概要

聖書正典とは、特定の宗教共同体が権威ある聖典として受け入れている文書群を指します。英語の “canon” はもともと測定用の棒や規範を意味し、のちに規範とみなされる書物の一覧を表すようになりました。聖書の諸書から成る集成は、ユダヤ教やさまざまなキリスト教伝統において、宗教教育、礼拝、教義の基盤となっています。より広い集合としての聖書については、そちらの概説も参照できます。

書物はどのように選ばれたか

共同体が正典を編成する際、単一の、すべてに拘束力を持つ決定が一度で下されたわけではありません。実際には、共同体での使用、礼拝での朗読、教師や指導者の働き、真正性をめぐる議論など、複数の要因が重なり合い、時間をかけて選別が進みました。西暦初期までには、各地の教会、ラビ、そして会議が、どの文書が聖典として読まれるかを認識するうえで、より大きな役割を担うようになりました。

一般的な基準

  • 使徒性または預言的起源: 使徒、または認められた預言者との結びつき。
  • 古さ: 共同体の形成期に属するのに十分な古さを持つこと。
  • 正統性: 共同体の核心的な教えと一致していること。
  • 礼拝での使用: 礼拝や教導の場で नियमितに読まれること。
  • 受容: 地域や世代を超えて広く受け入れられていること。

主要な正典の伝統

宗教団体によって、認める正典は異なります。ユダヤ教はヘブライ語聖書(タナハ)を保持しています。プロテスタント、カトリック、東方正教会のキリスト教徒は、重なりつつも異なる書目群を受け入れており、プロテスタントは旧約としてヘブライ語の書目を採用し、新約は27書から成ります。カトリックは、しばしば第二正典と呼ばれる追加の書を含め、正教会はさらに別の文書を保持し、国ごとの伝統によって違いが生じることもあります。古代末期のヒッポ会議やカルタゴ会議、さらに後代のトリエント公会議のような宣言は、特定の共同体における正典の定義に寄与しました。

外典、偽典、そして正典の確定

ある正典に含まれない文書は、文脈に応じて外典、第二正典、または偽典と呼ばれることがあります。最終的な受容には至らなかったものの広く流通した書もあれば、有名人物の名義で書かれたとされたため(偽典)、真正ではないと判断されたものもありました。数世紀にわたり、多くの主要共同体は書目を確定させていきました。これを正典の確定と呼びますが、議論や差異が完全になくなったわけではありません。

意義と現代的論点

正典の一覧は、神学、倫理、宗教的アイデンティティを形づくります。また、翻訳事業、教育、宗教間対話にも影響を与えます。現代の聖書学と本文批評は、正典がどのように形成され、本文がどのように伝えられてきたかを検討します。一方で、エキュメニカルな対話では、共通する文書を共有理解の土台として強調することもあります。宗教共同体が用いる権威ある文書という概念については、聖書や、文書が霊感を受けたものとされる考え方に関する資料も参照できます。