トロサウルスとは|白亜紀後期の3本角ケラトプス類—特徴・生態・分類論争
トロサウルスを図解で紐解く:特徴・生態・分類論争。白亜紀後期に西北米で群れ生活した三本角ケラトプス類の姿とトリケラトプスとの違いを最新研究で解説。
トロサウルス(「穴のあいたトカゲ」の意)は、大きな頭部に3本の角がある四足歩行の植物食恐竜で、ケラトプス類の大型恐竜である。卵から孵化し、群れで生活していたようです。
トロサウルスは、約7000万〜6500万年前の白亜紀後期に、現在の北アメリカ西部に生息していた。トリケラトプスに似ている。トリケラトプスはトロサウルスの若い姿であるとする説もあった。
しかし、最新の見解では、この2つは間違いなく別属である。2011年、2012年、2013年に、既知の標本の外見的特徴を調査した結果、形状や発達の違いから、この2つの属は同義語ではないと判断されたのである。一属一種」説の主な問題点は以下の通り。
- 頭蓋骨の形態差:トロサウルスは頭部の襟飾り(フリル)に大きな開口部(フリル孔)があり、フリルの形や厚さ、縁の構造がトリケラトプスと明確に異なる。
- 角の発達様式:額角や鼻角の基部や傾き、成長に伴う骨の変化の仕方が両属で一致しない点が多い。
- 後頭部の骨配置(パリエタルやスクアモサルなど)の形状差:フリル周辺の骨の縫合や付着部の配置が別個の形態群を示す。
- 組織学的証拠:骨の成長跡や組織学的解析から、すべてのトリケラトプス標本がトロサウルスへ連続的に変化するとは言えない。
- 成長系列の欠落:成体と幼体の中間段階に当たる標本が不足しており、単純に「若い個体→成体」の一方向の変化だけで説明するのは難しい。
形態的特徴
トロサウルスは大きな頭骨と長いフリルが特徴で、フリルには左右に大きな開口部(フリル孔)が開いている点が名前の由来でもある。頭の前方には3本の角があり、2本の大きな眉上角(額角)と1本の鼻角からなる。体長は種や個体差で異なるが、おおむね6〜8メートル級の大型ケラトプス類とされることが多い。
下顎は丈夫で、くちばし状の前端と列を成す臼歯状の歯板を持ち、植物の切断やすりつぶしに適応していた。フリルの縁には小さな骨突起(エポシピタル)が並ぶが、その数や形状もトリケラトプスと異なる要素の一つである。
生態と生活様式
トロサウルスは草食性で、低木やシダ類、被子植物の葉や茎を食べていたと考えられている。強靭なくちばしと歯列で植物を効率よく処理し、群れで移動して採食していた可能性が高い。多くのケラトプス類と同様に、捕食者(例:ティラノサウルスなど)から身を守るために角やフリルを用いたと推測される。
繁殖は卵生で、子どもは比較的早期に自立して移動できたとする見解があり、群れでの保護行動や社会的相互作用があった可能性が指摘されている。
分類と発見史
トロサウルスはケラトプス科(Ceratopsidae)に属し、特にフリルが発達するチャスモサウリナ(Chasmosaurinae)に分類されることが多い。タイプ種には Torosaurus latus などが知られ、19世紀末から化石が記載されてきた。長らくトリケラトプスとの同一視が議論されてきたが、近年の形態学的・組織学的研究により別属とする見方が有力になっている。
化石産地
トロサウルスの化石は北アメリカ西部の白亜紀後期層(例:ヘルクリーク層やランス層など)から産出しており、当時の陸地環境に広く分布していたと考えられる。産出した化石は頭蓋骨が中心で、フリルや角の特徴を示す標本が分類の要となっている。
現在の研究と未解決の課題
トリケラトプスとの関係を巡る論争は、成長段階の解釈、骨の組織学的解析、個体変異と種差の区別など多くの要因を含む複雑な問題である。今後はより多くの中間的な成長段階の標本や、詳細な骨組織解析、コンピュータによる形態計測(形態学的統計解析)などによって、両属の系統関係や生態学的差異がさらに明らかになることが期待される。
まとめ:トロサウルスは白亜紀後期の大型チャスモサウリナ類で、独特の大きなフリル孔と頭蓋骨構造を持つ。かつてはトリケラトプスの成長型とする説もあったが、近年の研究により両者は別属であるとの結論が支持されている。化石記録の充実と新しい解析手法により、今後も理解が深まる分野である。
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