定義
惑星系の不変の平面は、そのバリセンター(質量中心)を通過する平面である。さらに厳密には、この平面は系全体の角運動量ベクトルの指す方向に垂直な平面であり、系内の全ての運動(公転と自転)から得られる角運動量のベクトル和により決定される。
計算と性質
不変面を求めるには、各天体の角運動量をベクトルとして合成する。古典力学的には総角運動量ベクトルは次のように表される:
L = Σ mi (ri × vi)
ここで mi、ri、vi はそれぞれ天体 i の質量、位置ベクトル、速度ベクトルである。得られた総角運動量ベクトルに垂直な平面が不変面であり、その原点は系のバリセンター(重心)である。
重要な性質:
- 系に外部から有意なトルクが働かない限り、総角運動量は保存されるため、不変面は長期的に「ほとんど不変」である。
- 不変面は公転面と自転面の単純な算術平均ではなく、角運動量(=質量×距離×速度に依存)で重み付けられたベクトル和に基づく重心的な基準面である。
- 小さな質量や近距離の天体よりも、質量が大きく遠くを回る天体(角運動量の寄与が大きいもの)が不変面の向きに強く影響する。
太陽系における特徴
太陽系では、不変面の方向は主に外惑星、とくに大型ガス惑星の角運動量によって支配されている。4つのガス惑星(木星、土星、天王星、海王星)の角運動量が系全体に対して非常に大きな寄与をしており、これらによる寄与が合計でおおむね多数を占める(一般に大部分が外惑星の寄与で説明される)。その結果、不変面は個々の惑星の公転面の加重平均とみなすことができる。
具体的には、不変面は地球の公転面(黄道面)や太陽の赤道面とはわずかに傾いている。観測的には、不変面は黄道面に対しておよそ約1.6°程度の傾きをもち、また木星の軌道面とは約0.3°程度の差しかないため、木星の軌道面に非常に近い。
利用と注意点
不変面は、長期的な力学解析や系の全体的な向きを表現する際の便利な基準面である。太陽系の長期数値積分や惑星系形成の研究、散乱過程や傾きの変化を議論する際の基準として用いられる。
ただし注意点として、不変面は外部から大きなトルク(近傍の星の接近や巨大な外来質量の追加など)があれば変化しうる。また、系内の角運動量の定義に含める対象(小天体やガス、ダストなど)によって厳密な向きや位置は変わり得るため、用途に応じてどの成分を角運動量和に含めるかを明確にする必要がある。
まとめ
不変面は系全体の角運動量ベクトルに垂直な平面であり、バリセンターを通る。太陽系では外惑星の影響が支配的で、不変面は木星の軌道面に非常に近く、黄道面とはわずかに傾いている。外力が無ければ長期間ほとんど変化しないため、惑星力学の基準面として重要である。