チキソトロピーとは、ある種のゲルや液体が、通常の状態では粘性が高く(厚く)、振ったり、攪拌したり、その他のストレスを与えると流動する(薄くなり、粘性が低下する)性質のことで、そのようなゲルや液体にはチキソトロピーがある。
非ニュートン流体には粘度変化を示すものがあり、せん断応力を受ける時間が長いほど粘度は低くなります。チクソトロピー性流体とは、せん断速度を段階的に変化させたときに、粘度が平衡状態になるまでに有限の時間がかかる流体のことです。ゲルやコロイドの多くはチクソトロピックな物質であり、静止状態では安定な形状をしているが、攪拌すると流動性を持つようになる。
流体には反チクソトロピックなものがあり、一定時間せん断応力をかけると粘度が上昇したり、固化したりします。一定のせん断応力は、振盪や混合によって加えることができる。これらははるかに一般的ではありません。
名称と注意点
日本語では「チクソトロピー」と表記することが多いですが、古い文献や慣用で「チキソトロピー」と書かれる場合もあります。どちらも同じ現象を指します。重要なのは、時間依存的に粘度が変化するという点で、これを単にせん断速度に依存する擬塑性(shear-thinning)と区別することが大切です。擬塑性は瞬時のせん断速度に依存するが、チクソトロピーは同じせん断条件でも時間経過で粘度が変わる点が特徴です。
物理的な仕組み(原理)
- 多くのチクソトロピック物質は、微粒子や高分子がつくるネットワーク構造やフロッキング(凝集)構造を持っています。
- せん断(振とうや攪拌)が加わると、これらの構造が壊れて流動しやすくなり、粘度が低下します。
- せん断を止めると、熱運動や静電的・分子間相互作用により時間をかけて元の構造が再形成され、粘度が回復します(可逆的な場合が多い)。
- 回復速度や壊れやすさは、粒子形状、濃度、pH、電解質、温度、添加剤などで大きく変わります。
測定と評価
- レオメーター(レオロジー機器)で、せん断速度やせん断応力を段階的に変化させる実験を行い、上向き・下向きの流動曲線の差(ヒステリシスループ)を調べることが多いです。
- 代表的な試験:ステップせん断(高→低→静止→再せん断)による粘度低下と回復の時間測定、上げ下げスイープでのループ面積(チクソトロピー指数の近似)など。
- データからは、破壊に要するせん断エネルギーや回復の時間定数を見積もることができます。
主な応用例
- 塗料・コーティング:塗布時には塗料が流れて均一にのびるが、塗装後は垂れにくくなる特性(作業性と保持性の両立)。
- 印刷インク・接着剤:印刷や塗布時の流動性と、定着後の保持を両立させるために利用。
- 化粧品・パーソナルケア製品:クリームやローションで、塗布時に伸びがよく、肌上では崩れにくい製品設計に有利。
- 食品(ヨーグルト、ゼリー類など):口当たりや保持性の調整に関与。※ケチャップは主にせん断速度依存の擬塑性例で、必ずしもチクソトロピーとは限りません。
- 土木・掘削用泥水(ドリリングフルード):カットされた固体を懸濁させ保持する能力や、ポンプ運転時の流動性確保に重要。
- セラミクスのスリップや3Dバイオプリンティング用ゲル:造形中の流動性と形状保持性の両立に利用。
反チクソトロピー(レオペクシー)について
せん断を加えると時間とともに粘度が上昇する現象は「反チクソトロピー」または英語で「rheopexy(レオペクシー)」と呼ばれ、稀です。特定の懸濁液や複雑な分散系で観察され、潤滑油や一部のペースト系で問題となることがあります。設計段階では、どちらの挙動が起きるかを確認することが重要です。
設計上のポイント
- 用途に合わせて、破壊しやすい構造(作業時の流動性)と回復しやすい構造(停止後の保持)をバランスさせる必要があります。
- 温度や化学環境(pH、イオン強度)が粘度挙動に影響するため、実使用条件での評価が欠かせません。
- 添加剤や表面処理でチクソトロピー性を調整できる場合が多く、処方設計が鍵になります。
以上のように、チクソトロピーは時間依存的な粘度変化を意味し、製品の「使いやすさ」と「保持性」を両立させるために多くの分野で応用されています。測定と処方設計を通じて、目的に合った挙動を実現することが可能です。