音楽で使われるシャープ(sharp、仏・伊では♯を指す語もあります)、ディエ(Diese)は、音の高さを上げる記号です。楽譜の表記法では、シャープは「その音を半音(半歩)上げる」ことを示します。記号は (♯) で、音符の左側に置かれます。

基本的な働き

シャープは、その小節内で同じ高さの同名音に対して有効です(符尾が違っても同一の高さとみなされます)。小節が変わると効果は消えます。調号(調の先頭にある♯や♭の並び)は曲全体に対して恒久的にその音を半音上げます。シャープの反対はフラット(♭、半音下げる)で、ナチュラル(♮)は変化を打ち消します。

同音異名(enharmonic)について

12音等分(12音等律、12音平均律)では、ある音にシャープを付けたときに別の音名のフラットと同じ高さになる場合があり、これを同音異名と呼びます。例えば:

  • B♯ = C
  • E♯ = F
  • C♯ = D♭
  • G♯ = A♭
  • D♯ = E♭
  • A♯ = B♭
  • F♯ = G♭

(上は12音等分での等しい音高を示す例で、調性や和声の文脈により異名で表記する理由が変わります。)

ダブルシャープ・トリプルシャープなど

ダブルシャープは記号としてdouble sharp(𝄪)を使い、音を2半音(全音)上げます。譜例や和声記述上は時々出てきますが、調号との兼ね合いで必要になる場合に用いられます。稀にハーフシャープ(1/4音などの微分音記号)やスリークォーターシャープといった特殊な記号が使われることがあります(主に現代音楽やマイクロトーナル作品での表記)。

非常にまれですが、トリプルシャープ(音を3半音上げる)はまれに楽譜や編曲で見られることがあります。トリプルシャープは標準的な単一のUnicode記号を持たないことが多く、表記はダブルシャープ記号とシャープ記号を組み合わせるなどの方法で示されることがあります。

調号(キーサイン)と五度圏

5分の1の円は、いわゆる「五度圏(circle of fifths)」を示すものと考えられます。五度圏は各調の調号に何個のシャープ(あるいはフラット)があるかを示す便利な図で、右に進むと♯が1つずつ増え、左に進むと♭が1つずつ増えます。例えばト長調(Gメジャー)は♯1つ、ニ長調(Dメジャー)は♯2つ、という具合です。

チューニングでの「シャープ」

チューニングの文脈では「シャープ」は「音がやや高い(鋭い)」という意味で使われます。二つの楽器で同一の音を合わせるとき、一方が他方より少し高ければ「その楽器はシャープしている」と表現します。音程の微調整(ピッチ調整)ではセント単位で示されることが多いです。

Unicode と表示の注意点

Unicodeでは、一般的なシャープ記号 (♯) はコードポイント U+266F にあります。HTMLで数値実体を使う場合は ♯ です。二重シャープ(𝄪)を表す文字は音楽記号ブロックにあり、U+1D12A(𝒊)が該当しますが、これは補助平面 (Supplementary Multilingual Plane) にあるため表示できるフォントが限られます。多くのフォントや環境では二重シャープを表示できず、代わりに2つのシャープを並べたり、画像を使ったりすることがあります。トリプルシャープに対応する単独のUnicodeコードポイントは標準では存在しないことが多く、表記は組み合わせや代替記号に頼ることになります。

補足:フラット(♭)は U+266D(♭)、ナチュラル(♮)は U+266E(♮)です。楽譜用の記号は専用フォント(例:Bravura、Maestro など)を導入しないと正しく表示されない場合があります。

注意点・まとめ

  • シャープは基本的に「半音上げる」記号で、符号は (♯)。
  • ダブルシャープは「2半音上げ」、トリプルシャープは稀な表記で「3半音上げ」。
  • 12音等分では同じ高さになる別の音名(同音異名)が頻繁に現れるため、和声上の理由であえてシャープ表記やフラット表記が選ばれることがある。
  • Unicodeやフォントの違いで楽譜記号が正しく表示されないことがあるので注意が必要。