氷床とは?南極とグリーンランドの規模・成因・海面上昇リスク
南極とグリーンランドの氷床の規模・成因と海面上昇リスクを図解で解説。58m・7.2mの影響や最新融解データをわかりやすく紹介
氷床は、5万平方キロメートル(約19,000平方マイル)以上の面積を覆う氷河の氷の塊です。大陸氷河と呼ばれることもあり、現在は世界に南極とグリーンランドの2つの主要な氷床があります。氷床は長い年月をかけて降雪が圧縮されて氷になり、重力に従ってゆっくりと流動します。
氷床は、棚氷や高山の氷河よりもはるかに大きな氷の塊です。面積が5万km2以下の氷の塊は、氷冠(アイスキャップ)と呼ばれ、一般に規模と形成過程が氷床とは区別されます。氷冠の氷は、多くの場合周辺の氷河が流れ込んで形成されますが、氷床は大陸規模で雪と氷が累積してできる点が特徴です。
南極氷床は、地球上で最大の氷の塊です。面積は約1,400万km2、氷量は約3,000万km3に達すると推定され、地球表面の淡水の約90%がここに蓄えられています。もしこの氷床がすべて溶ければ、海面が約58メートル上昇すると計算されます。南極の氷床の形成は漸新世(約3,400万年前)の初期に始まり、その後の数千万年にわたって拡大と縮小を繰り返しました。特に鮮新世以降に氷床の範囲が現在の規模へと発展したと考えられています。
グリーンランド氷床は島の表面の約82%を覆い、総氷量は南極より小さいものの、すべて融解すれば海面は約7.2〜7.4メートル上昇します。NASAの衛星観測などから、近年は毎年数百立方キロメートル規模で質量が失われており、報告によっては毎年約239立方キロメートル(数値は年によって変動)程度の融解や流出が起きているとされています。グリーンランドの氷床は鮮新世後期から更新世にかけて発達し、古い時代には現在のような大規模な氷床は存在しなかったため、かつてのグリーンランドの植物の化石は、比較的保存状態の良い形で残っている例もあります。
氷床の構造と動き方
- 上部は新雪の累積で形成される圧雪層、下部は長年圧縮された古い氷(基盤氷)で構成されます。
- 氷床は重力により緩やかに流れ、内部でのひずみや亀裂(割れ目)を通じて氷河や氷床流(アウトレット氷河)として海へ流れ出します。
- 沿岸部では氷床が海に張り出して棚氷を形成し、棚氷は内陸の氷の流れを抑える(ブッテレス)重要な役割を担います。
減少のメカニズムと海面上昇リスク
- 表面融解:気温上昇に伴う表面での融解と蒸発の増加。
- 氷河流の加速とカルブ(崩壊)増加:氷床から海に流れ出る出口の氷河が速く流れると、より多くの氷が海に放出されます。
- 基底融解:海水による氷床沿岸部分や棚氷底面の融解で、特に深い海底に接する氷床端では不安定化が進みます。
- フィードバックと不安定性:西南極のように氷が海底下に延びる「海洋に接する氷床」では、海底地形と海水温の変化が引き金となる「海氷床不安定性(marine ice-sheet instability)」が起こり得ます。これにより急速な後退や長期にわたる質量損失が生じるリスクがあります。
観測と研究方法
- 衛星測定(衛星高度計、合成開口レーダー、GRACE重力衛星など)による氷床の質量変化や流速の把握。
- 地上観測、航空レーザー測量、ボーリン グ(アイスコア)による過去の気候・氷床変動の復元。
- モデリング:氷床ダイナミクスと海洋・大気の相互作用を組み合わせて将来の挙動を予測。
現在の傾向と将来展望
- 20世紀後半から21世紀にかけて、グリーンランドと西南極を中心に氷床の質量損失が加速しています。これにより近年の海面上昇への寄与が増加しています。
- 将来の海面上昇は、温室効果ガスの排出量や地域的な海水温・海流の変化、氷棚の崩壊リスクに大きく依存します。最悪シナリオでは数世紀〜千年規模で数メートルの上昇が想定されますが、短期(数十年)でも沿岸への影響は重大です。
- 対策としては、温室効果ガス排出の削減、沿岸防護の強化、早期警戒と適応計画の整備が重要です。氷床の動向は将来の海岸線や社会経済に直接影響するため、継続的な観測と研究が不可欠です。
氷床は地球の気候システムと密接に結びついており、その変化は海面上昇だけでなく、海流や大気循環にも影響します。氷床研究は多分野にまたがる国際的な取り組みが進められており、今後の観測技術とモデルの改良により予測精度はさらに向上していくでしょう。

南極の衛星画像。

グリーンランドの地図
質問と回答
Q:氷床とは何ですか?
A:氷床とは、5万平方キロメートル(1万9千平方マイル)以上の面積を占める氷河の大きな塊のことです。大陸氷河とも呼ばれる。
Q:世界にはいくつの氷床があるのですか?
A:現在、世界には2つの氷床があります。南極大陸とグリーンランドです。
Q:氷床と氷冠の違いは何ですか?
A:氷床は、棚氷や高山氷河よりも大きな氷の塊です。5万km2以下の氷の塊を氷冠と呼びます。氷冠の氷は、通常、そこに流れ込む一連の氷河に由来しています。
Q:南極の氷床にはどれくらいの淡水があるのですか?
A:南極氷床には3,000万km3の淡水が含まれています。
Q:南極氷床がすべて溶けると、海面はどのくらい上昇するのでしょうか?
A:もし全部溶けたら、海面が58m上昇するそうです。
Q:グリーンランドの氷床は、国土の何パーセントを占めているか?
A:グリーンランド氷床は、グリーンランド表面の約82%を覆っています。
Q:グリーンランドの氷床はどのくらいで溶けているのですか?
A:NASAの衛星画像によると、毎年約239立方キロメートル(57.3立方マイル)の割合で溶けていることが分かっています。
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