スペースシャトル・エンタープライズ(OV-101)|試験飛行・輸送・展示の概要

スペースシャトル・エンタープライズ(OV-101)の試験飛行・輸送・展示の歴史と舞台裏を写真で解説。開発経緯や展示場所までわかる完全ガイド

著者: Leandro Alegsa

スペースシャトル・エンタープライズ(OV-101)は、NASAがスペースシャトル計画のために製作した試験用の軌道船で、実際に宇宙へ飛行する目的ではなく、地上および大気圏内での挙動確認や輸送・着陸手順の検証に使われました。エンタープライズはエンジン(OMS)や実際に宇宙で使うための耐熱タイルなどの熱保護システムを搭載せずに建造されており、軌道投入・再突入を行えるようには作られていません。

建造は1974年6月4日に始まり、1976年9月17日に完成しました。1977年に行われた一連の試験飛行(Approach and Landing Tests:ALT)で、シャトルの空力特性、操縦性、着陸手順、そして輸送方法の実証が行われました。具体的には、まずボーイング747を改造した輸送機(Shuttle Carrier Aircraft, SCA)の上にエンタープライズを載せて、どのように安全に輸送・結合できるかを確認する「キャプティブキャリー」飛行を行いました。その後、SCAに結合したままの有人試験飛行も行い、高高度からの切り離し後にエンタープライズが滑空して着陸する「フリーフライト(グライド)」を実施しました。これにより、着陸時の操縦特性やフライトコントロール・システムの性能が評価されました。

テスト飛行では、操縦を担当した宇宙飛行士として、ゴードン・フラートン(Gordon Fullerton)、アポロ13号のフレッド・ヘイズ宇宙飛行士、ジョー・エングル(Joe Engle)、ディック・トゥルーリー(Dick Truly)らが参加しました。シャトルはエンジンを使わずにグライダーのように滑空し、主にカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地へ着陸する練習を繰り返しました。

ALTの終了後、エンタープライズはアラバマ州ハンツビルにあるNASAのマーシャル宇宙飛行センターで振動試験や構造試験に使用されました。これらの試験で得られたデータは、運用用のオービター設計に役立てられ、エンタープライズ自身の一部の構造部材は後続の実戦用シャトルの建造に転用されました。

命名の経緯もエンタープライズの興味深い点です。当初は「コンスティテューション(Constitution)」と命名される予定でしたが、テレビドラマ「スタートレック」のファンを中心に多くの人々が大統領に手紙を書き、番組に登場する宇宙船の名前「エンタープライズ」を採用してほしいと要望しました。その結果、連邦政府の支持もあって「エンタープライズ」と命名され、一般の関心も高まりました。

展示と現状としては、エンタープライズは最終的に一般公開用に保存され、現在はワシントン近郊のスミソニアン国立航空宇宙博物館のスティーブン・F・ウドヴァル・ヘイジー・センターで展示されています。来館者は格納庫展示の形で、シャトルの外観や地上試験で使われた装備を間近に見ることができます。なお、エンタープライズは実際に宇宙飛行を行っていないため、タイルやエンジンなど実戦用装備の多くは欠いていますが、シャトル計画で果たした試験的・教育的役割は非常に大きく、現在もスペースシャトルの歴史を伝える重要な展示物となっています。

  • 型式:OV-101(試験用オービター)
  • 建造期間:1974年6月開始、1976年9月完成
  • 目的:接合・輸送試験、着陸・操縦性確認(ALT)、地上振動・構造試験
  • 主要活動地:カリフォルニア州エドワーズ空軍基地(着陸試験)、マーシャル宇宙飛行センター(振動試験)
  • 現展示場所:ワシントンD.C.近郊、スミソニアン国立航空宇宙博物館のスティーブン・F・ウドヴァル・ヘイジー・センター

エンタープライズは「飛んだが宇宙へは行かなかった」特異な存在として、スペースシャトル計画の成功に欠かせない役割を果たしました。試験で得られた知見はその後の運用用シャトルの安全性向上や設計改善に直結しています。

1977年の試験飛行中のエンタープライズZoom
1977年の試験飛行中のエンタープライズ

試験飛行 1977年Zoom
試験飛行 1977年

質問と回答

Q:スペースシャトル・エンタープライズは何に使われていたのですか?


A:スペースシャトル・エンタープライズ(OV-101)は、NASAがスペースシャトルのテストに使用したものです。エンジンがなく、宇宙への旅と大気圏への帰還に必要な熱保護システムもない状態で作られました。

Q: エンタープライズの建設はいつ始まったのですか?


A: エンタープライズの建設は1974年6月4日に開始され、1976年9月17日に完了しました。

Q: シャトルではどのようなテストが行われたのですか?


A: 科学者たちは、シャトルをボーイング747の上に乗せて輸送する方法を試したかったのです。また、シャトルをボーイング747の上に乗せたまま、3回の有人テスト飛行を行いました。これらのテストが終わると、シャトルをエンジンなしでグライダーのように飛行させるテストが5回行われました。パイロットはエドワーズ空軍基地で着陸の練習をしました。

Q: このテスト飛行を行ったのは誰ですか?


A: テスト飛行を行ったパイロットは、ゴードン・フラトン宇宙飛行士、アポロ13号のフレッド・ハイセ宇宙飛行士、ジョー・エングル、ディック・トゥルーリーです。

Q: 飛行試験の後、どのような試験が行われたのですか?


A: 飛行試験の後、アラバマ州ハンツビルにあるNASAのマーシャル宇宙飛行センターで振動試験が行われました。

Q: すべてのテストが終了した後、エンタープライズの一部の部品はどのように使用されたのですか?


A: すべての試験が終了した後、エンタープライズの一部の部品は他のシャトルの製造に使用されました。

Q: なぜ「エンタープライズ」という名前なのですか?


A: エンタープライズは当初「コンスティテューション」と名付けられる予定でしたが、多くの人が大統領に「スタートレックの宇宙船にちなんだ名前をつけてほしい」と手紙を出したため、「エンタープライズ」と呼ばれるようになったそうです。


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