Pegomastax(「強い顎」)は、南アフリカ下部ジュラ紀の地層から産出した小型のヘテロドントサウルス属の恐竜です。現在、標本の基になっているのは、ケープタウンのIziko South African Museumに収蔵されている一個体の頭蓋骨で、これが種や形態の理解の中心資料となっています(頭蓋骨が元になっている)。

化石は1966年から1967年の遠征で採集されましたが、そのまま長く未記載のままで保管されていました。1980年代には特徴的な形態が注目されていたものの、正式な命名・記載が行われたのは2012年で、研究者のPaul Serenoによって記述されました。記載されたタイプ種P. africanaです(タイプ種)。

形態的には非常に小型の恐竜で、頭骨は短く頑丈な下顎を備え、前方に短いくちばし状(嘴状)の構造を持つ点が特徴です。下顎の前方には同様のヘテロドントサウルス類と同じく突出した犬歯様の大きな歯(犬歯状歯)が配列しており、これが外見上の大きな特徴となっています。他方で、頬部の歯列は平坦で葉状の咬合面を持つ歯が並び、噛み切ってすり潰す用途に適した形状をしています。

これらの歯の構成から、Pegomastaxは基本的に草食動物的な摂食様式を示していたと考えられます。短い嘴と葉状の頬歯は植物を摘み取り咀嚼するのに適しており、対して犬歯状の大きな歯は防御や争闘、あるいは求愛や種内表示といった社会的機能に供された可能性があります。小型で軽快な体つきだったと推定され、二足歩行で速く走ることができたと考えられています(全長は数十センチ程度と推定されることが多い)。

生息環境は下部ジュラ紀の陸上域で、乾燥と季節的な降水の影響を受ける半乾燥~季節性気候の地域だったと推定されます。同時代の大型の原始的竜脚形類や多様な小型脊椎動物と共存しており、地上の低木や地表植生を主な資源とした小型植食動物として生態系での一角を占めていたと考えられます。

分類学的には、Pegomastaxはヘテロドントサウルス類に位置づけられる基盤的な鳥盤類で、よく知られるヘテロドントサウルスと近縁ですが、頭骨の細部(下顎の形状や歯の配列、嘴の構造など)に明瞭な相違点があります。限られた資料ながらも、南半球(ゴンドワナ)におけるヘテロドントサウルス類の多様性と進化の過程を理解する上で重要な標本とされています。将来的な追加標本の発見と詳しい比較研究が、より正確な生態復元と系統的位置づけに寄与するでしょう。