世界初の長編映画『ケリー・ギャングの物語』―ネッド・ケリー、1906年作の復元とユネスコ登録

世界初の長編映画『ケリー・ギャングの物語』の復元とユネスコ登録の軌跡、ネッド・ケリーや1906年制作の歴史的価値、発見された貴重なフィルムと修復記録。

著者: Leandro Alegsa

『ケリー・ギャングの物語』は、世界初の長編映画とされる作品です。約70分ほどのこの映画は、1915年に製作されたD.W.グリフィスの『国家誕生』よりも9年早い1906年に制作されました。物語は、オーストラリアの有名なバスレンジャーネッド・ケリー(1855–1880)の生涯を題材にしており、脚本・監督はチャールズ・テイトが務めました。映画のフィルムは約4,000フィート(約1,200メートル)で、当時の標準的な上映速度を考えると70分前後の長さに相当します。オーストラリアでは1906年12月26日、イギリスでは1908年1月に公開され、製作費はおよそ2,250ドルと伝えられています。撮影は主にメルボルン近郊で行われ、セント・キルダ(室内シーン)、エルサム、グリーンズバラ、ハイデルバーグ、ミッチャム、ロザンナなどがロケ地に含まれます。列車の場面はビクトリア州ハーストブリッジ線、ロザンナ駅付近のセント・ジェームズ・ロードの踏切で撮影されました。ホテル内の「ロスト(行方不明)シーン」には、フレデリック・クルー演じる小さな少年が登場します。

現存状況と復元の経緯

当初のフィルムはほとんどが失われており、長年にわたって断片だけが伝わっていました。発見された映像は最初、約10分分のみが確認されていました。破損したフィルムの大部分は、ビクトリア州ヤラヴィルにあるクルー一家の旧家屋に付随する古い納屋で多数発見され、その後キャンベラ(National Film and Sound Archive)に送られましたが、当時の技術やフィルムの劣化状況から多くは回収できませんでした。

その後の調査で、イギリスで発見された約11分のフィルムが加わり、2006年11月にNational Film and Sound Archiveは新たなデジタルコピーを作成しました。現在保存・公開されている断片は合計で約17分に及び、特にグレンローワンでのケリーと警察の衝突(いわゆるケリーの最後の戦い)の主要場面が含まれています。さらに、当時のプログラムブックのコピーも発見され、新聞報道で伝えられたギャング逮捕の経緯や、映画の筋立てを6つの「シーン」に分けて説明する記述が残っていました。このプログラムブックと残存フィルム断片は、作品全体の構成や演出を復元・想像する上で重要な手がかりとなっています。

文化的・歴史的意義

この作品は早期映画の技術的・物語的発展を示す重要な資料です。長編に近い物語を一貫して描写する試み、野外ロケや大勢のエキストラを用いた再現場面、列車や実際の地形を活かした撮影などは、当時としては画期的でした。また、ネッド・ケリーという人物自体がオーストラリアの歴史と民衆記憶のなかで象徴的な存在であり、アウトロー/反逆者として語られる一方で社会的背景や英雄視の対象にもなってきました。本作はそうしたネッド・ケリー像の早期の映像化例としても価値があります。

保存と評価

フィルムの素材(ニトロセルロース製)は経年で著しく劣化しやすく、断片しか残らなかったことから復元は非常に困難でした。近年は高解像度スキャンやデジタル修復技術の進歩により、残存断片の保存・補完が進められています。プログラム冊子や当時の記事、配給記録などの資料を組み合わせることで、失われた場面や編集の意図を推定することが可能になり、映像史・文化史の研究にとって貴重な一次資料となっています。

こうした評価を受け、2007年には世界初の長編映画として『ケリー・ギャングの物語』がユネスコの世界記憶遺産に登録されました。現在もNational Film and Sound Archiveを中心に保存・研究・公開が続けられており、断片映像は展示や上映、教育資料としても用いられています。

参考になる点

  • 作品は映画史上の「初期長編」研究に不可欠な資料であり、初期のナラティブ手法や上映形態の理解に役立ちます。
  • ネッド・ケリーという題材は、オーストラリア社会における法と反抗、記憶の形成を考える上で重要です。
  • 保存・復元作業は、フィルム素材の化学的劣化と散逸した資料の探索を含む長期的な取り組みを必要とします。

以上の点から、『ケリー・ギャングの物語』は単なる古い映画作品にとどまらず、映画技術史、文化史、記憶遺産の観点から重要な位置を占めています。現存する断片と文献を手掛かりに、当時の制作手法や観客の受け取り方を読み解く研究が今後も進められていくでしょう。

メディアを再生する ケリー・ギャングの物語 (断片)。
メディアを再生する ケリー・ギャングの物語 (断片)。

質問と回答

Q:世界初の長編映画のタイトルは何でしょう?


A:「ケリー・ギャングの物語」です。

Q:この映画の脚本と監督は誰ですか?


A:チャールズ・テイトが脚本と監督を担当しました。

Q:いつ公開されたのですか?


A: 「ケリー・ギャング物語」は、オーストラリアでは1906年12月26日に、イギリスでは1908年1月に公開されました。

Q: 製作費はどのくらいかかったのですか?


A: 「ケリー・ギャングの物語」の製作費は約2,250ドルでした。

Q: この映画のいくつかのシーンはどこで撮影されたのですか?


A: 「ケリー・ギャングの物語」の撮影は、メルボルンとその近郊のセントキルダ(屋内)、エルサム、グリーンズボロ、ハイデルバーグ、ミッチャム、ロザンナで行われました。

Q: 今日残っている映画の長さはどれくらいですか?


A: 今日、「ケリー・ギャングの物語」の残り時間は17分です。

Q: ユネスコ記憶遺産に登録されたのは何年ですか?



A: 2007年に「ケリー・ギャングの物語」がユネスコ記憶遺産に登録されました。


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