水素テルル化物(tellane、hydrotelluric acid とも呼ばれる)は、テルルの最も単純な水素化合物で、分子式は H2Te である。最も重い安定な中性カルコゲン化水素として、硫化水素やセレン化水素と並べて論じられることが多く、化学的性質は似ているが、安定性と酸性度は異なる。一般的な参照先として 水素テルル化物 を参照。

物理的・化学的性質

H2Te は常温で無色の気体で、強い不快臭をもつ。分子は折れ曲がった形で極性を示し、同族のより軽い水素化物より熱的安定性が大きく低い。水溶液中では酸としてふるまい、テルル化物に関連する種を放出する。共役塩基はテルル化物イオンに由来する。組成の詳細は テルルと水素 を参照。

調製と反応

実験室では、水素テルル化物は一般に金属テルル化物を強酸で処理して発生させる。たとえば、テルル化ナトリウムを酸性化すると H2Te と可溶性のナトリウム塩が生じる。この気体は還元剤であり、多くの金属イオンと反応して金属テルル化物をつくる。また空気中で酸化されやすく、条件によっては元素テルルへ分解することもある。関連するテルル化物塩は テルル化物塩 で扱う。

用途と重要性

H2Te は毒性と不安定性のため、工業的・商業的な用途は限られている。制御された気相反応では、テルルを含む薄膜の堆積や、電子材料・太陽電池材料として重要な金属テルル化物の合成に用いられる。研究分野では、気体のテルル源が必要なときに便利な試薬として使われる。

危険性と取り扱い

  • 水素テルル化物は吸入によって非常に有毒であり、低濃度でも深刻な健康影響を及ぼすことがある。
  • 強い還元剤であり、酸化剤と反応する。分解すると表面にテルルの析出を生じることがある。
  • H2Te を扱うには、ドラフトチャンバー、ガス監視、適切な個人防護具などの工学的管理が必要である。安全ガイダンス を参照。

H2Te は水素カルコゲン系列の重い側に位置するため、同族体における酸性度と安定性の傾向を示している。すなわち、酸性は酸素からテルルへ向かうにつれて強くなり、水素化物の安定性は低下する。こうした一般的な化学的関係は、水素テルル化物の実用的用途が限られること、そして実験室や小規模生産で取り扱う際に注意が必要である理由を説明するのに役立つ。