ジャムとは:定義・原料・製法・規格(EU・カナダ)とマーマレード・ゼリーとの違い
ジャムの定義・原料・製法をわかりやすく解説。EU・カナダの規格やマーマレード・ゼリーとの違い、保存・表示のポイントまで詳述。
ジャムとは、一般に果実(または果実性の原料)と砂糖、必要に応じてペクチンや酸を煮詰めて作る塗り広げるタイプの調味料・保存食品です。原材料は多様で、生または搾った果物、砂糖、天然または市販のペクチン類が中心となり、ほとんどのジャムは熱を加えて調理・殺菌したあと、気密性の高い瓶に詰めて保存します。調味料として、朝食のトーストやパン、ヨーグルト、菓子作りなど幅広く使われます。
原料と配合の基本
- 果実:全果や果肉、搾汁を用いる。果実の種類によりテクスチャーやジェル化のしやすさが変わる。
- 砂糖:従来型のジャムでは果実とほぼ同量(1:1)が一般的ですが、低糖・無糖タイプや保存性を重視した配合もあります。砂糖は保存性を高め、ペクチンとの相互作用でジェル化を助けます。
- ペクチン:果実自身に含まれる天然ペクチン(例:リンゴ、柑橘の皮)で足りない場合は市販のペクチン剤を添加します。ペクチンには高メトキシル(HM)型と低メトキシル(LM)型があり、HM型は糖と酸を必要とし、LM型はカルシウムでゲル化します。
- 酸:レモン果汁などの酸はpHを下げてゲル化を促進し、風味を引き締めます。
- その他の添加物:製品によっては保存料、pH調整剤、消泡剤などが少量使われることがあります(下の「規格と表示」を参照)。
製法の流れ(家庭・工場とも共通する主要ステップ)
- 果実の選別・洗浄・皮むき・刻み(必要に応じて果肉と果汁に分ける)。
- 砂糖と果実を合わせ、短時間〜数時間マセラート(砂糖で漬けて果汁を出す)する場合がある。
- 加熱して煮詰める。ペクチンや酸を加え、所定の濃度・ジェル化点になるまで煮る。ジャムの「ゼリー化点」は一般に糖と酸の条件下で到達する温度域があり、伝統的には約104℃前後を目安にすることが多い(標高や糖度で変動)。
- 熱処理後、殺菌済みの瓶に充填し、密封して冷ますことで真空状態が得られ、常温でも保存できる製品になります。家庭では湯煎でのビン詰め(ボトルの水浴殺菌)がよく行われます。
- 開封後は冷蔵保存し、早めに使い切るのが安全です。
テクスチャーと分類
- ジャム:果肉や果実片が残り、やや粒感のある塗り物。果実と砂糖を煮詰めて作るのが一般的。
- ゼリー:果汁のみを用いて澄んだゲル状に仕上げたもの。果肉は含まれません(後述の区別を参照)。
- マーマレード:主に柑橘類(特にオレンジ)の果肉と皮を含むジャムの一種で、果皮のほろ苦さや食感が特徴です(下項参照)。
- フルーツバター:果実を長時間ゆっくり煮詰め、細かくピューレにして滑らかで濃厚なペースト状にしたもの。一般にペクチンに頼らず粘性を出します(例:アップルバター)。
EU(欧州連合)における規格
欧州連合では、ジャム指令(理事会指令79/693/EEC、1979年7月24日)があり、この指令ではジャムに含まれる「果実」の量について最低基準を定めています。ここでは「果実」の定義が拡大され、伝統的に果物とみなされないものや通常ジャムにしない原料も含めることができると解釈されています。具体例として、トマトのように通常は果物扱いされないもの、メロンやスイカのような通常はジャムにしない果物、ルバーブ(茎の可食部)や、ニンジン、サツマイモ、キュウリ、カボチャのようなジャムにすることがある野菜が「果物」として扱われることがある点が明記されています。この定義は、新しい指令である理事会指令2001/113/EC(2001年12月20日)でも引き続き適用されています。製品表示や商品の分類、輸出入時の取り扱いに影響するため、各国の実際の運用や追加規則も併せて確認する必要があります。
カナダにおける規格
カナダの食品規制(Food and Drug Regulations)によれば、ジャム類の基準には次のような規定があります。一般的に、名前で指定された果実を45%以上含むこと、水溶性固形分(糖分や溶解した固形分)が66%以上であることが求められます。さらに、ペクチン、ペクチン製剤、酸成分の添加が許可されており、第二種保存料、pH調整剤、消泡剤などが規定の範囲内で使用できるとされています。なお、原文や特許文書などでは「ただし、本発明のジャム製品には、リンゴ、ルバーブは含まれていないものとする。」のような個別の除外条件が示される場合もあるため、特定の文献や製品ケースでは別の扱いになることがあります。
