トロファラクシスとは?社会性昆虫の食物共有とコミュニケーション解説
トロファラクシスとは何か?アリ・シロアリ・ハチの食物共有が生む社会性とコミュニケーション機能を図解でわかりやすく解説
生物学におけるトロファラクシス(Trophallaxis)とは、共同体のメンバーが食物を直接交換・共有する行動を指します。媒介は通常口対口(口移し)ですが、種によっては後端(肛門)からの分泌物を受け渡す場合もあり、単なる給餌行動を超えて社会的情報や微生物を伝達する重要な役割を果たします。
アリ、シロアリ、スズメバチ、ハチなどの社会性昆虫で特に高度に発達しています。1918年に昆虫学者ウィリアム・モートン・ウィーラー(William M. Wheeler)が学術用語として紹介し、さらにフランスの心理学者で昆虫学者のオーギュスト・フォレル(Auguste Forel)もアリ社会における食物共有の重要性を指摘しました。フォレルは自身の著作The Social World of the Ants Compared with that of Manの表紙絵にもその関係図を用いています。
種類と伝達方法
- 口対口(stomodeal)トロファラクシス:個体が口を合わせて前胃(社会胃、crop)に貯蔵した液状の餌を渡す最も一般的な形態。アリやハチ、ミツバチで観察されます。
- 肛門対口(proctodeal)トロファラクシス:糞や腸内分泌物を介して栄養や腸内微生物を伝える方法。特にシロアリや一部のアリで重要で、共通の腸内微生物群の維持に寄与します。
機能 — 栄養以外の役割
トロファラクシスは単なる餌の分配にとどまらず、集団の統合や情報伝達に深く関与します。主な機能は次の通りです。
- 栄養分配:巣内で餌を均等に分配し、幼虫・女王・働きアリ間の栄養供給を行う。
- 化学的コミュニケーション:餌に含まれるフェロモンや揮発性化合物によって、食物源の位置やコロニーの状態を伝える。ある種ではコロニー識別用の「コロニー臭」を拡散する役割も持つ。
- 社会免疫(social immunity):抗菌物質や免疫関連タンパク質を個体間で共有し、病原菌への集団的防御を高める。
- 微生物の伝播と維持:腸内共生菌を次世代に伝える重要な経路で、幼虫や新女王の健康や消化機能に影響する。
- 個体の生理調整:餌に含まれるホルモン類や酵素が受け手の発育や行動(分業や産卵)に影響を与えることが示されています。
生理学と形態的適応
トロファラクシスに対応する形態として、前胃(社会胃、crop)の発達や唾液腺・咀嚼器官の機能的変化があります。社会胃は一時的に餌を貯蔵し、必要なときに仲間へ供給できる「貯蔵タンク」として働きます。また、唾液に含まれる酵素が餌の消化や抗菌作用に寄与します。
研究例と観察手法
トロファラクシスの研究では、着色剤や放射性トレーサー、安価な蛍光色素を餌に混ぜて個体間の移動を追跡したり、RFIDや動画解析で社会的ネットワークを可視化する手法が使われます。化学分析(GC-MSなど)により、共有液に含まれるフェロモン、ホルモン、タンパク質の成分が同定され、行動や発生への影響が明らかになってきました。
進化的意義と社会行動への影響
トロファラクシスは個体の直接的な相互扶助だけでなく、コロニー全体の一体化・分業化を可能にする重要なメカニズムと考えられています。栄養や情報を素早く共有することで、集団として柔軟に環境に対応し、病原体に対しても協調的な防御を行うことができます。これが社会性昆虫の高度な社会構造形成に寄与したとされます。
具体例
- アリ:働きアリが採集した餌を前胃にため、幼虫や女王に分配。コロニー内の情報伝達にも利用。
- シロアリ:プロクトデアルな交換により、共生する腸内微生物を幼虫や新個体へ伝える。
- ハチ・ミツバチ:巣内で来訪者や予備個体に蜜や花粉由来の情報を共有する。ミツバチでは舞踏やフェロモンと併用して資源の情報拡散が行われる。
まとめ
トロファラクシスは、社会性昆虫の栄養分配にとどまらず、コミュニケーション、免疫、微生物伝搬、個体の発育制御など多様な機能を果たす複合的な社会行動です。現代の分子・化学解析と行動学的手法により、そのメカニズムと役割はますます明らかになっており、昆虫社会の理解に欠かせない概念となっています。

タイ国産織物アリOecophylla smaragdinaのトロファラキシス(Trophallaxis)。
質問と回答
Q: トロファラクシスとは何ですか?
A: トロファラクシスとは、共同体のメンバーが食べ物を共有することです。
Q: トロファラクシスが最も発達している動物の種類は何ですか?
A: トロファラクシスは、アリ、シロアリ、スズメバチ、ミツバチなどの社会性昆虫で最も発達しています。
Q: 「トロファラクシス」という言葉を広めたのは誰ですか?
A: 1918年に昆虫学者のウィリアム・モートン・ウィーラーが「トロファラクシス」という言葉を発表しました。
Q: オーガスト・フォレルはアリ社会の鍵は何だと考えていましたか?
A: フランスの心理学者であり昆虫学者でもあったオーガスト・フォレルは、アリ社会の鍵は食物の共有にあると考えていました。
Q: なぜハチやアリでは放散が重要なのですか?
A: ハチとアリにおいて、視差はコミュニケーションの手段として機能しています。
Q: アリの一部の種では、視差はどのような役割を果たしているのですか?
A: アリの種類によっては、仲間を識別するためのコロニーの匂いを広める役割を果たしている場合があります。
Q: オーガスト・フォレルは何のためにトロファラクシスのイラストを使ったのですか?
A: オーガスト・フォレルは、彼の著書「The Social World of the Ants Compared With That of Man(アリの社会世界と人間の社会世界との比較)」の扉絵として、トロファラクシスのイラストを使いました。
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