米国上院の大統領プロテンポア(President pro tempore)は、上院の日常的な議事運営で副大統領が不在のときに議場を主宰するために選出される上院の役職です。慣例としては、多くの場合多数派上院議員の中で最も長く在職している議員が選ばれますが、選出は上院の投票によって行われます。職名はラテン語の「pro tempore(臨時の)」に由来し、常置の職というよりは「副大統領が不在のときにその職務を代行する者」という位置づけです。
定義と選出方法
上院の規則と慣習に基づき、上院は議員の投票で大統領プロテンポアを選出します。通常は多数派から選ばれ、近年は多数党に属し、かつ最長在職の上院議員が名誉的に指名されることが多いです。根拠は憲法(および上院の規則)にあり、上院は副大統領の不在時に議場を主宰するための「大統領プロテンポア」を選ぶ権限を持ちます。
職務・権限
- 議事の主宰:副大統領が上院に出席できないときに議長として議事を取り仕切ります。近年は与野党の合意により、他の上院議員が暫定的に議長を務めることもあります。
- 通例的な職務:上院の公式文書への署名、儀礼的な役割、上院委員会の指名・手続きに関する形式的な権限などを行いますが、実務的な日常運営の多くは多数党のマイノリティリーダーやマジョリティリーダーが担います。
- 継承順位:連邦法(Presidential Succession Act)に基づき、大統領の不在または無能力時の継承順位では、副大統領、下院議長に続いて大統領プロテンポアが位置します。したがって、大統領の継承順位で「第3位(第三の継承者)」にあたります。
- 実務上の制約:日常的には儀礼的色彩が強く、上院内部の具体的な政策運営や法案戦略の決定権は限定的です。
歴史と著名な人物
大統領プロテンポアの役職は上院創設以来存在し、その運用は時代とともに変化してきました。初期にはしばしば回転する役職でしたが、19世紀後半以降は名誉職化し、長年の在職に対する栄誉として与えられるようになりました。
おそらく最も有名な臨時大統領候補の一人は、ベンジャミン・ウェイドは、1868年にアンドリュー・ジョンソンの弾劾裁判で被告が有罪となっていれば大統領に就任していた可能性があった人物です。しかし実際には有罪判決は得られず、上院仮議長が実際に大統領になった例はありません。
歴史的に著名な大統領プロテンポアには、ジョン・ラングドン(初代)、デビッド・ライス・アチソン(D-MO)、ベンジャミン・ウェイド(R-OH)、アーサー・バンデンバーグ(R-MI)、カール・ヘイデン(D-AZ)、リチャード・ラッセルJr.(D-GA), Strom Thurmond (R-SC), Robert Byrd (D-WV), Daniel Inouye (D-HI), and Patrick Leahy (D-VT) などがいます。これらの人物は在職年数や上院での影響力により、上院の名誉的代表として知られています。
特別な慣例・例外
上院は慣習的に長老議員(長期在職者)に対して名誉的な地位を与えることが多く、また退職したり少数党側に回った際に「President pro tempore emeritus(名誉上院仮議長)」という称号を与える慣例もあります。
アメリカの元副大統領であるヒューバート・ハンフリー上院議員が重病にかかったとき、上院は彼への敬意を示し、上院に選出された元大統領または副大統領のために臨時代理大統領という役職を創設したという例がありました。これは常例ではなく、以降はあまり用いられていません。
まとめ
- 大統領プロテンポアは上院が副大統領不在時に選出する議長役であり、慣例的には多数党の最長在職議員が選ばれることが多い。
- 職務は主に儀礼的・手続的で、実務的権限は限定的。ただし大統領継承順位では重要な位置(副大統領、下院議長の次)にある。
- 歴史的には影響力のある上院議員がこの職を務めており、議会の慣習と政治的バランスによって役割の実際の重みは変わる。
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