マーマレードとゼリーとの違い
- マーマレード:一般的にはマーマレードとは、オレンジを使ったジャムの一種で、果肉だけでなく果皮や白いアルベド(内皮)も含むことが多く、皮の食感やほろ苦さが特長です。オレンジ以外の柑橘(レモン、グレープフルーツなど)でも作られます。
- ゼリー:果汁を主体にして澄んだゲル状に仕上げた製品で、果肉や種などの固形成分は除かれているため外観が透明〜半透明になります。記事中の通り「ゼリーは果物ではなく、ほとんどが果汁で作られているので、ジャムとは違います。」という点が区別のポイントです。
フルーツバターとの違い
フルーツバターは果実を長時間かけて煮詰め、繊維質を細かくしながら濃厚で滑らかな粘り気に仕上げたペースト状の製品です。ペクチンによる急速なゲル化ではなく、果実自身の濃縮と加熱による粘度で構成されるため、風味と色が濃く出やすいのが特徴です(例:アップルバター、プラムバター)。
保存と安全性
- 未開封の適切に滅菌・密封されたジャムは常温で長期間保存できますが、光や高温は風味や色の劣化を招くため冷暗所で保管するのが望ましいです。
- 開封後は冷蔵保存し、カビが生えたり、匂いが変わったりした場合は廃棄してください。記事中にもあるように「開封して冷蔵庫から出すと、ジェルはより液体のようになり、腐敗することができます。」ため、取り扱いには注意が必要です。
- 低糖や無糖のジャムは従来の高糖製品より保存性が低いため、保存方法や添加物の使用に注意が要ります。
文化・芸術の側面
ジャムは食品としてだけでなく文化的・芸術的な文脈でも登場します。たとえば、ジョアン・ミロはブラックベリージャムをアートの媒体として使用していたと報告されています。このように素材としての果実やジャムは、食以外の表現にも利用されることがあります。
まとめ(ポイント)
- ジャムは果実+砂糖+必要に応じたペクチン/酸で作る塗り物状の保存食品である。
- マーマレードは主に柑橘の果肉と果皮を含む特定のジャム、ゼリーは果汁のみで作る透明なゲル状製品で区別される。
- EUやカナダなどではジャムの成分・表示について法的基準があり、果実の定義や最低含有量、可使用添加物が規定されている(本文中に具体的な規定例あり)。
- 製法は果実の処理→砂糖と合わせ→加熱・煮詰め→滅菌・密封が基本で、開封後は冷蔵・早期消費が推奨される。

3種類のジャムの瓶
質問と回答
Q:ジャムとは何ですか?
A:ジャムとは、果物の搾りかす、砂糖、時にはペクチンから作られる調味料です。通常、調理した後、密閉できる瓶に入れます。
Q:ジャムにはどれくらいの砂糖が含まれていますか?
A:ほとんどのジャムには、果物の量と同じだけの砂糖が含まれています。
Q: EUのジャム指令によると、ジャムに含まれる「果物」の量の最低基準は何ですか?
A: EUのジャム指令(理事会指令79/693/EEC、1979年7月24日)によると、ジャムに含まれる「果実」の量には最低基準が設けられています。これには、トマトなど通常果物として扱われないもの、メロンやスイカなど通常ジャムにしないもの、ルバーブ(茎の可食部)、にんじん、さつまいも、きゅうり、かぼちゃなどジャムにすることもある野菜類が含まれます。
Q: カナダの食品医薬品規制では、ジャムについてどのように規定されていますか?
A: カナダの食品医薬品規制(CRC)によると、ジャムは少なくとも、指定された果実が45%、水溶性固形分が66%でなければならないとされています。また、ペクチン、ペクチン質製剤、酸味料、適度な量のクラスII保存料、pH調整剤、消泡剤が含まれていてもかまいませんが、リンゴとルバーブは含まれてはいけません。
Q: マーマレードは他のジャムとどう違うのですか?
A: マーマレードはオレンジから作られるジャムの一種で、果肉や皮が含まれることが多いのですが、他のジャムは果肉や皮が含まれない果実を搾っただけのものが一般的です。
Q:ゼリーは他のジャムとどう違うのですか?
A: ゼリーは、他のジャムのように果実を圧搾して作るのではなく、ほとんどが果汁から作られるため、他のジャムとは異なります。
Q:ジョアン・ミロはブラックベリージャムを何に使っていたことで知られていますか?
A: ジョアン・ミロはブラックベリージャムを画材として使用しました。
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