オールナイト』は、1918年のアメリカのサイレント・コメディ・ドラマ映画である。主演はカーメル・マイヤーズと、のちに大スターとなる前のルドルフ・ヴァレンチノ。監督はポール・パウエル。製作・配給はユニバーサル・ピクチャーズで、当時はユニバーサルの廉価ラインである「ブルーバード・フォトプレイズ(Bluebird Photoplays)」の名前を冠して発表された。

あらすじ

物語は、青年リチャード・セイヤーが若い女性ベス・レインに想いを寄せるところから始まる。リチャードはベスに結婚を申し込もうと考えるが、彼女は他の男性にも人気があり、しばしば父親や周囲の目に囲まれているため、思い切れない。リチャードの友人であるウィリアムとモード・ハーコート夫妻は、ふたりが落ち着いて一緒にいられるようにとディナー・パーティーを企画して招待する。しかし、その夜、ウィリアムの取引先が予期せぬ来訪をすることで計画は狂い、隠れたりごまかしたりする騒動が次々と起きる。やがて誤解や偶然が重なり、ロマンティックな緊張とコメディ的な混乱が展開していく。

製作と演出

監督のポール・パウエルは当時、サイレント映画の綿密な演出で知られていた人物で、本作でも人物間の機微や社交界の小さな騒動をテンポよく描いている。ブルーバード・フォトプレイズはユニバーサルの中でも中級クラスの作品ラインで、商業的に手堅い娯楽作品を世に送り出していた。本作はコメディ要素とロマンスを組み合わせた「コメディ・ドラマ」の典型であり、社会的な立場や身分にまつわる軽い風刺も含まれている。

出演と役どころ

  • カーメル・マイヤーズ — 本作のヒロイン、ベス・レイン役。サイレント期に人気を博した女優の一人で、表情や身振りで感情を豊かに表現している。
  • ルドルフ・ヴァレンチノ — リチャード・セイヤー役(本作ではまだ大スターになる前の出演)。のちにラテン系の情熱的な役柄で人気を得るが、本作では初期の端正な青年像を見せている。

その他の登場人物としてウィリアム、モード・ハーコート夫妻などが物語の騒動を生み出す役割を担う。詳しい配役の資料は残存資料により差異がある場合がある。

保存状態と入手方法

本作は長らく失われた作品と考えられることもあったが、近年になって現存するフィルムが確認され、2005年にグレープバイン・ビデオ(Grapevine Video)からDVDとして市販された。サイレント映画の多くが劣化や散逸により現存しない中で、本作が観られる状態で残っていることは映画史的にも価値がある。

意義・評価

『オールナイト』は、ルドルフ・ヴァレンチノの初期の役どころを知るうえで興味深い資料であると同時に、1910年代後半のユニバーサル系中堅作品の作風を伝える作品でもある。軽妙なロマンティック・コメディとしての構成や、当時の社交習慣を背景にしたユーモアは、サイレント映画特有の身体表現や間合いの妙を楽しむ上で好適だ。今日ではフィルム史の研究者やサイレント映画ファンの間で再評価されている。

補足

本記事は現存する資料を基にまとめたもので、公開当時の詳細な興行成績やすべての配役情報、初公開日などについては資料によって差異があるため、さらに詳細を調査することで情報が補完される可能性がある。映像ソースを確認したい場合は、グレープバイン・ビデオのDVDやフィルムアーカイブ所蔵の目録を参照するとよい。