無煙炭(アンスラサイト)とは|特徴・成分・主要産地と生産量
無煙炭(アンスラサイト)の特徴・成分・主要産地と最新生産量を分かりやすく解説。熱量・硫黄分・国別生産状況を一目で把握。
無煙炭と呼ばれる硬質炭は、色が濃く光沢のある石炭の一種で、炭素含有量が高く、発熱量が大きいのが特徴です。揮発分や水分が少なく、燃焼時に発生する煙やすすが少ないため「無煙炭」と呼ばれます。硫黄や他の不純物も比較的少ないため、単位熱量あたりの大気汚染物質の排出が小さい傾向があります(硫黄成分は鉱床によって差があります)。古い教科書などには「埋蔵量はほぼ枯渇している」といった記述が見られますが、実際には鉱床は地域ごとに偏在しており、かつての主要鉱山では枯渇が進んでいるものの、世界的には限定的ではあるものの生産が継続しています。
特徴
- 高い炭素含有量:固定炭素比率が高く、揮発分・水分が非常に少ない。
- 高い発熱量:同質量の他の石炭に比べて発熱量が大きく、効率良く熱を得られる。
- 低煙・低臭:燃焼時に煙やすすをほとんど出さないため、暖房用や工業用に好まれる。
- 変成度が高い:無煙炭は、現在科学的に知られている石炭の中で、最も変成度の高い種類の一つとされます。これは長い地質学的時間を経て有機物が高温高圧の条件で変質した結果です。
成分・物理性質
無煙炭は固定炭素含有量が高く(種類によるが一般に70〜95%程度)、揮発分が非常に少ないため燃焼が安定します。含水率も低く、灰分・硫黄分は鉱床により幅がありますが、一般に硫黄分は低めです。このため、暖房用途や一部の工業用途(例えば一部の金属製錬や化学プロセス)で重宝されます。
用途
- 家庭用暖房(ストーブなど)や給湯ボイラー
- 産業用燃料(高温が必要な工程や特殊燃焼)
- 冶金用途(コークスの代替や還元用など、用途は限定的)
- ろ過材や炭材としての特殊用途(粉砕・成形加工して利用)
主要産地と生産量
無煙炭の採掘は世界的に偏在しており、特に埋蔵量と生産が集中している国があります。無煙炭の採掘はほとんど中国が行っています。その他の生産国としてはロシア、ウクライナ、北朝鮮、南アフリカ、ベトナム、英国、オーストラリア、カナダ、米国などが挙げられます(米国では主にミシシッピ川以東とペンシルバニア州での産出が知られています)。
生産量は年や統計によって変動しますが、2010年の報告では総生産量は約6億7,000万トンとされることがあります(データの集計方法や定義によって数値は異なります)。いずれにせよ、無煙炭は石炭資源の中で割合は小さく、鉱床が限定的である点が特徴です。
採掘と流通、環境面
無煙炭は坑内採掘(地下採掘)方式で取られることが多く、採掘・選炭・輸送のコストがかかります。燃焼時の排出は比較的少ないものの、採掘や輸送に伴う環境負荷、採掘地の土地荒廃や廃水・排ガス問題などは無視できません。さらに、化石燃料としてのCO2排出もあるため、気候変動対策の観点からは使用削減や代替エネルギーへの転換が求められています。
まとめ
無煙炭(アンスラサイト)は高い発熱量と低い揮発分を特徴とする高級な石炭で、暖房や一部工業用途で重宝されます。産地は限られており、採掘・流通コストと環境負荷を考慮した利用が求められます。鉱床の局在性や資源の有限性を踏まえ、適切な管理と代替エネルギーの導入が重要です。
大きな無煙炭の塊
質問と回答
Q:無煙炭とは何ですか?
A:無煙炭は暗い色の石炭の一種です。
Q:無煙炭はなぜ硬質炭と呼ばれるのですか?
A:無煙炭は熱量が高く、硫黄分が少ないので、硬質炭と呼ばれています。
Q:無煙炭は他の石炭と何が違うのですか?
A:無煙炭は、現在科学的に知られている石炭の中で最も変成度の高い石炭です。
Q:無煙炭はどこで採掘されることが多いのですか?
A:中国が最も多く採掘しています。
Q:中国以外で無煙炭を生産している国はどこですか?
A:ロシア、ウクライナ、北朝鮮、南アフリカ、ベトナム、イギリス、オーストラリア、カナダ、アメリカ(ミシシッピ川以東とペンシルバニア州)です。
Q: 無煙炭の生産は、鉱床の枯渇の影響を受けているのでしょうか?
A:はい、現在、無煙炭鉱床はほぼ枯渇しています。
Q: 2010年の無煙炭の総生産量は?
A: 2010年の無煙炭の総生産量は6億7千万トンでした。
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