Mary Leakey(1913年2月6日~1996年12月9日)は、イギリスの考古学者・古人類学者で、生涯の大半をタンザニアやケニアなどの東アフリカで過ごし、現地での発掘と記録方法の向上に大きく貢献しました。幼少期から描画や詳細なスケッチを得意とし、それが発掘現場での記録作業に生かされました。長年にわたり現場で蓄積した精密なデータと写真は、後の年代測定や地層学的解釈にとって重要な資料となっています。
重要な化石と石器の発見
彼女は、絶滅した霊長類であるプロコンスルの頭蓋骨の化石を含む重要な化石を発見し、霊長類進化の研究に新たな視点をもたらしました。これらの化石は、旧世界のサルと類人猿の特徴を併せ持ち、初期の霊長類の分類や系統を考える際に重要な手がかりとなっています。リーキーは、調査対象地域の層序(地層の順序)を厳密に記録し、発見された化石と地質学的年代を結びつける作業を重視しました。
1959年には、オルドヴァイ峡谷(Olduvai Gorge)で非常に保存状態の良い堅牢なジンジャントロプスの頭蓋骨(一般にZinjanthropus、現在はParanthropus boiseiに相当するとされる)を発見し、これが国際的な注目を集めました。この標本(通称 OH 5)は、硬い咀嚼器官を持つ種の存在を示し、初期ホミニンの多様性に関する理解を深めました。
発掘活動と分類法、レイトリの足跡
彼女は夫のルイス・リーキーとともに、オルドヴァイ峡谷で古代人の石器や化石を発掘してきました。発掘では慎重で体系的な掘削法と詳細な記録を重視し、石器や動物骨の出土位置・向き・深さまで精密に記録しました。これにより、出土資料の文脈(コンテクスト)を明確にし、遺跡の年代や人類行動の解釈に寄与しました。
リーキーは、オルドヴァイで発見された石器を整理・解析するための分類体系を整備し、石器の形態や製作技術に基づく区分を提案しました(旧石器文化に関する研究の基盤を強化)。また、1976年に発掘・1978年に発表されたことで知られるレイトリの足跡も彼女のチームによる重要な発見の一つで、火山灰に残された歩行痕跡は約360万年前のものとされ、二足歩行の早期証拠として古人類学に大きな影響を与えました。
指導と遺産
1960年、彼女はオルドヴァイの発掘責任者となり、以後、チームを拡充して大規模な調査を継続しました。夫ルイスの死後は、リーキー家の古人類学研究を代表する人物として第一線で活躍し、現場で若手研究者を直接指導しました。とくに息子のリチャードは現場で鍛えられ、後に独自の研究と公的活動を通じてリーキーの伝統を受け継ぎました。
Mary Leakeyの業績は、単一の大発見にとどまらず、発掘方法の標準化、層序学と年代測定の精緻化、そして初期ホミニンの多様性と行動の解明に寄与した点にあります。彼女が残した詳細なフィールドノート、写真記録、発掘資料は現在も研究に活用され、多くの研究者に影響を与え続けています。1996年に没した後も、その業績は古人類学の基盤を築いたものとして高く評価されています。



