スネークフライ(ヘビトンボ目)とは何か|特徴・分類・生態の概要

ヘビトンボ目(Raphidioptera)は、内翅目(Endopterygote)の昆虫の小目と表記されることもあるが、分類学的には独立した「目(Order)」にあたるグループである。メガロプテラやネウロプテラに近縁で、これらとともにNeuropterida(ニューロプテリダ)を構成する。英名はSnakefly(スネークフライ)。

現存する種は約210種以上が知られ、主に北半球の温帯域に生息する。最大の特徴は、小さな頭部と極端に細長い「首」(実際は前胸部)の組み合わせで、これにより樹皮の隙間などで機敏に獲物を捕らえることができる。

形態的特徴

  • 体サイズ:多くは体長約15 mm前後(種により約10–30 mm)。体は細長く、腹部もやや長い。
  • :2対のよく似た透明な翅をもち、濃密な網目状の脈(アミメ状脈)が発達する。休息時には屋根形にたたむ。
  • 頭部と胸部:頭部は比較的小さいが複眼が発達し、非常に長い前胸(首に見える部分)が目立つ。
  • 感覚器・口器:長い触角をもち、口器は噛むタイプ(咀嚼型)。成虫・幼虫ともに捕食性で、小さな節足動物をとらえる。
  • 雌の産卵器:メスは細長い卵管で樹皮の割れ目や隙間に卵を産みつける。
  • 幼虫:扁平で機敏。樹皮下や腐植層など陸上で生活する(多くの種で水生ではない)。鋭い大顎で小昆虫や幼虫を捕らえる。

生態・生活史

  • 食性:成虫・幼虫ともに肉食性。アブラムシ類や樹皮下の小型昆虫、ダニ類などを捕食するため、森林や園芸環境では益虫とみなされることが多い。
  • 繁殖・発生:メスは長い産卵器で多数の卵を樹皮の隙間に産む。幼虫期間は一般に1–3年と長く、低温期は幼虫で越冬する。蛹は動くことができ、顎で軽く咬むなど防御反応を示す。成虫の寿命は通常数週間〜数か月。
  • 活動時期・行動:多くの地域で春〜初夏に成虫が出現。樹幹や低木の枝を素早く歩き回り、短距離を飛翔する。開けた林縁や成熟した森林で観察しやすい。

分布と生息環境

  • 地理的分布:主に北半球の温帯(ホラールクチック)に分布。ヨーロッパ〜中央アジア、東アジア、さらに北米西部などに多い。熱帯域や南半球には現生種がほとんどいない。
  • 環境:冷涼で湿り気のある森林、特に成熟林や立ち枯れ木・倒木が残る環境を好む。幼虫は樹皮下・朽木・落葉層など陸上の微小空間で生活する。

分類・系統

  • 近縁関係:メガロプテラおよびネウロプテラに近縁で、三者はNeuropteridaを構成する。
  • 現生の主要グループ:Raphidiidae(ヘビトンボ科に相当)とInocelliidae(イノセリア科)の2科が知られる。前者は単眼(オセリ)をもつ種が多く、後者では単眼を欠くなど形態差がある。

化石記録と進化史

  • 化石はジュラ紀〜白亜紀に豊富で、当時は現在よりも分布・多様性が広かったと考えられる。中生代には複数の絶滅科が知られ、古くから樹皮下の捕食者としての生態を確立していたとみられる。

よくある混同と見分け方

  • メガロプテラ(いわゆる「オオヘビトンボ」など)との違い:メガロプテラの幼虫は水生で大型の水生捕食者だが、ヘビトンボ目(スネークフライ)の幼虫は陸生。スネークフライは前胸が極端に長いため首があるように見える点が決定的な識別ポイント。
  • アミメカゲロウ類(Neuroptera)の一部との違い:翅脈は似るが、スネークフライは立派な前胸と細長い体つき、樹皮での素早い歩行行動が目立つ。

人との関わり・観察のヒント

  • 人に危害を加えることはない。小昆虫を食べるため、森林や果樹園などでは自然の害虫抑制に役立つことがある。
  • 春先、日当たりのよい林縁の樹幹や低木で静止している個体を探すと見つけやすい。網目状の2対の翅と長い前胸を確認できれば識別しやすい。

ライフサイクル

幼虫、蛹、成虫のライフサイクルがある。活動的で肉食性の幼虫は、緩い木の皮の下に住んでいる。オーストラリアを除くすべての大陸に生息し、他の昆虫の幼虫や蛹を破壊するため、人間にとって有益な存在である可能性がある。


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