル伝達や膜結合などに関与します。
- ヒトは通常システインを体内で合成できるため「非必須」あるいは「準必須(条件付き必須)」と呼ばれます。システインはメチオニンからのトランスサルファレーション経路(ホモシステイン→シスタチオニン→システイン)によって合成され、この経路にはビタミンB6が必要です。
遺伝情報とタンパク質構造
コドンUGUおよびUGCがシステインをコードします。タンパク質中のシステイン残基は、酸化によりジスルフィド結合を作ってタンパク質の立体構造を安定化させるほか、活性部位や金属結合部位として機能することが多く、タンパク質の機能にとって不可欠です。
食品添加物として(E920)
システインは食品添加物としても使用され、E番号では E920 として表示されます。主な用途は製パンにおけるミキシング改善剤・還元剤で、グルテン中のジスルフィド結合を部分的に還元して生地を柔らかくし、こねやすくする目的で使われます。その他、発酵食品や加工食品で加工性改善を目的に使用されることがあります。
製造法としては、かつては毛髪や動物毛などのタンパク質を加水分解して得られることもありましたが、現在は微生物発酵や化学合成により生産されることが多く、由来が表示されることがあります。規制や許容量は国や用途によって異なるため、食品表示や法規に従います。
摂取源と医療利用
- 食物中では肉類、卵、乳製品、魚介類、豆類、ナッツ類などに比較的多く含まれます。
- 臨床では、N-アセチルシステイン(NAC)が去痰薬やアセトアミノフェン(パラセタモール)中毒の解毒剤として使用されます。NACはシステイン供与体としてグルタチオン合成を促します。
安全性と注意点
- 通常の食品由来摂取や適切な補給では安全とされていますが、強い硫黄臭(卵の腐ったような匂い)を伴うことがあり、使用感に影響することがあります。
- 大量摂取や医薬品としての使用では副作用(胃腸症状、アレルギー反応等)が現れることがあり、特に医療目的での投与は医師の管理が必要です。
- 食品添加物としての由来(動物性原料か微生物発酵か)を気にする消費者もいるため、製品ラベルの確認が有用です。
まとめると、システインはそのチオール側鎖による化学的・生物学的特徴から、タンパク質構造の安定化、酵素活性、酸化還元調節、さらに食品加工や医療での重要な応用を持つ多機能なアミノ酸です。
質問と回答
Q: システインとは何ですか?
A: システインは化学式HO2CCH(NH2)CH2SHで表されるα-アミノ酸です。
Q:システインは必須アミノ酸ですか?
A:システインは準必須アミノ酸で、人間が作ることができます。
Q:システインをコードするコドンは何ですか?
A:システインをコードするコドンはUGUとUGCです。
Q:システインのチオール側鎖はどのような役割を果たしていますか?
A:システインのチオール側鎖は、しばしば求核剤として酵素反応を行います。
Q:システインのチオールが酸化するとどうなりますか?
A:システインのチオールは酸化してジスルフィド誘導体のシスチンを生成します。
Q:食品添加物として使用される場合のシステインのE番号は?
A: 食品添加物として使用される場合、システインのE番号はE920です。
Q:システインはもともと食品に含まれているのですか?
A: システインは肉、鶏肉、卵、乳製品など多くの食品に含まれています。