ネッド・ケリー(1970年映画)|トニー・リチャードソン監督・ミック・ジャガー主演

ネッド・ケリーは1970年の映画の名前である。オーストラリアのブッシュレンジャー、ネッド・ケリーを描いた長編映画としては2作目である。1作目は1906年の『ケリー・ギャングの物語』で、世界初の長編映画である。

トニー・リチャードソンが監督し、ミック・ジャガーがネッド・ケリー役で出演した。スコットランド生まれの俳優マーク・マクマナスがケリーの友人ジョー・バーンの役を演じた。イギリスの作品だが、撮影はすべてオーストラリアで行われ、主にニューサウスウェールズ州南部のブレイドウッド周辺で、オーストラリア人俳優を中心に撮影された。

あらすじ(概略)

物語は19世紀のオーストラリアを舞台に、貧しい出自から次第に反逆者となっていくネッド・ケリーの人生と、彼を取り巻く社会的・政治的状況を描く。土地や権力を巡る紛争、警察との対立、仲間との絆と裏切り、そして有名な鎧(アーマー)を着ての最期の抗争へと至る過程が映画の主題となっている。作品はネッド・ケリーを単なる犯罪者としてではなく、複雑な時代背景の中で生きた人物として描写しようとする試みがなされている。

キャストと主要スタッフ

  • ネッド・ケリー:ミック・ジャガー(主演)
  • ジョー・バーン:
  • その他:スコットランド生まれの俳優マーク・マクマナスほか、主にオーストラリア人俳優が脇を固めた
  • 監督:トニー・リチャードソン

(注:ここでは元の資料に基づく主要人物のみを挙げている。詳細なフルキャストやスタッフは作品クレジットや公式資料を参照のこと。)

製作と撮影

本作はイギリスの製作ながら、舞台設定に忠実にするため撮影は全てオーストラリアで行われた。特に自然景観が重要な役割を果たすため、ニューサウスウェールズ州南部のブレイドウッド周辺など実地ロケーションが選ばれ、広大な風景や時代考証に配慮した衣装・美術が画面の特徴となっている。監督のトニー・リチャードソンは登場人物の内面と社会的背景を重視する演出を採り、ロケーション撮影を活かした映像表現を試みた。

主題と表現

映画はネッド・ケリーを巡る「英雄か犯罪者か」という二元論に単純化せず、植民地社会の階層構造、貧困、警察権力との対立といった背景を織り込みながら人物像の複雑さを提示する。ネッドの伝説的な鎧のイメージやアウトローとしての行動は視覚的にも象徴的に扱われ、時代劇としての見応えと社会史的な問いかけを兼ね備えている。

公開後の評価と論争

公開当時および以降、映画は賛否両論を呼んだ。演出や映像美を評価する声がある一方で、主演の起用や歴史的描写の解釈について批判もあった。特にネッド・ケリーという歴史的人物を外国人のスターが演じることや、史実に対する脚色・省略の是非は論争の的となった。歴史的事実とフィクションの境界について議論を促した点は、この作品の注目すべき側面の一つである。

見どころ・鑑賞のポイント

  • 広大なオーストラリアの風景を活かしたロケーション撮影と美術。
  • ネッド・ケリー像の再解釈——彼を単純な悪役としてではなく時代の産物として描こうとする視点。
  • 主演の演技やキャスティングによる独特の雰囲気(批評は分かれる)。

歴史的背景との関係

ネッド・ケリーはオーストラリアの民衆伝承において特異な位置を占める人物であり、映画化のたびに描き方が異なる。1970年版も例外ではなく、史実を如何に映画的に消化するかが制作上の課題となった。歴史愛好家や研究者の間では、事実関係の検証や描写の正確さについての議論が続いている。

現在の入手状況

製作から年月が経っているため、画質や字幕の有無はリリース版によって差がある。近年はDVDやデジタル配信で視聴可能な場合もあるので、視聴時は収録仕様(英語音声、日本語字幕の有無、画質など)を確認するとよい。

まとめ

1970年の『ネッド・ケリー』は、伝説的なアウトローを題材に、風景描写と人物描写を重視した作品である。トニー・リチャードソンの演出、そして異色のキャスティングであるミック・ジャガーの主演は、公開当時から現在に至るまで賛否を呼んできた。オーストラリア映画史やネッド・ケリー像の変遷を考える上で、重要な参照点の一つとなっている。

問題点

映画化にあたっては、さまざまな問題があった。俳優組合「アクターズ・エクイティ」やネッド・ケリーの親族が、ジャガーが主役になることに強く抗議したのだ。また、ケリー夫妻が住んでいたビクトリア州ではなく、ニューサウスウェールズ州で映画が作られることに憤慨する人も少なくなかった。

ジャガーの恋人のマリアンヌ・フェイスフルは、ネッドの妹マギーという主役の女性役を演じるためにオーストラリアに渡ってきていた。二人の関係は破たんしており、彼女はシドニーに着いてすぐに睡眠薬の過剰摂取をした。彼女は昏睡状態に陥ったが、すぐに回復し、イギリスに帰った。代役はオーストラリアの無名女優、ダイアン・クレイグ。撮影中、ジャガーはピストルの誤射で怪我をした。俳優やスタッフは病気がちで、衣装の一部は火事で焼失し、ジャガーの共演者マーク・マクマナスは、撮影中に乗っていた馬車が横転して大怪我を免れたばかりであった。

アーマー

ジャガーが着用したボディアーマー衣装はQueanbeyan City Libraryで展示されており、内側には「MJ」の文字が引っ掻かれている。ヘッドピースが盗まれ、オーストラリア映画史の重要な一片が失われた。

評論家

公開時の評判は非常に悪く、今でもリチャードソンの最低映画と言われている。リチャードソンもジャガーも、この映画のロンドンでの公開には行かなかった。

音楽

映画の音楽は、シェル・シルヴァスタインが作曲し、クリス・クリストファーソンとウェイロン・ジェニングスが演奏し、ジャガーが1曲歌っています。


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