ヴェッティン家は、ドイツの伯爵、公爵、選帝侯(クアフュルステン)、王の王朝で、現在のドイツのザクセン州とチューリンゲン州を800年以上にわたって統治しました。ヴェッティン家のメンバーは、ポーランドの王でもあり、また、イギリス、ポルトガル、ブルガリア、ポーランド、ザクセン、ベルギーの支配者を形成しました。現在では、イギリスとベルギーのラインのみがそれぞれの国を支配していますが、ブルガリアの最後のツァーリであるシメオン2世は、2001年から2005年までブルガリアの首相を務めました。シメオン・サックス=コーブルク=ゴータは、選挙で選ばれた指導者として国に戻った唯一の元王である。
起源と分裂
ヴェッティン家は、ザーレ川流域のヴェッティン城(現在のザクセン=アンハルト州付近)を起源とする旧い貴族家系です。中世以来、マーグラーフ(辺境伯)や領主としてメッセン(マイセン)やチューリンゲン周辺の領地を拡大し、やがて強力な地方勢力となりました。15世紀末の1485年に兄弟のエルンスト(Ernst)とアルブレヒト(Albrecht)が領地を分割する「ライプツィヒの和約(Treaty of Leipzig)」を結んだことで、家系は大きく二つの系統に分かれます。
- エルンスト系(エルンスト派):いくつもの小領(ザクセン=ヴァイマル、ザクセン=コーブルク、ザクセン=ゴータなど)に分裂し、後にサックス=コーブルク系として欧州各国の王侯を輩出しました。
- アルブレヒト系(アルブレヒト派):選帝侯位を保持し、のちに王国となるザクセン王家として中枢を占めました。
欧州各国への影響と王位継承
ヴェッティン家出身者は婚姻や政略により欧州各国の王族として重要な地位を占めました。代表的な例を挙げます。
- ポーランド(ポーランド王):アルブレヒト系出身のザクセン選帝侯がポーランド王にも選ばれた例として、ヴェッティン家出身のアウグスト2世(「強王」)やアウグスト3世があり、18世紀のポーランド政治に大きな影響を与えました。アウグスト2世はカトリックに改宗して王位を獲得したことでも知られます。
- イギリス(サックス=コーブルク系):エルンスト系の分枝であるサックス=コーブルク=ゴータ家は、ヴィクトリア女王の配偶者アルバート公や、ジョージ5世以前の英国王家として血統的つながりを持ちます。1917年、第一次世界大戦の反ドイツ感情を受けてジョージ5世が王室名を「ウィンザー家(House of Windsor)」に改めましたが、系譜的にはサックス=コーブルク系の流れを引いています。
- ベルギー:レオポルド1世(サックス=コーブルク=ザールフェルト家出身)が1831年にベルギー初代国王に選出され、以降ベルギー王家はサックス=コーブルク系に由来します。
- ポルトガル:サックス=コーブルク=ゴータ出身のフェルディナンド2世がマリア2世の王配となり、ポルトガル王室の一時的な関係を形成しました(王配・摂政としての役割を果たした)。
- ブルガリア:19世紀末、サックス=コーブルク=ゴータ家のフェルディナントがブルガリア公(後のツァーリ)となり、ブルガリア王朝を開きました。最後のツァーリ、シメオン2世は第二次大戦後に王位を追われたが、1990年代以降に帰国し、2001–2005年にはブルガリアの首相に選ばれました。シメオンは、選挙で選ばれた指導者として国に戻った数少ない元王の一人です。
ザクセンでの支配と文化的貢献
ヴェッティン家は長年にわたりザクセン地方の政治・文化の中心を担いました。アルブレヒト系は選帝侯位を獲得してザクセン選帝侯として神聖ローマ帝国内で重要な役割を果たし、19世紀初頭にプロイセンとナポレオン体制下で王国となるとザクセン王家として続きました(第一次世界大戦後の1918年に退位)。
ザクセン(特にドレスデン)の宮廷は美術・音楽・建築の庇護者であり、ヨーロッパの文化拠点の一つとなりました。マイセン磁器やバロック建築、宮廷音楽などの発展にも寄与しました。
近代以降と現在の状況
- 第一次世界大戦末の君主制崩壊(1918年)により、ドイツ国内の多くの君侯の統治は終わりましたが、ヴェッティン家の分枝は欧州各国に根を下ろしていたため、王家としての存続は国により異なりました。
- ベルギー王室は現在もサックス=コーブルク系を起源とし、現王家が統治を続けています。
- 英国王室は名義上ウィンザー家ですが、系譜上はサックス=コーブルク=ゴータの流れを受け継いでいます。
- ブルガリアやポルトガルなどでは王制が廃止されましたが、ヴェッティン家の子孫は今日でもヨーロッパ各地に散らばり、王家としての歴史的影響は残っています。
主な人物(抜粋)
- アウグスト2世(アウグスト強王)— ザクセン選帝侯、ポーランド王
- アウグスト3世 — ポーランド王、ザクセン選帝侯
- レオポルド1世 — ベルギー初代国王(サックス=コーブルク系)
- アルバート公 — ヴィクトリア女王の夫、英欧の血縁関係を強めた
- フェルディナンド2世 — ポルトガル王配(サックス=コーブルク出身)
- フェルディナント1世 — ブルガリア公・後のツァーリ(サックス=コーブルク系)
- シメオン2世(シメオン・サックス=コーブルク=ゴータ)— ブルガリアの最後のツァーリ、のちに首相
- フリードリヒ・アウグスト3世 — ザクセンの最後の王(退位 1918年)
まとめると、ヴェッティン家は中世から近代にかけてドイツ東部を基盤に繁栄し、結婚と政治を通じてヨーロッパ各国の君主位に影響を与えた重要な王朝です。その血統は今日のヨーロッパ王室にも痕跡を残しています。