音声(スピーチ)とは:発声の仕組み・言語障害と治療の基礎

音声(スピーチ)の発声メカニズムをわかりやすく解説し、言語障害の原因・診断・治療の基礎とリハビリ法を臨床視点で紹介します。

著者: Leandro Alegsa

講演を意味する「speech」については、Public speakingを参照してください。

スピーチとは、音声言語を使ってコミュニケーションをとることです。言語を持っているのは人間だけです。動物は言葉を持ちませんが、音やジェスチャーを使ってコミュニケーションできるものもいます。

音声は、音が声帯を振動させることで作られます。声帯を通る音は、顎、舌、歯、口蓋、唇、鼻によって形作られます。

スピーチをするためには、人は以下のことができなければなりません。

  1. 音声の選択
  2. 順番に並べる
  3. 声帯で音を出す
  4. 唇、舌、歯、鼻、口蓋を使って音を形成する

困難は、この4段階のプロセスのどの段階でも起こり得ます。スピーチ&ランゲージ・セラピストは、困難を抱えている一連の過程のどの段階かを見極め、治療を施すことができます。

効果的なスピーチには、「流暢性」「柔軟性」「正確性」「わかりやすさ」という要素があります。

音声(スピーチ)のしくみをもう少し詳しく

スピーチは複数の生理学的・認知的プロセスが連携して生じます。主な要素は次の通りです。

  • 呼吸(呼気のコントロール):肺と横隔膜が空気を押し出し、声のエネルギー源を作ります。十分な呼気の支持がなければ、長い文や強い声は出せません。
  • 発声(声帯の振動=発声器官):喉頭(声帯)が閉じたり開いたりして空気振動を生み、基本周波数(声の高さ)を決定します。
  • 調音(アーティキュレーション):舌、唇、歯、口蓋、顎などが協調して個々の音(母音・子音)を作ります。
  • 共鳴(レゾナンス):口腔・鼻腔・咽頭の形が変わることで音色や音の強さが変化します。例えば鼻腔が閉じると鼻声が防げます。
  • 神経的制御:脳の言語中枢(例:ブローカ領域、ウェルニッケ領域)、運動野、基底核、小脳などが計画・実行を行い、脳幹と末梢の神経(顔面神経、舌下神経、迷走神経など)を通じて筋を動かします。

発声の4段階の詳細(先のリストの補足)

  • 音声の選択:どの語を使うか、どの意味を伝えるかを決める言語的・認知的処理(語彙や文法の選択)。
  • 順番に並べる:選ばれた語を文法に則って並べ、音節や音の順序にする過程(音韻計画)。
  • 声帯で音を出す:呼吸と声帯の協調により音源を作るフェーズ。声の高さや強さ、ピッチ変化はここで決まる。
  • 音の形成:唇・舌・顎・軟口蓋・歯・鼻腔などを調整して具体的な音(例:/s/、/a/)を作る。

音声・言語に関する代表的な障害

スピーチや言語の問題は原因や表れ方がさまざまです。代表的なものを挙げます。

  • 失語(Aphasia):脳損傷(脳卒中など)による言語理解や産出の障害。表出失語(言葉が出にくい)、感覚性失語(理解が困難)などがある。
  • 構音障害(Dysarthria):筋力低下・協調障害による発音の不明瞭さ。パーキンソン病や脳卒中、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などで見られる。
  • 失行性構音障害(口蓋運動失行/Apraxia of Speech):運動の計画やプログラムの障害で、筋力はあるのに正しい順序で動かせない。
  • 流暢性障害(吃音/Stuttering):言葉のリズムや流れが乱れ、繰り返しや詰まりが生じる。
  • 発声障害(声の病変):声帯結節・ポリープ・声帯麻痺・痙攣性発声障害などで声がかすれたり出にくくなる。
  • 聴覚障害に伴う言語遅滞:聴力低下は語音の習得や発音に影響するため、早期の補聴援助や言語支援が重要。
  • 発達性言語障害(特異的言語発達障害など):語彙や文法の獲得が年齢相応でない場合。

