ヌンク・ディミティスとは:シメオンの賛歌 — ルカ福音書の典礼歌と音楽史

ルカ福音書のシメオンが歌った『ヌンク・ディミティス』の起源・歌詞の意味・典礼での位置づけ、英国エベンソンや作曲家による音楽史をやさしく解説。

著者: Leandro Alegsa

ヌンク・ディミティス(ラテン語:Nunc dimittis、Canticum Simeonis)は、聖書の中の賛歌で、ルカによる福音書(ルカ2:29–32)に記されたシメオンの歌です。シメオンが幼子のイエスを抱き、神に対して「これで僕は安らかに死ぬことができる(主よ、あなたの僕を御言葉のとおりに安らかに去らせてください)」と告白する言葉を含みます。ラテン語の題は冒頭の語「Nunc dimittis」(今や退けたまえ)に由来します。

聖句の由来と意味

ルカによれば、シメオンはユダヤ人であり、聖霊に啓示されて「イエスを見るまでは死なない」と約束されていました。マリアとヨセフが幼子のイエスをエルサレムの神殿に連れて行って献げるとき、シメオンはそこにいてイエスを抱き、主に感謝してこの賛歌を歌いました。歌詞は救いの完成と普遍的な啓示を語り、イエスが「異邦人のための光」かつ「あなたの民イスラエルへの栄光」であることを表します(ルカ2:32)。

典礼での用い方

  • カトリック、正教会、聖公会(アングリカン)の伝統において、ヌンク・ディミティスは夕の礼拝や終課(夜の祈り)などの夕方の祈祷で歌われることが多いです。
  • 特にイングランド国教会では、伝統的に英国の夕の礼拝 エベンソン(Evensong)で〈Magnificat〉と対をなして歌われることが一般的です。
  • 1662年に出版されたBook of Common Prayer(祈祷書)にも英訳が掲載され、以後の典礼書で使われ続けています。
  • 「主よ、これで僕は安らかに去らせていただけます」という文言のため、葬儀や追悼の場面でもしばしば引用・演奏されます。

音楽史と作曲家による設定

ヌンク・ディミティスは、その短く凝縮されたテキストが古くから声楽合唱作品や典礼用の楽曲の題材として好まれ、ルネサンス期から現代に至るまで多くの作曲家によって音楽化されてきました。以下は代表的な状況・傾向です。

  • ルネサンス〜バロック期:対位法や聖歌旋律を用いた多声合唱曲として多数の作曲家が設定しました。イングランドのトマス・タリス(Tallis)、ウィリアム・バード(Byrd)、オーランド・ギボンズ(Gibbons)などの例が知られます。
  • 19〜20世紀の英国教会音楽:チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォード、ハーバート・ハウエルズ(Herbert Howells)など、多くの作曲家が「Magnificat and Nunc dimittis」の組曲として写本・出版し、聖歌隊のレパートリーとなりました。
  • 現代:ジョン・ラター(John Rutter)やアルヴォ・ペルト(Arvo Pärt)などもヌンク・ディミティスを含む作品を作曲しており、現代的な和声やミニマルな手法で新たな解釈が示されています。
  • 演奏形態は、単声・多声合唱、夾雑された管弦楽伴奏付きの大規模なコラール、無伴奏合唱、あるいは現代的な編成まで多彩です。多くの教会合唱団や聖歌隊の定番レパートリーになっています。

テキストの例(概要)と翻訳

典礼で用いられる代表的な英語訳は「Lord, now lettest thou thy servant depart in peace, according to thy word…」であり、日本語では「主よ、あなたの僕を御言葉のとおりに安らかに去らせてください。/あなたは救いを、すべての民の前に備えられました」などと訳されます(訳文は教派や礼拝書により異なります)。

まとめ

ヌンク・ディミティスはルカ福音書に由来する短い賛歌で、夕の礼拝や葬送儀礼で広く用いられてきました。宗教的・音楽的に深い意味を持ち、長い音楽史の中で多様な様式で表現され続けています。教会音楽や合唱曲としての実演も非常に多く、典礼と芸術の交差点に位置する重要なテキストです。

シメオンの賛美の歌」 アエルト・デ・ゲルダー作、1700~1710年頃に描かれた作品。Zoom
シメオンの賛美の歌」 アエルト・デ・ゲルダー作、1700~1710年頃に描かれた作品。

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質問と回答

Q: ヌンク・ディミティスとは何ですか?


A: ヌンク・ディミティスは、聖書の中の賛美歌です。

Q: 誰がヌンク・ディミティスを歌ったのですか?


A:シメオンは、赤ん坊のイエスを見たとき、ヌンク・ディミティスを歌いました。

Q: ルカ伝には、シメオンについてどんなことが書かれていますか?


A:シメオンは、聖霊によって、イエス様を見るまでは死なないと約束されたと書かれています。

Q: シメオンは赤ん坊のイエスを見たとき、どこにいたのですか?


A:シメオンは、長男の奉献の儀式のためにエルサレムの神殿にいたとき、赤ん坊のイエスを見ました。

Q:シメオンはイエスを抱きかかえたとき、何と言ったのでしょうか?


A: シメオンはイエスを抱きかかえたとき、現在「Nunc dimittis」として知られている言葉を述べました。

Q: なぜシメオンは「ヌンク・ディミティス」を唱えたのでしょうか?


A:シメオンは、救い主を見たので、これで幸せに死ねる、と神様に言っていたのです。

Q: 「ヌンク・ディミティス」は伝統的にどこで歌われるのですか?


A: Nunc dimittisは、英国国教会のEvensongで歌われるのが伝統的です。


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