概要
熱圏は、地球大気の第4の主要層であり、中間圏の上、外気圏の下に位置する。上方に向かうにつれて宇宙のほぼ真空へと移行し、電気的に帯電した粒子が豊富な領域である電離圏と重なっている。熱圏は高エネルギーの太陽放射や粒子を吸収することで、希薄な気体の平均運動エネルギーを非常に高くするが、その低い密度のため、こうした温度が体感できる熱にそのまま対応するわけではない。
境界と鉛直構造
熱圏の境界に、ただ1つの固定された高度はない。下端は一般に中間圏の終わり近くに置かれ、上端は外気圏へとなめらかに移行する。正確な高度は、太陽活動、緯度、季節によって変化する。熱圏内部では高度とともに組成が変わり、解離と光電離が進むにつれて、より軽い原子種が多くなり、分子種は減少する。
エネルギー源と温度
熱圏への主なエネルギー入力は短波長の太陽放射で、とくにX線と極端紫外線(EUV)光子が重要であり、個々の原子や分子に吸収される。太陽の極端紫外線とX線の流束は、11年周期の太陽活動周期や、太陽フレアのような短期的事象によって変動し、それに応じて熱圏の温度と密度も変化する。活動が活発な日の測定運動温度は、数百度から1000度を超えることもあるが、気体が非常に少ないため、物体への熱伝達は小さい。
電離と電離圏
電離を起こす太陽放射は、中性の原子や分子から電子を取り去り、総称して電離圏と呼ばれるイオン層と自由電子の層を作り出す。これらの電離領域は電波の伝播に影響し、高周波信号は屈折または反射されることがあり、これによって長距離の短波ラジオ通信が可能になる。歴史的な研究では、電離圏の一部をケネリー・ヘヴィサイド層と呼び、現代では昼夜や太陽条件によって変化する層状の名称(D層、E層、F領域)が用いられる。電離過程と高エネルギー粒子の降り込みはしばしば、上層大気に作用する電離放射線という概念のもとでまとめて扱われる。
現象と影響
- オーロラは、地球磁場に導かれた高エネルギーの荷電粒子が熱圏の気体と相互作用することで発生し、可視光や特定の輝線を生み出す。
- 下部熱圏の大気抵抗は、低軌道衛星の軌道に影響し、軌道減衰の速度を左右する。地磁気嵐の間に熱圏の密度が変化すると、抵抗が急に増すことがある。
- プラズマの不規則性や電離圏擾乱は、衛星通信、航法信号、地上系の無線回線の品質を低下させることがある。
観測、モデリング、運用上の重要性
熱圏の知識は、地上からのリモートセンシング、ロケットによる測定、組成・温度・密度・電離を監視する衛星搭載機器を組み合わせて得られている。太陽活動と地磁気活動のモデルや指標は、任務計画、再突入計算、無線運用にとって重要であるため、熱圏の応答予測に用いられる。観測プログラムではX線とEUVの流束を監視し、運用用の密度モデルや宇宙天気予報に入力を与えている。
人間活動と技術との関わり
国際宇宙ステーションや多くの通信衛星を含む低軌道のプラットフォームは、熱圏の高度域内、あるいはその近くで運用され、変動の大きい環境の影響を受ける。技術者は、大気抵抗、原子状酸素による腐食、無線および航法システムへの電離圏効果を考慮に入れる。熱圏の変動を理解することは、衛星運用者、無線サービス、そして宇宙天気情報を提供する機関にとって、引き続き実務上の優先事項である。
参考情報
下層の背景については中間圏を、上層の領域については外気圏の概要を参照するとよい。放射の要因や観測に関する一般的な議論は、X線、極端紫外線、および大気密度の研究に関する項目で見つけられる。電離した成分と通信への影響については、電離放射線、短波ラジオの伝播、そしてケネリー・ヘヴィサイド層の歴史的記述を参照できる。