Tamara Platonovna Karsavina(1885年3月10日 - 1978年5月26日)は、ロシアのバレリーナであり、20世紀初頭のバレエ界で重要な役割を果たした舞踊家である。サンクトペテルブルクで生まれ、帝室(インペリアル)・バレエ学校で正統的な古典バレエの訓練を受け、その後マリインスキー(帝国)劇場の舞台でキャリアを開始した。のちにセルゲイ・ディアギレフのバレエ・リュスに参加し、国際的な名声を築いた。
舞台での活躍と代表作
カルサヴィーナは、その軽やかで表現力豊かな踊りと演技力で知られ、いくつもの代表的な役を創始または初演した。代表的な役には、火の鳥のタイトルロール、ペトルーシュカのバレリーナ役、そして「Le Spectre de la Rose」の少女役などがある。これらはいずれも当時の革新的な振付家や作曲家(例:ミハイル・フォーキン、イーゴリ・ストラヴィンスキー)との重要な協働により生まれた。
ロンドンでの教育と活動
第一次世界大戦期・革命期を経てカルサヴィーナはイギリス、ロンドンのハムステッドに定住し、舞踊教師としての道を歩み始めた。プロの教育者として多くの後進を育て、英国バレエ界の基盤作りに貢献した。彼女は、ロイヤル・バレエ団の設立を支援し、またロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(RAD)の創設メンバーの一人として教育制度の整備にも寄与した。
教え子と著作
教え子には、のちに世界的に活躍することになるアリシア・マルコワやマーゴット・フォンテインなどがいる。舞踊家としてだけでなく、回想録や教育書を著して自身の経験と技術を後世に伝えた。主な著作には自伝的回想録のTheatre Street(1930年)と、バレエの技法と表現についてまとめた教科書Classical Ballet: the flow of movement(1962年)がある。これらはバレエ史と実技教育の貴重な資料となっている。
遺産と評価
カルサヴィーナは、古典の正確さと表現の豊かさを併せ持つ踊りで知られ、バレエ・リュス時代の重要なレパートリーを現代に伝えた人物の一人である。教師としての活動を通じて英国バレエの発展に大きく寄与し、彼女のメソッドや回想は多くの舞踊研究者や指導者にとって重要な参考となっている。1978年にロンドンで没したが、その影響は今日のクラシック・バレエ教育・上演の両面に残っている。

