概要

『疫病犬たち』は、英国の作家リチャード・アダムスによる1977年の小説である。『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』で知られるアダムスは、本作でも動物の視点から語られる物語に立ち返りながら、より明確に暗い調子を打ち出している。この作品は冒険譚と倫理的な問いかけを組み合わせ、動物に近い視点と人間の文書断片を交互に用いて物語を組み立てている。

あらすじ

物語の中心となるのは、英国の田園地帯にある研究施設から脱走した2匹の犬、ローフとスニッターである。ローフは用心深く、経験によって鍛えられた生存者であり、スニッターは外科的処置を受けた結果、混乱しやすく傷つきやすい状態に置かれている。2匹は食べ物や隠れ場所、そして信頼できる相手を探して苦闘するが、その一方で、逃げ出した犬たちが致命的な病気を持っているかもしれないという報告が人間社会へ漏れ出す。噂と報道は次第に過熱し、やがて世間の不安と、2匹を捕らえるか、あるいは殺すための組織的な追跡へと発展していく。

登場人物と構成

  • ローフ – 苦難によって形づくられた、慎重で他人を信用しにくい犬。
  • スニッター – 研究所での実験により心的外傷を負い、幻覚を起こしやすい。
  • 人間と動物の脇役たちは、短い場面や、報告書・新聞記事の抜粋などの挿入文を通じて現れ、同じ出来事を複数の視点から示す。

主題と文体

この小説は、生体解剖と動物福祉をめぐる倫理的問題、科学実験がもたらす結果、そして人間の制度が脅威と見なしたものにどう反応するかを探っている。また、噂が持つ力や、恐怖を増幅させる報道機関の役割も考察する。文体面では、アダムスは動物の主人公への共感と、風刺的・記録的な要素を組み合わせ、人間のふるまいを批評している。

映像化と評価

1982年、この物語はネペンセ・プロダクションズによってアニメーション長編として映像化され、劇場公開された。ただし上映は限定的で、観客数も比較的少なかった。小説はアダムスの前作ほどの商業的成功には届かなかったが、不快な主題をためらわず扱った点、そして動物と人間社会について深刻な物語を語るという作者の関心をさらに広げた点で、今なお注目されている。

注目すべき点

『疫病犬たち』は、道徳的な重みと物語実験の点から、アダムスのほかの動物中心のフィクションと並べて論じられることが多い。友情、生存、そして現代科学が突きつける倫理的ジレンマの描写によって、今日でも読み継がれている。