プリアプルス(Priapulida)—海洋ペニスワームの定義・分類・生態
プリアプルス(ペニスワーム)の定義・分類・生態を図解で詳解。カンブリア紀の捕食者から現生16種、浅海泥中で暮らす奇妙な海洋ワームの全貌。
Priapulida(priapulidまたはpenis worms)は海産ワームの一群で、体の前方に突出する口吻が人間のペニスに似ていることから通称「ペニスワーム」と呼ばれます。体は円筒形で外皮(カットクル)に覆われ、前方には可逆な口吻(イントロバート)と多数の棘状突起(スカリド)があり、これらを用いて摂食や掘進を行います。一般に泥や砂の堆積した海底に潜る生活を送り、浅海域(種によっては水深およそ90メートルまで報告される)から深海域まで広く分布します。
形態と大きさ
プリアプルス類は体節がはっきりしない非節足性の円筒形動物で、体は「口吻(イントロバート)」と「胴部(トランク)」、時に尾部(カウダル・プロセス)に分かれます。口吻には多数の棘や顆粒が並び、獲物の捕獲や底質の掘削に用いられます。大きさは種により異なり、数センチから数十センチに達することがあります(化石種を含めるとさらに大型のものが知られています)。
分布・生息環境
多くは海底の泥や砂の中で生活し、砂泥を掘って巣穴(トンネル)を作ることが多いです。浅海の沿岸域に住む種もいれば、深海底(深海平原や大陸斜面)に生息するものもあり、生息深度は種によって幅があります。採餌は夜間や潮の流れの変化に伴って活発になることが多いとされています。
分類と系統的位置
現生のプリアプルス類は、系統的にはおそらくKinorhynchaやLoriciferaと近縁で、これら三者は総称してScalidophoraという分類群を形成します。Scalidophoraはさらに広い系統であるEcdysozoa(脱皮動物)に含まれ、同系統には節足動物や線形動物なども属します。Ecdysozoaの中では、節足動物やベルベットワームを除くと比較的大型になる稀な例の一つです。
生態・採餌
プリアプルス類は主に捕食者で、海底に棲む小さな無脊椎動物を捕食します。口吻を急に反転させて獲物を捕らえ、外套腔に取り込みます。獲物には、多くの場合、多毛類のような動きの遅い無脊椎動物や他の底生動物が含まれると報告されています。種類によっては掃除食的な摂食や底質中の有機物を摂る習性を示すものもあると考えられています。
繁殖・生活史
性別は雌雄に分かれる種が多く、外部受精で繁殖する例が知られています。発生様式には種差があり、浮遊する幼生(プランクトン期)を経る種もあれば、直接発生する種もあります。発達や繁殖に関する情報は種によって不十分で、研究が進められています。
化石記録と進化的意義
プリアプルス類の化石は少なくともカンブリア紀中期にまで遡ることができ、カンブリア紀の主要な捕食者群の一つであったと考えられています。バージェス頁岩や同時代の堆積層から、現生群に類似した形態を持つ化石種が多く見つかっており、カンブリア爆発期の生態系や捕食様式の理解に重要な手がかりを与えています。
種数と保全状態
現生プリアプルス類は非常に少数で、記載されている種は約16種程度とされています。ただし深海域には未記載種が残されている可能性が高く、分布や個体数、保全状態に関する情報は限られています。生息環境の変化や深海開発の影響についてはさらなる調査が必要です。
研究上の重要性
プリアプルス類は、その独特な形態と古い化石記録から、動物の初期進化や脱皮動物(Ecdysozoa)の系統関係を解明するうえで重要な役割を果たします。現生種と化石種を比較することで、カンブリア紀以降の形態進化や生態的役割の変遷を理解するための貴重な材料を提供します。
参考:本稿では一般的な特徴を述べましたが、形態や生態には種差が大きく、詳しい情報は種ごとの研究報告を参照してください。
質問と回答
Q: Priapulidaとは何ですか?
A: Priapulidaは、海洋生物の一門です。
Q: その名前の意味は何ですか?
A:伸縮自在のトゲトゲの口吻が、種によっては人間のペニスのような形をしていることから、この名があります。
Q: どこに住んでいるのですか?
A: 90mまでの比較的浅い海域で、泥を食べながら生活しています。
Q:近縁種は何ですか?
A: 近縁種はKinorhynchaとLoriciferaで、これらとScalidophoraという分類を構成していると思われます。
Q: 何を食べているのですか?
A: 多毛類など、動きの鈍い無脊椎動物を食べます。
Q:現存するプリプリ虫は何種ですか?
A:現存するプリプリ虫は16種です。
Q: プリアプルの化石はどのような意味があるのですか?
A: プリアプール虫の化石は、少なくともカンブリア紀中期までさかのぼることができます。カンブリア紀の主要な捕食者であったと思われます。
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