血液は、多くの動物、特に人間などの脊椎動物が持つ循環液です。血液は心臓によって全身を流れ、栄養分や酸素を組織に運び、組織からは老廃物や二酸化炭素を回収します。体内の物質輸送に加え、温度調節、pHの緩衝、免疫防御、出血時の止血など、多様な役割を担います。体内の血液量は体重の約7〜8%(成人で約4〜6リットル)が目安です。節足動物のような生物では、血液に相当する体液が存在しますが、仕組みや成分は脊椎動物の血液と異なります(後述)。

血液の主な成分

脊椎動物の血液は大きく二つに分かれます:液体成分の血漿(plasma)と、血球などの有形成分(細胞成分)です。血液全体の容積に占める細胞成分の割合はヘマトクリット(Hct)と呼ばれ、通常およそ40〜45%程度です。

  • 血漿:約90%が水で、タンパク質(アルブミン、グロブリン、血小板凝固に関与するフィブリノーゲンなど)、電解質、ホルモン、栄養素、代謝産物を含みます。血漿は物質輸送、浸透圧の維持、pH緩衝に重要です。
  • 赤血球(赤血球、erythrocyte):酸素運搬の主役。哺乳類の赤血球は中央がくぼんだ円盤状で核を持たず、多量のヘモグロビンを含みます。ヘモグロビンは酸素を可逆的に結合し、肺で酸素を取り込み組織で放出します。寿命は約120日で、古くなった赤血球は主に脾臓や肝臓で破壊され成分が再利用されます。
  • 白血球(白血球、leukocyte):免疫応答を担う多様な細胞群。主な種類には好中球、リンパ球(B細胞・T細胞)、単球(マクロファージになる)、好酸球、好塩基球などがあり、感染症防御や異物除去、免疫記憶、炎症反応の調節などに関与します。
  • 血小板は、血液が固まるのを助けます。血小板は骨髄にある巨核球から放出される細胞断片で、血管損傷時にまず血小板が集まって一次止血栓を形成し、その後凝固因子の活性化(凝固カスケード)によりフィブリン網が形成されて安定した止血が行われます。

各成分の詳細と働き

赤血球とヘモグロビン
赤血球内のヘモグロビンは酸素だけでなく一部の二酸化炭素も運びます(大部分の二酸化炭素は血漿中で重炭酸イオンとして運ばれる)。酸素運搬能力はヘモグロビン濃度に依存し、臨床では血色素量(Hgb)やヘマトクリットが酸素運搬能の指標として用いられます。赤血球は骨髄で産生され、その産生は腎臓から分泌されるエリスロポエチン(EPO)などで調節されます。

白血球
好中球は細菌感染に対する即時応答を担い、貪食や殺菌を行います。リンパ球は獲得免疫の中心で、B細胞は抗体を産生、T細胞は感染細胞の排除や免疫調整に関わります。単球は組織に入ってマクロファージとなり、異物除去や抗原提示を行います。好酸球は寄生虫防御やアレルギー反応、好塩基球はヒスタミン放出に関与します。

血小板と凝固
血小板は血管損傷部位に粘着・凝集し、凝固因子の働きでトロンビンが生成され、フィブリンが形成されて血栓(血の塊)が安定化します。凝固には内因系・外因系の経路が関与し、遺伝的欠損(例:血友病)やビタミンK欠乏、抗血栓薬の影響で止血能が低下することがあります。

血液の主な機能

  • 物質輸送:酸素、二酸化炭素、栄養素、ホルモン、代謝産物の輸送。
  • 免疫防御:白血球や抗体による感染防御と異物排除。
  • 止血と創傷治癒:血小板と凝固因子による出血の止血。
  • 恒常性維持:体温調節、酸塩基平衡(pH)の緩衝、電解質バランスの維持。

臨床での指標と主な異常

血液検査は健康状態や疾患診断に不可欠です。主な検査項目にはヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、赤血球数、白血球数、血小板数、血漿成分(総蛋白、アルブミン、電解質、肝腎機能など)が含まれます。

  • 貧血(anemia):赤血球やヘモグロビンの低下で、疲労や息切れを引き起こします。鉄欠乏性、溶血性、再生不良性など原因は様々です。
  • 多血症(polycythemia):赤血球過剰により血液粘度上昇、血栓リスク増加。
  • 白血球異常:白血球増加(感染や白血病)や減少(免疫抑制状態)など。
  • 血小板減少(thrombocytopenia):出血傾向の増加。逆に血小板過多は血栓リスク増加。
  • 凝固異常:血友病のような凝固因子欠損や抗凝固薬の影響。
  • 血液型と輸血:ABO式Rh式の血液型は輸血時の適合性に重要で、不適合輸血は溶血性反応を引き起こします。

血液の産生と寿命

血球は主に骨髄で造血幹細胞から分化して作られます。赤血球の寿命は前述の通り約120日、血小板は約7〜10日、白血球は種類によって数時間から数年と幅があります。造血は成長、出血、感染などの生理的・病的状態に応じて調節されます。

節足動物(例:昆虫)の血液

節足動物の体内液は一般に「血リンパ(hemolymph)」と呼ばれ、脊椎動物の血液とは異なり酸素運搬の主要成分としてヘモグロビンを含まない場合が多いです。多くの昆虫は開放循環系を持ち、血リンパは体腔を満たして栄養や老廃物の輸送、免疫機能の一部を果たします。

以上が血液の基本的な構造と機能の概要です。健康や病気の評価には定期的な血液検査が重要で、疑わしい症状がある場合は医師に相談してください。