20000ファゾムから来た獣(1953)―原爆で覚醒したSF怪獣映画とは
『二万ファゾムから来た獣』(原題:The Beast from 20,000 Fathoms)は、1953年のSF怪獣映画である。1953年6月13日にプレミア・プロダクションから公開され、ワーナー・ブラザースによって配給された。製作は低予算ながらも成功を収め、初年度にアメリカで225万ドルを含む500万ドル以上の興行収入を記録したとされる。
概要と背景
本作は、北極の海底で長年氷に閉ざされていた古代の爬虫類が、核実験など人間の活動によって目覚めて陸上へ現れ、大都市を襲うという筋立てを取る。冷戦期の核実験や原子力への不安を反映した作品であり、映画史上、原爆の爆発や核実験によって怪獣が目覚める、あるいは生まれることを扱った初期の代表例の一つとされる。
あらすじ(簡略)
北極での何らかの爆発的現象により氷の中で長く眠っていた巨大生物が覚醒する。海を下って南へ移動し、船舶や沿岸都市を襲撃。科学者や軍が協力して原因を調査し、猛威を振るう怪獣を止める方法を模索する、というのが物語の骨子である。怪獣は後に「Rhedosaurus(レドサウルス)」と呼ばれることが多い。
製作と特撮
特撮には当時最先端であったストップモーション・アニメーションが用いられ、後に特撮の巨匠となる人物が携わったことでも知られる。小規模な予算ながらも緻密な模型演出と合成で怪獣を現実味ある存在として画面に登場させ、当時の観客に強い印象を与えた。
反響と影響
公開後、本作の成功はアメリカ国内のみならず海外にも影響を与え、1950年代の怪獣映画ブームの一因となった。特に日本では、翌年のゴジラ』をはじめ多くの怪獣映画制作に刺激を与えたとされる。核兵器や核実験と怪獣というモチーフは、冷戦下の文化的表現として以降の作品に繰り返し登場するテーマとなった。
評価と遺産
- 物語そのものはシンプルだが、特撮技術と時代背景を反映したテーマ性が評価される。
- 後続の怪獣映画やSF映画に与えた影響が大きく、特撮史・SF史の重要作としてしばしば引用される。
- 現代では時代色の強い映画として、冷戦期の不安や大衆文化の変遷を読み解く資料的価値も認められている。
文化的・歴史的意義を踏まえ、本作は単なる娯楽作品を越えて、20世紀中頃の核と科学に対する大衆的な感情を象徴する作品の一つと位置づけられている。
キャスト
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