20092月7日にオーストラリアのビクトリア州で始まった400以上の山火事はブラックサタデーとも呼ばれ、同国史上最悪クラスの被害を出しました。警察の最終集計では173人が死亡し、約414人が重度の火傷で病院に運ばれました。当初は死者数が210人と伝えられていましたが、法医学的検査の結果により173人で確定し、数字が修正されました。

被害の概要

この火災は広範囲に及び、少なくとも2,029棟の住宅が全焼し、合計で約3,500棟が全焼または大きな被害を受けるなど、数千棟が損壊しました。州都メルボルンの北東に位置する多くの町が甚大な被害を受け、キングレイク(Kinglake)、マリスビル(Marysville)、ナーベソン(Narbethong)、ストラテウェン(Strathewen)、フラワーデール(Flowerdale)などはほぼ全壊あるいは大規模な破壊を免れませんでした。ビクトリア州内のスティール・クリーク(Steels Creek)、ヒュメヴェール(Humevale)、ワンドン(Wandong)、セント・アンドリュース(St Andrews)、カリグニー(Callignee)、コアナラ(Koornalla)でも多くの家屋が破壊され、各地で住民の死者が確認されました。

全体で約78の町が影響を受け、約7,500人が住居を失いました。消火や救助活動には自治体消防隊やボランティアを含む4,000人以上の消防職員・ボランティアが動員されました。火災は数週間にわたって燃え続け、3月初旬から中旬にかけてようやく天候の好転により消火活動が進みました。

気象条件と火災の拡大要因

2009年2月7日は、ビクトリア州で記録的な高温と強風が重なった「過去最悪の山火事の天候」と言われる日でした。気温は摂氏約46度に達し、局地的には風速が時速100キロを超える強風が吹きました。午後から晩にかけて南西からの急激な風向きの変化(冷たい風の突入)が起こり、火災の前線が数キロにわたって一気に拡大して、これまで被害を免れていた地域へと火が押し寄せました。メルボルン北東部のある地域では、単一の火災襲来で約120人が犠牲になるなど、短時間で甚大な被害が生じました。

また、火災発生の原因は複数にわたり、電線の倒壊や送電設備との接触による火花、落雷、不注意なタバコの吸い殻の放置、電動工具による火花、さらに一部では意図的な放火も疑われました。加えて、前年までの約10年間にわたる干ばつにより地表の植生や森林が極度に乾燥しており、火は容易に燃え広がりました。

捜査・報告とその後の対策

事後、州政府はロイヤルコミッション(公聴会)を設置して火災の原因や対応の評価を行い、警報システムの改善電力設備の安全対策強化地域防災計画の見直し、および危険低減焼却(hazard-reduction burning)や資源配分の改善など多くの提言が示されました。これらの提言を受け、ビクトリア州では警報の運用方法や避難情報の伝達手段、消防資機材や訓練の整備、住民の防災教育などが強化されました。

復興と教訓

被災地域では復興が続き、記念碑や追悼行事が行われてコミュニティの再建が進められています。一方でブラックサタデーは、気候変動や極端気象の増加がもたらすリスクを改めて浮き彫りにし、避難計画の事前策定、早期警報の重要性、電力インフラの耐風対策、地域の備え(地域ごとのリスク評価と避難場所の確保)など、多くの教訓を残しました。

現在でもこの出来事はオーストラリア国内における防災・防火政策の重要な転換点とみなされており、同様の災害を減らすための対策と議論が続いています。