評価と治療(介入)の基本

問題が疑われる場合、まずは専門家による評価が必要です。評価と治療の流れは概ね次の通りです。

  • 評価:聴覚検査、発声の聴覚的評価、発音や言語の標準化検査、音声の録音・音響解析、内視鏡(喉頭鏡)やストロボスコピーなどの器質的検査を組み合わせます。背景の医学的情報(脳損傷の有無、神経疾患、手術歴など)も重要です。
  • 治療法の選択:原因に応じて、言語療法(スピーチ・ランゲージ・セラピー)、発声法トレーニング、流暢性訓練、筋力強化・協調訓練、コミュニケーション代替手段(AAC)、薬物治療やボトックス注射、耳鼻咽喉科との連携による外科的治療などが考えられます。
  • 多職種連携:耳鼻咽喉科医、神経内科医、作業療法士、理学療法士、臨床心理士、教育者などと協働することが多いです。
  • 家族・学校・職場での支援:日常生活での工夫(話す環境の調整、相手への伝え方の工夫、聴き取りやすい速さで話すなど)や心理的支援も重要です。

実際の治療例(代表的な方法)

  • 構音療法:正しい舌・唇の使い方や音の出し方を段階的に学ぶ(示範、鏡を使った練習、フィードバック)。
  • 流暢性訓練:呼吸法・発声タイミング・リズムの調整による流暢性向上訓練。吃音に対する「流暢さ形成療法」「変更法(stuttering modification)」など。
  • 発声療法:ボイスケア(保湿・休声)、発声法(腹式呼吸や共鳴の活用)、LSVT(パーキンソン病で用いられる集中的な音声療法)など。
  • AAC(代替・補助コミュニケーション):言葉でのコミュニケーションが難しい場合に、絵カード、タブレットのアプリ、音声出力装置などを用いる。
  • 医療的介入:声帯ポリープや結節の手術、痙攣性発声障害に対するボトックス注射、神経リハビリによる回復促進など。

日常生活でできる声とスピーチのケア

  • 十分な水分補給を心がけ、喉を乾燥させない。
  • 喫煙や過度なアルコールを避ける(声帯への負担軽減)。
  • 長時間連続して話す場合は休憩を入れる。地声に無理に力を入れない。
  • 正しい発声姿勢と腹式呼吸を意識することで呼気の支持を高める。
  • 声の使い方について専門家(耳鼻科・音声専門医・スピーチセラピスト)から指導を受けると効果的。

いつ専門家に相談すべきか

  • 声が長期間かすれている、出にくい、息が続かないなどの症状が2週間以上続くとき。
  • 言葉が急に出にくくなった、理解できない、ろれつが回らないなどの急性の変化があるとき(脳卒中などの可能性があるため速やかな受診が必要)。
  • 子どもの言語発達が同年齢の子と比べて著しく遅れていると感じるとき。
  • 吃音やコミュニケーションの問題で日常生活や学業・仕事に支障が出ているとき。

まとめ(ポイント)

  • スピーチは呼吸・発声・調音・共鳴・神経制御が協働して成り立つ複雑な行為です。
  • 問題はどの段階でも起こり得るため、正確な評価が重要です。スピーチ&ランゲージ・セラピストなど専門家による診断と治療が効果的です。
  • 早期の評価・介入と、日常での声のケア・環境調整が回復や生活の質の向上につながります。

質問と回答

Q: 音声とは何ですか。
A:音声とは、話し言葉を使ってコミュニケーションをとることです。

Q:どのような生物が音声を持っていますか?


A: 言語を持つのは人間だけです。

Q: 動物はどうやってコミュニケーションをとるのですか?


A: 動物は言葉を持ちませんが、様々な音やジェスチャーを使ってコミュニケーションをとることができます。

Q: 音声はどのようにして作られるのですか?


A: 音声は、顎、舌、歯、口蓋、唇、鼻によって形成され、声帯を通して音が振動することによって作り出されます。

Q: 発声にはどのような段階がありますか?


A: 発話の過程には4つの段階があります。音声を選択し、それを順番に並べ、声帯で音を出し、唇、舌、歯、鼻、口蓋を使って音を形作ります。

Q: 発話の過程で困難が生じると、どのようなことが起こりますか?


A: 発話の過程の4つのどの段階でも、困難は起こりえます。言語療法士は、どの段階に問題があるかを特定し、治療を行うことができます。

Q: 効果的な発話の要素とは何ですか?


A: 効果的な発話の要素には、流暢さ、柔軟性、正確さ、理解しやすさが含まれます。


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